生成AIが追い風に──加速するMiracraw開発
こうしてWeb募集のSaaS基盤としてMiracrawが動き出すと、より多くの案件の構築が求められるようになった。
Schemaドリブンで効率化されているとはいえ、開発者が案件一つひとつの販売方式を理解し、JSONファイルを書くのは骨の折れる作業だ。カスタマイズを増やすたびにJSON項目が増え、ドキュメントの整理も追いつかない。ここで大きな助けになったのが生成AIの導入だ。
「Schemaドリブン開発と生成AIは相性がよい」と浪山氏は言い、「案件ごとのカスタマイズ項目の理解が追い付かない問題も、生成AIにナレッジを渡せば一瞬で作成され、解決されました」と説明する。
生成AI×Schemaドリブン開発には、他にもメリットがある。まず、リーダブルコードの観点でのレビューが不要になる。エラーハンドリングやログ、コードの書き方といった観点でのレビューは、書いているのがJSON Schemaである以上「汚く書きようがない」ため発生しない。また、JSONファイルは別ファイルを参照できないため、AIによるコード生成の落とし穴である「意図しないデグレ」が起きず、修正のたびにデグレを確認する手間もかからない。
Miracrawを基盤に、Schemaドリブン開発を行うことでどのような成果を得られたのか。浪山氏は、以下のように現在の開発フローを説明する。
「私たちの開発では、要件を記載したドキュメントをClaude CodeのAgent Skillsに渡し、フロントエンドのJSON SchemaとバックエンドのSchema Validation、その他の設定が自動で生成されます。この一回のフローで、およそ8〜9割の品質に到達します」(浪山氏)
最初の案件では7人のチームが半年以上かけて開発していたところ、現在はエンジニア1人が1か月かからずに開発できる。浪山氏は「Agent Skillsのブラッシュアップや共通機能の追加によりスピードを上げることができるのでは」と語り、さらなる開発スピードの加速に意気込みを見せた。
大量生産を支える運用も、AIとテストの整備でまわしている。アラートの1次調査はAIがすべて実施し、そのレポートを基に「顧客に影響があるか」「アプリを直す必要があるか」を人が判断する。E2EテストとAPIテストを整備したことで、月1回リリースできる体制になった。プルリクエストを投げると1万以上のAPIテストが走り、パスしたものだけがマージできる。運用負荷が高くなりがちなマイクロサービスを、少人数で回せているのはこうした整備の成果だ。
なお、Miracrawは2025年11月にリリースされ、講演の1か月前となる6月16日に本格展開が始まっている。損害保険ジャパンの発表によると、パートナー企業が展開するオンラインサービスに保険を組み込む「エンベデッド・インシュアランス」の共通基盤として提供されており、社内SaaSとして生まれたMiracrawは社外へと広がりつつある。名称はMiracle(奇跡)とRaw stone(原石)を組み合わせた造語だ。
最後に浪山氏は、Miracrawの開発を振り返り、以下のようにセッションを締めくくった。
「当初はゼロからのスタートでしたが、試行錯誤を重ね、一つひとつ着実に積み上げてきたことで、社内SaaSを構築することができました。チームとして実績を重ねるうちに、社内の各部署から『自分たちの案件も任せられないか』と声がかかるようになり、世の中に必要とされていることを日々実感しながら開発できています。Miracrawはまだ進化の途上にあり、今後もさらに加速していきます」(浪山氏)
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