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翔泳社の本(AD)

板挟みで動かないプロジェクトを前進させる、両利きのプロジェクトマネジメントとは?【書籍紹介】

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 プロジェクトマネジメントにおいて、戦略や方針、方法論、そして技術に関して板挟みの状態になることは少なくありません。クライアントや経営層、上長、もちろんチームメンバーからも様々な矛盾する要求を突きつけられるマネージャー。「あちら立てればこちらが立たぬ」という事態を収めるための気苦労たるや、計り知れないものがあります。そんな状況を乗り越えるために提案したいのが、「両利き」という考え方です。「どちらか」ではなく「どちらも」尊重し、プロジェクトを前に進めるためのこの考え方を書籍『両利きのプロジェクトマネジメント』(翔泳社)から紹介します。

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 本記事は『両利きのプロジェクトマネジメント 結果を出しながらメンバーが主体性を取り戻す技術』の「第3章 両利きのプロジェクトマネジメント──直線と曲線を行き来する」から一部を抜粋したものです。掲載にあたって編集しています。

直線と曲線を行き来する

 現代のプロジェクトで起こる「あちら立てればこちらが立たぬ」というような矛盾する状況に対処するためには、プロジェクトを推進する中で、計画や合理性を重視する「直線的なモード」と対話や変化を重視する「曲線的なモード」を柔軟に行き来しながら使いこなしていくこと=「両利きのプロジェクトマネジメント」が必要です。

 「両利きのプロジェクトマネジメント」とはどのようなものであり、直線的なモードと曲線的なモードとは何なのか、なぜそれが重要なのかということについて説明します。

「両利き」とは何か

 そもそも「両利き」とは何か。本書で「両利き」という言葉を用いているのは、日本では2019年に出版された『両利きの経営』(チャールズ・A・オライリー、マイケル・L・タッシュマン、東洋経済新報社、2019年)で述べられている「両利き」の考え方がプロジェクトマネジメントでも重要であると考えているためです。

「両利きの経営」=探索と深化の二兎を追う

 「両利きの経営」の主題は「成熟した企業であっても、いかにイノベーションを起こし続けるか」です。どの企業も、自身のビジネス・収益が安定化することを目指すものですが、安定化を実現できた優良企業であるほどイノベーションが生まれにくくなってしまう。ではどうすればよいか、ということに向き合った一冊です。

 「両利き」は、原著では「ambidexterity」という単語で表現され、「まるで右手も左手も利き手であるかのようにそれぞれうまく使える状態」を意味します。経営において、右手と左手に当たるのが、事業の新しい可能性を探る「探索」と、探索で発見したものを磨き上げていく「深化」です。

 これら両者のバランスを取って、二兎を追いながら両者を高いレベルで行うことが「両利きの経営」であり、両利きの経営が行えている企業ほどパフォーマンスが高くなる傾向にあると言われています。

 それぞれの内容は以降で説明しますが、最初にお伝えしておきたいことは、プロジェクトがより価値を生み出していくためには、プロジェクトの成果(プログレス)だけをマネジメントするのではなく、プロジェクトの進め方(プロセス)、チームのあり方・状態(チーミング)、そしてチームの学習(ラーニング)もマネジメントする必要があるということです。

「両利きの経営」における両利きの定義

  • 【両利きの経営】不確実性の高い探索を行いながらも、深化によって安定した収益を確保しつつ、そのバランスを取って二兎を追いながら両者を高いレベルで行うこと
  • 【探索】なるべく自身・自社の既存の認知の範囲を超えて、遠くに認知を広げていこうという行為
  • 【深化】探索などを通じて試したことの中から、成功しそうなものを見極めて、それを深掘りし、磨き込んでいく活動

出典:『両利きの経営』(チャールズ・A・オライリー、マイケル・L・タッシュマン、東洋経済新報社、2019年、6ページ)

 両利きの経営を実現したと言われる代表的な事例の1つがアマゾン・ドット・コムです。アマゾンは、当初「地球上最大の書店」をうたいながら事業をスタートさせましたが、書店にとどまることなく、1)書店からオンライン・スーパー・ストアへ、2)小売業者がそれぞれの商品を販売できるオンライン・プラットフォームへ、さらには3)クラウド・コンピューティング会社へ、という形で、ビジネスを拡大させていきました8。書店としてのビジネスを深化させながらも、他のビジネスを探索し続けたのです。

 両利きの考え方の背景には「サクセストラップ」(成功の罠)があります。サクセストラップとは、組織が既存の成功したビジネスモデルや戦略に過度に依存し、新しいイノベーションや変化に適応する能力を欠くリスクを指します。

 このトラップに陥ると、組織は市場の変化に迅速に対応できず長期的な競争力を失う可能性があるため、既存のビジネスを維持しつつ新しいアイデアやビジネスモデルを積極的に探求し、柔軟に対応するバランスが重要です。

両利きとは「二項動態」的な思考

 このような考え方は「二項動態」の考え方にも通じます。野中郁次郎によれば、二項動態は「物事や問題を『あれかこれか』でとらえる二項対立(dichotomy)ではなく、あれもこれもでとらえ、状況に応じて何をなすべきかを機動的に判断、行動する『生き方(a way of life)』」とされるものです。野中は、ジョン・ルイス・ギャディス『大戦略論』の解説で、二項動態について以下のように言及しています。

  • 対立して分断していると見える二項は実は一体であり、二項はその一体の両面(デュアリティ)であって、それらの間には幅のある中間部があり、二項を白と黒の両極とすれば、その中間部は濃淡のある灰色のグラデーションである。
  • さらにその二項は中間部で相互作用しており、その相互作用の強さも場所も環境の変化に合わせてダイナミック(動態的)に変化しバランスを取りながら動いている。
  • つまり、社会に数多く存在している矛盾やパラドックスと呼ばれる「二項対立」は、実は分断して動きがない(取れない)現象ではなくて、絶えず変化し続けているのであって、実践的には大きく環境が変化するまで「動的均衡」をいかに維持していくか、新しい環境に合わせていかに二項をより高い次元で折り合わせて統合するか、という問題なのである。

出典:『大戦略論』(ジョン・ルイス・ギャディス、早川書房、2018年、387ページ)

 この二項動態の考え方は、私たちに勇気を与えてくれます。

 プロジェクトを進めていく中では、日々さまざまな矛盾に直面します。上司からの要求に対応しつつも、プロジェクトメンバーからの要求にも対応しなければならない状況。メンバーのモチベーションを低下させてしまうような判断をしなければならないプロジェクトの状況。中長期のビジョンと矛盾することを直近の対応としては行わなければならないような状況。

 しかし、これらは「分断して動きがない(取れない)現象ではなくて、絶えず変化し続けている」動的な状態であるという視点は、状況を打開していくうえで極めて重要な視点です。

 二項対立的に「0か1か」「あれかこれか」で考えるのは、物事をわかりやすくシンプルにさせる利点はあるものの、一方で、物事を単純化しすぎてしまったり、一方の考え方・立場に固執してしまい、結果、物事に対して正しく対応しにくくなってしまうということが起こります。

 そのため、相反する考え方や方法論を「どちらか」ではなく「どちらも」活用する二項動態的な考え方=「両利き」が必要とされているのです。

 私たちはプロジェクトや仕事を進める中で、「両利き」の考え方をもてているでしょうか? 個人的な経験から言えば、多くのプロジェクト・仕事では、「どちらか一方」しかもてていないことが多く、中にはそれが極端になることもあるように感じています。たとえば以下のようなケースです。

  • 計画やルールを過度に重視して、状況がどのようになろうとまったく変わろうとしないプロジェクトや計画やルールをまったくもたずに、ただただ変え続けることだけをよしとするプロジェクト(計画と変化のアンバランス)
  • 過去だけに固執して未来をまったく見ようとできないプロジェクトもあれば、未来志向でいるような体をとりながらも、過去を無きものとしたり、過去の経験をまったく活かせていないプロジェクト(過去と未来のアンバランス)
  • 具体的な思考がなく、ただただ抽象的な絵空事のような思考しかできないプロジェクトもあれば、具体的な事柄だけが重視され、大局的に物事を見ることができていないプロジェクト(具体と抽象のアンバランス)

 これは、どちらであってもプロジェクトをよい状況にはせず、プロジェクトマネージャー・プロジェクトメンバーも苦しい状況に追い込まれることになるでしょう。

「両利きのプロジェクトマネジメント」とは何か

 本書でお伝えする「両利きのプロジェクトマネジメント」は、「どちらか」ではなく「どちらも」活用する二項動態的なプロジェクトマネジメントの方法論です。

 そこでキーとなるのが「直線」と「曲線」という概念です。

 簡単に言えば、「直線」は合理性や計画性などを重視し、一直線にゴールを目がけて進んでいくマネジメントスタイル(直線的なモード)、「曲線」は散歩をするように、必ずしも具体的なゴールを求めることなく、さまざまなものに偶発的に出会うことを意図するマネジメントスタイル(曲線的なモード)です(図表1)。

図表1 プロジェクトマネジメントにおける「直線的なモード」と「曲線的なモード」
図表1 プロジェクトマネジメントにおける「直線的なモード」と「曲線的なモード」

 「直線的なモード」と「曲線的なモード」という相対する考え方・方法論をもつことで、それがプロジェクトを進める際の判断軸となり、より適切なマネジメントの手段が判断できるようになるだけでなく、ある手段がうまくいかなかった場合に別の手段を次善策として選択しやすい状態にもなります。

 このような観点から、本書では「両利きのプロジェクトマネジメント」を以下のように定義します。

両利きのプロジェクトマネジメントとは、プロジェクトを推進する際に、「直線的なモード」と「曲線的なモード」を状況に合わせて行き来しながら使いこなしていく考え方

 プロジェクトのゴールに向かってスピーディーに物事を進めることも大事だが、一方で、スピードを落としてじっくり対話をしたりすることも大事であるということです。結果的には、その方がより素晴らしいゴールに効率的に到達できるというのが本書でお伝えしたいことです。

直線的なモードと曲線的なモード

 プロジェクトにおける直線的なモードと曲線的なモードとはどういうことか。それぞれの具体例を示します(図表3-2)。

図表2 直線的なモードと曲線的なモードの具体例
図表2 直線的なモードと曲線的なモードの具体例

 直線的なモードは一直線にゴールを目指すことを重視するモードで、曲線的なモードは必ずしもゴールだけを目指さず、さまざまなものに偶発的に出会うことを重視するモードです。

 たとえば、プロジェクトの計画やゴールを設計する際であれば、直線的なモードはゴールを明確にしたり、ゴールまでの計画を詳細化することを重視します。一方、曲線的なモードは対話を通じてよりよいゴールを探求したり、状況に合わせてゴールを柔軟に変更することを重視します。

 また、プロジェクトを進める中では、直線的なモードはとにかく計画どおりに進めることを重視しますが、曲線的なモードは、メンバー各自が感じていることなど状況の理解や把握を重視し、状況に合わせた変化を厭わないスタンスです。

 会議であれば、直線的なモードは事前のアジェンダ設計を厳密に行い、会議時はそのアジェンダどおりに進めることを重視しますが、曲線的なモードは予定外の対話を大切にします。

 繰り返しになりますが、ここでお伝えしたいことは、プロジェクトを進める中では直線と曲線の両者を使いこなしてほしいということです。直線的なモードで進めていてうまくいっていなければ曲線的なモードにしてみる、逆に、曲線的なモードに寄ってしまってうまくいっていなければ、直線的なモードにしてみる。そのような形で、状況に合わせて使いこなしていくことで、プロジェクトの難しい状況も打開しやすくなるでしょう。

なぜ両利き(直線と曲線)が必要なのか

 プロジェクトをマネジメントしていくうえで、このような両利きがなぜ必要なのか。

 すでに言及している点もありますが、両利きを使いこなしていただくうえでとても重要なので、あらためてお伝えしたいと思います。

理由1:絶対うまくいく魔法の道具は存在しない

 私たちはさまざまなプロジェクトや仕事に関わる中で、「こうしたらうまくいく」「これさえ行えばうまくいく」という魔法の道具を求めてしまいます。計画のつくり方、スケジュール管理のやり方、タスク管理のやり方、会議の進め方、ふりかえりのやり方など。

 しかし、残念ながら「こうしたらうまくいく」という絶対的なものは存在しません。なぜなら、あるやり方が適切に機能するかどうかは、人間関係も含むプロジェクトの状況に依存しているからです。同じやり方をやったとしても、プロジェクトによってうまくいったりうまくいかなかったり、メンバーによってうまくいったりうまくいかなかったりという経験はみなさんにもあるのではないかと思います。

 ですので、プロジェクトを進める中で重要なのは、「プロジェクトのある状況において、どのような考え方ややり方を用いるべきなのか」をプロジェクトチームとして議論・選択しながら、さらには、選択した考え方・やり方をプロジェクトの状況に合う形でカスタマイズしたり、自ら最適な考え方・やり方を生み出していくことです。

 想像してみてください。たとえば、包丁を研がない職人が寿司を握るお店に行きたいと思うでしょうか? 工具のメンテナンスをしない大工に家を建ててもらいたいと思うでしょうか?

 プロジェクトも同じです。お客様に何らかのサービスや商品を届けるプロジェクトならば、そのプロジェクトの道具にも目を向ける必要があります。

理由2:物事を進めていくには、直線的なモードだけでも、曲線的なモードだけでも対応できない

 プロジェクトマネジメントの各種方法論は、プロジェクトの特性や状況に応じて、複数のグラデーションの中から選択されるべきものです。

 たとえば、会議をどのように進めるべきかと考えた場合に、事前にプロジェクトマネージャーが設計したアジェンダどおりに会議を進めること(直線的なモード)と、事前にアジェンダや議論のゴールを決めずに、メンバーがいま感じていることについて雑談すること(曲線的なモード)はどちらが大事でしょうか。言うまでもなく、「どちらも」です。

 問うべきは、「アジェンダどおりに会議を進めるべきか?」や「雑談をすべきか?」ではなく、「どのような状況においてアジェンダどおりに会議を進めるべきで、どのような状況において、どの程度雑談をすべきか?」です。

 もし、みなさんが関わっているプロジェクトが「アジェンダどおりに会議を進めるべきである」という価値観しかもっていなければ、アジェンダどおりに会議を進めた結果うまく行かない場合に、対応に困ってしまうでしょう。

 同様に、みなさんが関わっているプロジェクトが「事前にアジェンダや議論のゴールを決めずに、メンバーがいま感じていることについて雑談することが大事である」という価値観しかもっていなければ、プロジェクトがいつまでたってもまったく進まない状況に陥ってしまうでしょう。直線的なモードだけでも、曲線的なモードだけでもうまくいかないのです。

 一方のモードに陥ってしまうような状況を避けるためには、大前提として、一方のモードを否定的に見るのではなく、それぞれのモードのメリット・デメリットはどこにあるのか、どのような状況において用いるべきなのかを考えるとよいでしょう。「雑談」を否定するのも、「計画どおりに進めること」を否定するのも、どちらも望ましい態度ではありません。それぞれ、必要な役割があるのです。

理由3:方法論を判断・選択する際の補助線となる

 両利き(直線と曲線)が必要な理由の3点目は、AとBのどちらも大事という視点をもつことが選択するときの「補助線」となり、何を方法論として用いるべきかの判断がしやすいためです。

 ある方法論1つだけを見ているとき、実はその是非は判断しにくいものです。なぜなら、多くの方法論は、ある状況では有効だが別の状況では必ずしも有効ではないためです。だとするならば、別の対極的な方法論と比較しながら、「いまの状況ではどちらの方法を用いるべきか」もしくは「いまの状況ではどちらをどの程度バランスさせるべきか」という問いの方が正しい方法論を選択しやすくなります。

 そのうえで、プロジェクトマネジメントの方法論・アプローチをプロジェクトの状況に合わせて変化させること、図表3で言えば、軸を左右に行き来することがプロジェクトマネジメントでは不可欠です。

図表3 方法論を判断・選択する際の補助線
図表3 方法論を判断・選択する際の補助線

 たとえば、ある状況において何らかの意思決定をプロジェクトとして行わなければならない場合に、プロジェクトマネージャーが1人で素早く判断すべきか、それとも、プロジェクトチームでじっくり対話を重ねてチームで判断をすべきか。これはプロジェクトやチームの状況に依存するものであり、一概に「こうすべき」と言えるものではありません。

 プロジェクトのフェーズや状況によって判断の仕方は変わりますし、また、同じ状況でも、チームの状況や関係性によっても判断の仕方は変わります。長年の関係があり経験も豊富なチームであればチームで判断すべきかもしれませんが、プロジェクトマネージャー以外は経験の浅いメンバーであるような状況であればプロジェクトマネージャーが判断すべきかもしれません。逆に、メンバーの成長を考えれば、経験が浅かったとしてもメンバーに判断を委ねた方がよい状況もあります。

 避けたいのは、たとえば「意思決定はすべてプロジェクトマネージャーが行うべきである」ということであったり、「真のゴールを見つけるために、対話を通じてゴールを問い直し続けるべきである」というような形で、特定の考え方に固執することです。これでは、プロジェクトをよい状態に導かず、何より、プロジェクトマネージャーもメンバーも苦しめることになってしまうでしょう。

自分たちのモードに自覚的になる

 では、直線的なモードと曲線的なモードを使いこなしていくためにはどうすればよいのか。

 まず何より大事なことは、自分たちのいまのモードがどちらにあるのか、自分たちのモードに自覚的になることです。

 もしあなたがプロジェクトマネージャーの立場で、以下のように考えていたら、あなたは直線的なモードになっている状態だと言えるでしょう。

  • 時間もないし、計画は自分で立てて、メンバーには作業だけをお願いしよう
  • プロジェクトのゴールは仕様書でクライアントからもらっているので、それを前提に、とりあえず成果物を完成させるためのスケジュールを組もう
  • 今日の会議で、メンバーからいろいろ意見があるかもしれないが、私の想定で進めてもらうことにしよう

 一方、もし以下のように考えていたら、あなたは曲線的なモードになっている状態だと言えるでしょう。

  • これからプロジェクトをはじめていくが、私が形式的にプロジェクト計画書をつくってしまうのではなく、メンバー各自とプロジェクトへの思いをじっくり対話してから、それをプロジェクト計画書に落とし込んでいこう
  • クライアントから提示された仕様書に要件は書かれているが、いきなりそれを前提にして進めてしまわないで、クライアントの現場メンバーの思いや問題意識などもじっくりヒアリングをしてから、実作業を進めていこう
  • メンバーの元気がなさそうだから、今日の会議では想定していたアジェンダを変更して、雑談をする時間を取ろう

 みなさんはいま、どちらのモードでプロジェクトを進めようとしていたでしょうか? 今日の会議をどちらのモードで進めようとしていたでしょうか?

 まずは、自分たちがいま取ろうとしているモードに自覚的になっていただければと思います。

モードをチームですり合わせる

 次に必要となるのは、モードをチームですり合わせていくことです。プロジェクトマネージャーの判断に任せてスピーディーに進めた方がよいのか、それとも、じっくり時間をかけて対話をした方がよいのか。そのようなこと をチームですり合わせるということです。

 繰り返し言及しているように、直線と曲線はどちらが正しいとか間違っているとか、そういうものではなく、状況に合わせて使いこなすものです。

 そのため、プロジェクトチームとしていま用いようとしているモードを理解しているか、納得できているかということが何より重要になります。メンバーはじっくり対話をしたいと思っているのに、プロジェクトマネージャーが自分だけの判断でプロジェクトを進めようとしていたならば、メンバーは違和感をもち、いずれプロジェクトに悪影響を与えてしまうでしょう。

 仮にプロジェクトマネージャーの判断でスピーディーに進めていくとしても、そのようなモードを選択せざるをえない状況であることが説明され、メンバーが納得感をもつことができていれば問題は起こらないでしょう。メンバーも、そのモードに応じた対応をすることができるのです。

両利きのプロジェクトマネジメント 結果を出しながらメンバーが主体性を取り戻す技術
 

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両利きのプロジェクトマネジメント
結果を出しながらメンバーが主体性を取り戻す技術
 

著者:米山知宏
発売日:2025年6月16日(月)
定価:2,420円(本体2,200円+税10%)

本書について

20年以上にわたって多数の民間企業から自治体・行政まで、さまざまな内容・規模のプロジェクトに携わってきた著者がたどり着いた究極の「プロジェクトマネジメント」をわかりやすく解説します。

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この記事の著者

渡部 拓也(ワタナベ タクヤ)

 翔泳社マーケティング課。MarkeZine、CodeZine、EnterpriseZine、Biz/Zine、ほかにて翔泳社の本の紹介記事や著者インタビュー、たまにそれ以外も執筆しています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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