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AIエージェントで加速する、ソフトウェア開発の進化論

【実践編】6つのステップで見る、AIエージェントと走る開発ライフサイクル

第2回 計画立案・プロトタイプから、コーディング、セキュリティ強化まで

ステップ5:Copilotコーディングエージェントによる最適化

 新機能がリリースされた後も、継続的な改善は必要です。プロダクトマネージャーはお客様からのフィードバックを収集し、より信頼性の高いデータAPIに切り替えることで、ウィジェットのレコメンデーション精度の改善点を特定します。

 この変更を実装するためのイシューを作成し、それをGitHub上で直接GitHub Copilotに割り当てます。GitHub Copilotコーディングエージェントはバックグラウンドで動作し、必要な変更を実装してプルリクエストを作成します。プロダクトマネージャーは、このプルリクエストをレビュー準備完了としてマークします。

 開発者がGitHub Copilotの作成したプルリクエストをレビューし、フィードバックを残すと、GitHub Copilotはそれを反映して修正を加えます。最終的に開発者が承認すれば、プルリクエストはマージされ、変更が本番環境に反映されます。この一連の流れにより、リリース後の改善作業も効率的に進められます。

 また、新機能リリース後、別の機能の開発中に、開発者がAIウィジェットのコードに小さなバグを発見した場合についても、開発者はコンテキストの切り替えを避けるため、CopilotにVS Codeから直接プルリクエストを作成するよう指示し、CopilotがGitHub上にプルリクエストを作成することで、別の開発者がレビューすることが可能になります。

GitHub Copilot Agent Mode操作画面(2)
GitHub Copilot Agent Mode操作画面(2)

ステップ6:Copilot Autofixによりセキュリティ強化

 開発プロセスにおいて、セキュリティは常に重要な課題です。ここでは、リポジトリの管理者が事前にコードスキャンを有効化しています。コードスキャンアラートが潜在的な脆弱性を指摘した場合、セキュリティマネージャーは脆弱性を自動修正する「Copilot Autofix」を使用して、修正を自動的に提案します。

 GitHub Copilotは脆弱性の内容を分析し、適切な修正方法を提示します。開発者はこれをレビューし、問題がなければ承認します。このプロセスにより、セキュリティ上の問題を迅速に解決し、リスクを最小限に抑えることができます。

効果測定を通じてAIエージェントの価値を最大化

 ここまで、計画から実装、テスト、リリース後の最適化、セキュリティ強化まで、開発ライフサイクル全体でAIエージェントを活用する6つのステップを見てきました。しかし、AIエージェントを導入するだけでは十分ではありません。実際にどれだけの効果をもたらしているのかを把握し、継続的に改善していくことが重要です。そのためには、適切な指標を設定して追跡する必要があります。

 まず注目すべきは、変更のリードタイム、つまりイシューが作成されてからコードがマージされるまでの時間です。AIエージェントがワークフローを加速させるにつれて、この時間は短縮されるはずです。

 次に、プルリクエストのスループット、つまり開発者1人あたりの週次マージ件数を監視します。これに加えて、開発者自身の申告や定常タスクの追跡を通じて、実際にどれだけの時間が短縮されているかを把握します。

 品質面では、バグの発生率を監視し、リリース後に発見されるバグが増加していないか、あるいは減少しているかを確認します。同時に、セキュリティアラートのクローズ状況も追跡します。自動修正提案が承認された件数を含め、セキュリティ対応がどれだけ効率化されているかを測定するのです。

 最後に、開発者の満足度を測るアンケートを実施します。AIエージェントが真に有用なのか、それとも逆に手間を増やしているのかを評価するためです。これらの知見に基づいて、AIエージェントをどの領域に広げていくべきかを判断します。影響が大きく、なおかつリスクが低い領域から導入を広げていくのが賢明でしょう。

AIエージェントが開発者の可能性を拡げ、真の価値創造へ

 AIエージェントの本質は、開発者が持つ力を増幅させることにあります。定型的な実行作業をAIが担うことで、開発者はアーキテクチャの設計、戦略の立案、創造的な課題解決といったより高度な領域に注力できるようになります。IDE内でのリアルタイムな協業、クラウド上でのバックグラウンド処理、プロアクティブなセキュリティ対策といった機能が、ソフトウェア開発ライフサイクル全体にシームレスに統合されるのです。

 重要なのは、AIエージェントを単なる便利なツールとしてではなく、開発者のこれまでの働き方を強化・拡張するツールとして捉えることです。計画から実装、テスト、改善、セキュリティ確保まで、開発のあらゆる段階でAIエージェントを活用することで、開発者は細かなタスクの消化に追われることなく、真の価値創造にリソースを費やせるようになります。開発者が本来持っている創造性と判断力を存分に発揮できる環境を作ること。それこそが、AIエージェントがもたらす最も大きな価値なのです。

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この記事の著者

服部 佑樹(GitHub Japan)(ハットリ ユウキ)

 GitHub Japan Sr. Customer Success Architect 主にGitHubの企業向けの技術的な支援を実施。日本国内の企業がAIを活用してソフトウェア開発を高速化・効率化し、モダナイゼーションを推進できるよう積極的に支援している。特にGitHub Copilotの普及に...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/22595 2025/12/12 11:00

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