CPythonのコアデベロッパーであるキャロル氏が来日
今年の「PyCon JP 2026」で大きな注目を集めているのが、毎年2名招待される基調講演の1人であるキャロル・ウィリング(Carol Willing)氏だ。キャロル氏はCPython[※1]のコアデベロッパーやProject Jupyter[※2]の中心人物として技術発展を支えてきた世界的なエンジニアであり、同時にオープンソースコミュニティの育成や教育にも長く携わってきた人物である。基調講演では、Python本体の技術的な話を中心に深掘りする方向で検討が進んでいるという。
さらに、キャロル氏の来日に合わせてPyLadies[※3]主催の特別セッションも企画されている。この特別セッションにはキャロル氏に加え、韓国のPyLadies Seoulの運営メンバーであるスジン ユン(Soojin Yoon)氏も参加する。世界の異なる国から集まった3名のそれぞれの視点から、PyLadiesとはそもそもどんなコミュニティなのか、どんな活動をし、どうつながりあっているのかを紹介し、その後コミュニティ運営の課題について語り合う構成となる予定だ。
女性限定の技術コミュニティという枠組み自体も、時代とともにその意味合いを変化させている。かつては「女性エンジニアの心理的安全性を守り、居場所を作る」ことが主な目的であった。しかし現在、東京などではそうした素地が整い、目的が変わりつつある。
現在のPyLadies Tokyoは、「純粋に技術が好きな女性が集まり、普段とは少し違う視点や会話の流れで技術談義を楽しむ場」という側面が強くなっている。男性と一緒に技術交流する場へ出ていく心理的ハードルは下がっており、現在は「インプットだけでなく、スピーカーとしてアウトプットする人をいかに増やすか」が次のテーマとなっている。
こうした「後押し」はPyLadies Tokyoに限らず広がっている。実際、今回のPyCon JP 2026に向けては槇野氏自身もCFP(Call for Proposals)に挑戦した。石田氏にレビューしてもらいながらPyCon KoreaへCFPを提出したが、結果は採択には至らなかったという。槇野氏は「挑戦したことは自分の中でとても大事なことでした」と振り返り、「またチャンスがあったらチャレンジしたいです」と次への意欲を語る。
[※1]C言語で記述された、Python言語の最も標準的な公式実装のこと。
[※2]データサイエンスや機械学習で広く使われるインタラクティブな開発環境「Jupyter Notebook」などを開発するオープンソースプロジェクト。
[※3]女性のPythonコミュニティへの参画を支援・促進するために活動している国際的なボランティアネットワーク。
「特別な人などいない」──PyCon JPが投げかけるメッセージ
PyCon JP 2026では、あらゆる背景を持つ参加者が快適に過ごせるよう、運営面でもさまざまな配慮がされている。例えば今年は、主催メンバーが開発したリアルタイム翻訳アプリが導入される。セッションの音声が2カ国語の字幕テキストとしてリアルタイム表示されるため、言語の壁を意識せずにトークの理解を深めることが可能だ。こうしたエンジニアリングによる課題解決もPyCon JPならではの見どころと言える。
槇野氏は、カンファレンス参加者に向けて「セッションを聞くだけでなく、廊下で他の参加者に声をかけてみたり、開発イベントである『スプリント』に参加して新しい技術を試してみたりと、それぞれの立場やレベルで『新しい第一歩』を踏み出せる体験を持ち帰ってほしいです」と語る。
また石田氏は、「D&Iという枠組みでセッションを行いますが、伝えたいのは『すべての人が特別なわけでも、完全なマジョリティやマイノリティなわけでもない』ということです」と述べる。性別や住んでいる地域、職種など、自分自身が持っているタグを一度見つめ直し、多様な参加者と出会うことで自分自身の新しい可能性を発見してほしいという想いが込められている。
PyLadiesのセッションは、女性限定ではなく男性を含めたすべての参加者に向けて開かれている。イベント運営に興味があるエンジニアや、コミュニティの広がりに興味がある読者は、ぜひ会場に足を運んでみてはいかがだろうか。
