初回応答速度は最大14倍、データ転送料は0に
このアーキテクチャの有効性を実証するため、日本オラクルの新井氏を中心に、実際のユースケースを想定した2つの具体的なデモ環境が構築された。1つは同人誌などの数十メガバイト規模のPDFドキュメントをブラウザ上で試し読みさせるシステムであり、もう1つは複数本の重い動画ファイルを並列にダウンロードして再生するシステムだ。特に大容量データである動画配信のデモにおいては、目覚ましい定量的効果が確認された。
OCIのオブジェクトストレージからユーザーが直接動画ファイルをダウンロードして配信した場合と、フロントにCloudflareのキャッシュを配置して配信した場合とを比較検証した結果、後者は実行スループットにおいて3倍から4倍もの向上が見られた。さらに、初回応答速度(TTFB:Time to First Byte)においては、エッジキャッシュにヒットすることで最大14倍という劇的な高速化を記録したのだ。
Cloudflareの有無で動画配信の速度は大きく異なった
この結果について新井氏は、「距離が近ければ近いほどキャッシュ体験が向上する効果があった。私自身デモを作っていてここまで上手くいくのかとびっくりしました」と、予想を上回るパフォーマンスの向上に驚きを隠さなかった。東京からアクセスした検証では、最寄りのエッジサーバーから応答が返ることで、遅延はわずか約140ミリ秒にまで抑え込まれていた。
また、システム全体のアーキテクチャにおいてもシンプルさが際立つ。OCI側は複雑な負荷分散の仕組みやスケーリングの設計を実装する必要がなくなり、単一のオブジェクトストレージを用意し、必要に応じてバックエンド用のコンテナインスタンスを稼働させるだけで済むようになった。フロントエンドの細かなルーティングやキャッシュ制御はすべてCloudflare Workersの簡潔なコードで完結しており、インフラの運用負荷は大幅に軽減された。
そして最大の懸案であったエグレスコストの問題にも対応している。Cloudflareのエッジキャッシュにヒットした場合はOCIへのアクセス自体が発生しないため、オリジンからの転送料はゼロである。仮にキャッシュミスが発生してOCIへデータを取りに行った場合であっても、Bandwidth Allianceによる無償化枠が適用されるため、デモの結果を見てもOCIからCloudflareへのデータ転送料はかかっていない。
CloudflareのキャッシュHIT状態では、OCI Object Storageには1リクエストも到達しない
OCI自体にも月間10テラバイトまでのインターネット向けアウトバウンド転送無料枠が存在するが、それ以上の規模にスケールした場合を考慮すると、Cloudflareと組み合わせて利用するメリットは計り知れない。月間数十テラバイトから数百テラバイトといった大規模な配信を行う動画サービスやゲームプラットフォームにおいては特に有用になる。
