もうひとつのフォームの実装方法useForm()ヘルパー
Inertiaでフォームを実装する方法として、Formコンポーネントの他に、useForm()ヘルパーがあります。カクテル情報の編集画面を題材に、このuseForm()ヘルパーを紹介します。
編集画面の表示処理コード
カクテルリスト画面の詳細表示部分に関して、図4のように[このカクテルの編集はこちら]というリンクを[閉じる]ボタンの上に追加したとします。

このリンク部分に関するコードは、カクテル編集画面表示へのパスを/showCocktailEditとするならば、リスト5のようになります。
<script setup lang="ts"> : const showCocktailEditLink = ref(""); // (1) const showDetail = (id: number) => { // (2) : showCocktailEditLink.value = `/showCocktailEdit/${id}`; // (3) }; : </script> <template> : <section v-if="detailSection"> : <Link v-bind:href="showCocktailEditLink">このカクテルの編集はこちら</Link><br> // (4) <button v-on:click="closeDetail">閉じる</button> </section> </template>
リスト5の(1)でカクテル編集画面へのパス文字列を表すリアクティブな変数としてshowCocktailEditLinkを用意します。そして、カクテルリスト中のカクテル名をクリックしたときに実行されるメソッドである(2)のshowDetail内の(3)で、カクテルIDを元にルートパラメータ付きのリンクパスを生成します。そのリンクパスを元にLinkコンポーネントを利用してリンクを生成しているのが(4)です。
この/showCocktailEditのパスに対して呼び出されるアクションメソッドを、同名のshowCocktailEdit()とすると、リスト6のコードとなります。
class CocktailController extends Controller { : public function showCocktailEdit(Cocktail $cocktail) { return Inertia::render("cocktail/CocktailEdit", ["cocktail" => $cocktail]); } }
リスト6では、ルートモデルバインディングを利用してCocktailオブジェクトを引数として受け取り、それをそのまま画面に渡すデータとしてInertia::render()メソッドの第2引数に利用しています。これで、第1引数で指定しているCocktailEditコンポーネントに処理が移管されます。
useForm()を利用する場合は通常のformタグ
では、そのCocktailEditコンポーネントはどのようなコードになるかというと、リスト7のようになります。
<script setup lang="ts"> import {Link, useForm} from "@inertiajs/vue3"; //Cocktailインターフェースを定義。 interface Cocktail { id: number; name: string; price: number; } //Propsインターフェースを定義。 interface Props { // (1) cocktail: Cocktail; // (1) } // (1) //Propsの取得。 const props = defineProps<Props>(); // (1) //useForm()を使ってフォームオブジェクトを定義。 const form = useForm({ // (2) id: props.cocktail.id, // (3) cocktailName: props.cocktail.name, // (4) cocktailPrice: props.cocktail.price, // (5) }); </script> <template> <h1>カクテル管理</h1> <section> <h2>カクテル追加</h2> <form v-on:submit.prevent="form.post('/editCocktail')"> // (6) <label for="cocktailName">カクテル名</label> <input type="text" v-model="form.cocktailName" id="cocktailName"> // (7) <div v-if="form.errors.cocktailName">{{ form.errors.cocktailName }}</div><br> // (8) <label for="cocktailPrice">金額</label> <input type="number" v-model="form.cocktailPrice" id="cocktailPrice"> // (9) <div v-if="form.errors.cocktailPrice">{{ form.errors.cocktailPrice }}</div><br> // (10) <button type="submit">更新</button> </form> <Link href="/cocktailList">カクテルリストへ戻る</Link> </section> </template>
リスト7のポイントは、フォームの定義にFormコンポーネントを利用するのではなく、(6)のように通常のformタグを利用している点です。
ただし、formタグのサブミット実行の際に、通常のリクエスト送信ではなく、スクリプトブロックの処理が実行されるように、v-on:submit.preventを定義しています。そして、実行されるメソッドもスクリプトブロックで独自定義したものではなく、(2)のuseForm()によって生成されたフォームオブジェクトのメソッドを実行しています。
このuseForm()は、Inertiaに用意されたヘルパー関数であり、フォームに関する処理を一手に引き受けてくれるオブジェクトを生成してくれます。
useForm()の引数はリクエストパラメータを定義
useForm()の引数として、サーバサイドに送信したいリクエストパラメータをプロパティとして定義したオブジェクトを渡します。
リスト7では、(3)でカクテルID(リクエストパラメータ名id)を初期値props.cocktail.id、(4)でカクテル名(リクエストパラメータ名cocktailName)を初期値props.cocktail.name、(5)でカクテルの金額(リクエストパラメータ名cocktailPrice)を初期値props.cocktail.priceとして定義しています。
この時点で(1)で定義した通り、Propsとして渡されたCocktailオブジェクトの値、すなわちリスト6のInertia::render()の第2引数で渡されたカクテル情報の値が、useForm()によって生成されたformオブジェクトに初期値として格納されたことになります。
もちろん、これらの値は、テンプレートブロックでもリアクティブな変数として利用できます。実際、カクテル名の入力欄である(7)とカクテルの金額の入力欄である(9)では、v-modelを利用して入力値との双方向データバインディングを行っています。
リクエスト送信もフォームオブジェクトのメソッドを利用
先述の通り、フォームのサブミットイベントにおいて実行されているのは、このフォームオブジェクトのpost()メソッドとなっています。
このように、実際のリクエスト送信もフォームオブジェクトに用意されたメソッドを利用し、引数として送信先パスを指定します。もちろん、ここで利用したpost()メソッドの他に、リクエストメソッドに応じて、get()、put()、patch()、delete()の各メソッドが用意されています。
これらのメソッドが実行された際に送信されるデータは、その時点でフォームオブジェクトが保持しているプロパティの値となります。リスト7で言えば、(3)のid、(4)のcocktailName、(5)のcocktailPriceが送信されます。ここで特徴的なのは、idです。通常、このようなidの値は変更不可なため、入力コントロールは用意せずにhiddenタグで送信する仕組みになっています。それがリスト7を見るとわかるように、不要となります。
バリデーションメッセージもフォームオブジェクト内に格納される
そのようにして送信された先で実行されるアクションメソッドにおいて、リスト3と同様にサーバサイドバリデーションを実行した場合、そのバリデーションメッセージもフォームオブジェクト内にerrorsプロパティとして格納されます。それらのメッセージをv-ifを利用してメッセージが存在する場合に表示させているのが、リスト7の(8)と(10)です。
まとめ
Laravelのフロントエンド的画面作成方法を紹介する連載の最終回は、いかがだったでしょうか。今回は、Inertiaによる画面遷移、およびフォームデータの取り扱いを紹介しました。
4回にわたって紹介してきたLaravelのフロントエンド的画面作成方法もこれで終了です。本連載で紹介しきれなかった細かい仕様などもありますが、LivewireとInertiaの使い方の大枠は紹介できたのではないかと思います。この連載が読者諸兄姉に少しでも役に立ったのならば、これほどうれしいことはありません。