コンテンツ配信ネットワークを持たないパブリッククラウド、OCI(Oracle Cloud Infrastructure)
現代のウェブサービスやアプリケーションにおいて、コンテンツ配信ネットワークであるCDNの活用は不可欠なものとなっている。特に動画配信やオンラインゲームのコンテンツ配信など、不特定多数のユーザーに向けて大容量のデータを低遅延で届けるワークロードは日々増加の一途をたどっている。
しかし、主要なパブリッククラウドベンダーのなかで、Oracle Cloud Infrastructure(以下、OCI)にはネイティブのCDNサービスが存在しなかった。過去には独自のCDNサービスのリリースが検討されたこともあったが、現在まで一般提供には至っていない。
CDNがないパブリッククラウドであるOCI
CDNを介さずにオブジェクトストレージからユーザーへ直接コンテンツを配信しようとすれば、物理的な距離に起因するネットワーク遅延が発生し、ユーザー体験が損なわれる。さらに、オリジンサーバーへリクエストが集中することによる負荷増大や、インターネットの経路混雑を回避できないといった技術的な障壁が生じる可能性もある。加えて、オブジェクトストレージからインターネットへと流れ出るデータに対する転送料が膨れ上がるという、コスト面での痛手が存在していた。
この課題に対して解決の糸口を示したのが、日本オラクルの第一オラクル・デジタル/ISVソリューション部でシニアマネージャーを務める山田氏と、同部でシニアソリューションアーキテクトを務める新井氏、そしてCloudflareでシニアソリューションエンジニアを務める木下氏だ。
本セッションに登壇したCloudflare Japan木下氏、日本オラクル山田氏、新井氏
日本オラクルの山田氏が「OCIにはCDNがないパブリッククラウドであるという珍しい制約がある」と話すように、CDNの不足はOCI利用における課題の1つであった。そこで彼らは、単体では完結し得ない配信ワークロードの最適化を、外部エコシステムとの連携によって乗り越えようと試みた。
Cloudflare+OCIで目指すは「エグレスコスト・ゼロ」の配信基盤
OCIにはCDNが存在しないため、従来システム設計者は代替手段を検討する必要があった。一般的なアプローチとしては、クラウド事業者が提供するネイティブ機能に依存せず、サードパーティのCDNベンダーのソリューションを前段に組み合わせて配置することが考えられる。
しかし、単に外部のCDNを導入するだけでは、OCIのオブジェクトストレージからCDNへとデータを引き渡す際のエグレスコスト(クラウドからデータをダウンロードする料金)が依然として発生してしまい、根本的なコスト削減という課題解決には至らない。
そこで彼らが着目したのが、複数のクラウド事業者とネットワーク企業が提携してデータ転送料の削減を目指す「Bandwidth Alliance」という枠組みだ。この取り組みの根底には、パブリッククラウドとCloudflareのインフラ間をプライベートインターコネクション(PNI)と呼ばれる専用線で直接接続するという技術的な基盤が存在している。
Cloudflare Bandwidth Allianceとは
通常のインターネット接続の場合、クラウドからユーザーへデータを届けるまでに多数のトランジット事業者(通信の中継を担う事業者)のネットワーク回線を経由することになり、遠方になればなるほど、またデータ量が大きくなればなるほど、中継事業者の設備利用料が加算されてコストが膨張していく。
しかし、PNIを用いてクラウドとCloudflareを直結すれば、これらのトランジット事業者を介する必要がなくなる。この構造的な優位性について山田氏は、「PNIの場合、仮に1ギガ転送料が増えたところで大規模な改修や追加の設備投資が必要となりませんので、コストが高くなりづらいという特徴があります」と説明する。
なぜOCIからCloudflareへのアウトバウンド転送料を無償にできるのか
2021年11月にOCIがこのBandwidth Allianceに参画したことで、両社間の相互接続によるネットワークの効率性が顧客へのコスト還元という形で結実し、OCIからCloudflareへのアウトバウンド転送料が無償化されるという劇的なメリットが生まれた。彼らは、この無償化の仕組みを活用して、OCIの弱点であったCDN不在を克服するどころか、エグレスコストを大幅に削減し、優位性のある配信基盤を構築することを目指した。
