「エンジニアの仕事はコードを書くことだけ」という時代の終わり
AIコーディングツールによる、いわゆる「バイブコーディング」が当たり前になりつつある今、エンジニアの存在意義が問い直されている。IT Women Summitのクロージングセッションは、このような問いかけから始まった。「AIのほうが短時間で高品質なコードを大量に出力できます。今まで『コードを書くことが仕事』と考えていた方も多いと思いますが、それがAIに代わられている現状があります。不安を感じているエンジニアも多いのではないでしょうか」。
セッションに登壇したのは、シナジーマーケティングで執行役員CTOを務める馬場彩子氏と、bgrassのCEO/CTOである、だむは氏だ。
馬場氏は友人の誘いでエンジニアとしてのキャリアをスタートし、2001年の入社から25年間、一エンジニアとしてプロダクト開発に携わってきた。2020年にはCTOへ立候補し、「キャリアの折り返し地点、マネジメントという役割でエンジニアリングに携わっていこうと思い、手を上げました」と語る。立候補することへの迷いはなかったが、就任後は「CTOって何をする人なんだろう」という、答えのない問いと向き合い続けてきたと振り返る。
文系出身のだむは氏は新卒でSIerへ就職し、その後はWeb系スタートアップ、フリーランスを経て2022年7月にbgrassを創業。創業当初はCEOのみを名乗っていたが、「CTO協会の男女比が偏っている」「女性のCTOが少ない」といった相談が相次ぎ、IT業界のジェンダーギャップ解消を使命として掲げる自社の目標と照らし合わせ、「自分のリソースで使えるものは使っていこう」と、CTOを併せて名乗ることを決意した。その後CTO協会に入り、さまざまな人々とコミュニケーションするなかで、「名乗ってよかった」と心から思えるようになったという。
役割は「無茶を言うこと」!? 2人のCTOが見ている景色
では実際に、馬場氏とだむは氏はCTOとしてどのような業務をしているのか。2人の答えは、ほぼ一致していた。
馬場氏は「個別最適ではなく全体最適をしっかり見ていくこと。そして、エンジニア組織が動ける範囲をちょっと飛び越えるような、『これできるんじゃない?』を言うのが私の役割だと思っています」と説明する。
だむは氏も、あるエピソードを明かす。新サービス「フェアパス」の開発計画が当初2カ月だったところを、「『Claude Code』を使えば1週間でいけるんじゃない?」と大胆な提案をした。「その結果、開発メンバーはみんなヒーヒー言っていたのですが、できちゃったんです。そこから全員の常識が変わっていきました」と振り返る。
目的が達成できないほど、メンバーに無理をさせては心が折れてしまう。しかし、ちょうどいい「無茶」は組織の常識を変え、チームを一段と成長させる。「今までの延長線上でやりがちなところを、いかに時代に合わせてひっくり返してあげるかが大切です」と、だむは氏。2人が共通して体現するのは、AI時代の推進力としてのCTO像だ。そしてこの感覚こそが、すべてのエンジニアに求められるようになる力と深くつながっている。
