大手小売企業におけるオンラインストアへのAIウィジェット追加
ここでは、大手小売企業のエンジニアリングマネージャーとして、オンラインストアに新しいAI搭載ウィジェットを追加するプロジェクトを例に、AIエージェントのユースケースを考えてみましょう。このウィジェットは、ユーザーの所在地や地域の気象傾向といった要素に基づいて、パーソナライズされた商品提案を行います。お客様が自分に適した商品を選びやすくなることで、購買体験の向上を目指すものです。
このプロジェクトでは厳しい納期が設定されており、開発者・非開発者を問わず、各プロセスを可能な限り加速させる必要があります。同時に、新機能リリース後の保守作業でチームが過度な負荷を抱えないよう配慮しなければなりません。こうした状況で、AIエージェントがどのように開発チームを支援するのか、順を追って解説していきます。
ステップ1:Copilot Chatで計画を立てる
プロジェクトの最初のステップは計画立案です。まず、プロダクトマネージャーはGitHub Copilotのチャット機能「Copilot Chat」を使い、新機能開発に必要な作業全体を把握します。そのためにプロジェクトのコンテキストをGitHub Copilotに提供する必要があり、UIのモックアップファイルをアップロードし、既存のコードベースが保管されているリポジトリへのリンクを設定します。
こうした情報を基に、GitHub Copilotに対して「この機能を実装するために必要な主要なタスクは何か」「既存のコードベースのどの部分に影響するか」といった質問を投げかけます。これに対してGitHub Copilotは、コンテキストを理解したうえで回答を提示します。
必要なタスクの概要が見えてきたら、プロダクトマネージャーはGitHub Copilotに各作業項目についてイシュー(課題)を作成するよう依頼します。GitHub Copilotは専用の編集画面である「イマーシブ ビュー」でイシューの下書きを生成し、プロダクトマネージャーはそれを確認・修正したうえでリポジトリに公開できます。この段階で、一部のイシューには「あれば良い機能」や「保守」といったラベルが付けられます。これらは後ほどGitHub Copilotコーディングエージェントに割り当てる候補となります。
次に、プロダクトマネージャーはプロジェクトのコンテキスト整理と共有を担う「GitHub Copilot Spaces」を使って、プロジェクト専用のスペースを作成します。ここには図解やコードファイルへの参照といったリソースを集約し、いくつかのテスト用質問を投げかけて動作を確認した後、組織内でスペースを共有します。GitHub Copilotはプロダクトマネージャーが追加したすべてのコンテキストをすでに保持しているため、スペース内で開発者から投げかけられた質問に対して的確に回答を返すことができます。
ステップ2:GitHub Sparkでプロトタイプを作成
計画がまとまったら、次はプロトタイプ作成です。プロダクトマネージャーは自然言語からアプリケーションを生成できる「GitHub Spark」を開き、ウィジェット作成を指示します。ここでは自然言語でプロンプトを記述したり、前段階で作成したドキュメントを貼り付けたり、スクリーンショットをアップロードしたりすることができます。
GitHub Sparkでは、LLM(大規模言語モデル)を統合したフルスタックアプリケーションを生成できます。テキストエディタ、コンパイラ、デバッガといった開発ツールが一つにまとまったIDE(統合開発環境)を開く必要もなく、自然言語によるプロンプトを活用することで、推奨機能を備えた動作するアプリが短時間で完成します。自然言語、ビジュアルツール、コードを組み合わせて、組み込みAIを持つアプリケーションを素早く形にできるのです。
プロトタイプが完成したら、プロダクトマネージャーはプロトタイプを公開し、組織内のメンバーがアクセスできるように設定します。リポジトリを作成して共同作業者を招待することも可能です。この段階で、関係者全員が実際に動作するプロトタイプを確認でき、早期のフィードバックを得られます。
プロトタイプを洗練させるためには、GitHub Sparkで再度プロンプトを記述したり、ビジュアルエディターを使用したり、コードを直接編集したりできます。「プロンプト」タブでは、コードを編集せずに推奨機能の基盤となるテキストを調整できます。変更はライブプレビューに即時反映されるため、プロジェクトマネージャーは編集がアプリに与える影響を直ちに確認できます。
