AIで開発が速くなった分、何ができるようになった? 街に出て、先に作って、仕組みを整えた3人のエンジニアの実践
【Session 3】AIで「現場」を動かし「私」を変える! エンジニアの定義を広げていく、3つの挑戦
AIコーディングによって開発が速くなっても、プロダクトは勝手に「売れる」わけではないし、チームも勝手に「動く」わけではない。IT Women Summit 2026のSession 3には、Relicのエンジニア石川清佳氏、iOSエンジニアのくぼみ氏、パソナの開発リーダー鹿又菜摘氏の3名が登壇し、AIと泥臭い現場仕事を組み合わせた実践を語った。コンバージョンゼロのアプリを街に出て立て直した話、ミーティング前に完成品を持ち込む「開発先行」フロー、チーム全員が新技術に挑戦できる「一軍コンテキスト」づくり──3者それぞれの現場での工夫が語られた。
※本記事で紹介する所属は、2026年5月26日に実施したイベント時点でのものです。
アプリ課金は数カ月間ゼロのまま──だからこそ街に飛び出した
最初に登壇したのは、Relicでフロントエンドとバックエンドのエンジニアとして働く石川清佳氏だ。石川氏のチームが手がけていたのは、訪日ビーガン・ベジタリアン向けのアプリ。AIの登場で開発スピードは飛躍的に向上したが、リリースから数カ月が経っても、アプリ内課金は一度も発生していなかった。
分析ツールの「Clarity」でセッションデータを確認すると、ユーザーは流入しているのに決済に至らない。「なぜか」の答えは、画面の中に見当たらなかった。石川氏は当時を、「アプリを使わないエンドユーザーの気持ちを、自分自身が十分に理解できていないんじゃないかと思いました」と振り返る。石川氏自身はビーガンでもベジタリアンでもなく、日本で外食に困ることもない。そこでビーガンやベジタリアンの人々の気持ちを理解するために、パソコンを閉じ、街に出ることを決めた。
石川氏がユーザーを知るためにとった行動は3つだ。まず実際にビーガン・ベジタリアン料理の店に足を運び、価格帯やメニューのバリエーションを自身の目で確認。得た知見をビジネスサイドと連携しながらAIでアプリに反映した。次にSNSアカウントを開設し、AIも利用し週4回のペースで投稿を続けることで、どのレストランが人気を得やすいかを把握し、アプリ内の表示順も改善した。そして3つ目が、渋谷や浅草のビーガン・ベジタリアン向けレストランで食事をする人に声をかけ、ヒアリングを重ねることだった。
初のコンバージョンを生んだ現場の熱
いざヒアリングをしてみると、「Googleマップで十分」「日本でわざわざ新しいアプリは使わない」と言われることも多かった。それでも石川氏はあきらめなかった。アプリを使いながら飲食してもらえる場を作ろうと、週1回のビーガン向けイベントを自ら立ち上げた。参加者がアプリ掲載の飲食店で飲食しながら感想を話してくれるこの場には、画面上では得られなかった生の声があふれていた。
そのフィードバックをAIですばやく取り込み続けた結果、ついに初めてのアプリ内課金が発生。「エンジニアも現場の熱を知ることで、泥臭さを掛け合わせたAIが人を動かせるんだな、というふうに感じました」と石川氏は振り返る。昼間は開発、夜は飲食店でヒアリング、土日はビーガンイベント。足で稼いだインサイトをAIで瞬時にプロダクトへ反映するPDCAが、コンバージョンゼロの壁を打ち破ったのだ。
この記事は参考になりましたか?
- IT Women Summit セッションレポート連載記事一覧
-
- AIで開発が速くなった分、何ができるようになった? 街に出て、先に作って、仕組みを整えた3...
- コードが書けるだけではAIに代替されてしまう──2人のCTOが語る、全エンジニアに必要とさ...
- 不確実な状況下で開発組織と未来を変えていく! 新卒5年目のリーダーが語る「3つのアクション...
- この記事の著者
-
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
