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Developers Online イベントレポート

その経験、プロポーザルで伝わっていますか? デブサミ2027コンテンツ委員が明かす「選ばれるプロポーザル」の作り方

【デブサミ2027連動企画】コンテンツ委員会が明かす「選ばれるプロポーザル」の作り方 ~テーマから審査基準まで!プロポーザルの疑問に答える座談会【Developers Online #4】~

小玉 莉子(編集部)[著]

主語を「私」にして、運用のリアルを凝縮する方法

パターン2:主語が「弊社」では、その人ならではの話にならない

架空のプロポーザル例・パターン2(宣伝色が強すぎる)
架空のプロポーザル例・パターン2(宣伝色が強すぎる)

 2つ目の事例は、自社開発のAIプラットフォーム「SuperExcellentDX」(架空)によって大きな成果を挙げたとアピールする構成だ。ブロッコリー氏はまず、自社プロダクトの宣伝色が前面に出すぎている点を疑問視した。デブサミの公募枠で期待されているのは製品のPRではなく、開発過程における苦悩や失敗、それを乗り越えた技術的工夫である。単なる宣伝が目的であれば、スポンサーセッションを選択する方が適している。

 もう1つの懸念は主語の設定にある。「弊社では〜」「弊社のビジョンとともに」といった記述が並び、語り手がエンジニア個人ではなく企業組織になっている点だ。これでは登壇者が本人である必然性が失われ、仮に採択されても単なる会社紹介で終わってしまう。

 ゆずたそ氏がポイントに挙げるのは、イベント参加者が「自分の現場でも同じ課題がある」「自社でも参考にできる」と共鳴できるかどうかだ。事例発表である以上、一般的な総論ではなく自社の取り組みを詳述することが前提となる。そのうえで、他者が再現でき、自組織に応用できるエッセンスが含まれている必要がある。

 ブロッコリー氏もこれに賛同し、原稿のままでは「製品導入のみが唯一の解決策」と受け取られかねないと警鐘を鳴らす。まず直面した技術的課題とアプローチを示し、結びに「その解決手段として開発したのが当プロダクトだ」と触れる程度に留めれば、聞き手は知見を部分的に持ち帰ることができる。

 ゆずたそ氏は、こうした提案が生まれる背景として、広報成果をアピールしたい、個人の主張を押し出すと社内決裁が下りにくいといった組織特有の事情にも理解を示す。だからこそ、カンファレンスが求める文脈と自社の広報要件を社内で事前にすり合わせておくことが肝要だと説いた。

パターン3:「導入しました」の先にある、技術選定と運用の話

架空のプロポーザル例・パターン3(技術的な深掘りや他者への「再現性のある知見」が欠けている)
架空のプロポーザル例・パターン3(技術的な深掘りや他者への「再現性のある知見」が欠けている)

 3つ目は、新規Webサービスのバックエンドへ新興フレームワーク「SpiraFlow」(架空)を採用した事例だ。ブロッコリー氏は、特定技術に特化した勉強会であれば「使ってみた」という初期導入の報告でも採択されやすいと断ったうえで、デブサミにおいては選定の背景にある事業課題を提示しなければ聴講対象が狭まってしまうと指摘する。コンテンツ委員を3期務める中でも、こうした「やってみた」系統の応募は後を絶たないという。数分間のライトニングトーク(LT)であれば歓迎されるが、デブサミの一般セッションとして選定するのは厳しいのが実情だ。

 ゆずたそ氏も、優劣の判定ではなくイベントとの相性の問題であると前置きしつつ、「導入しました」という報告だけで終われば、公式ドキュメントを生成AIに要約させた内容と大差がなくなると述べる。デブサミで聴衆が求めているのは、なぜ他の有力候補を退けてその技術を選んだのかという「選定基準」であり、長期運用によって初めて直面した障壁や、標準パターンから外れて講じた独自の工夫である。

 「近年の新興技術であれば、技術的に未成熟な側面が残されているはずだ。だからこそ運用現場では未知の課題が次々と噴出する。審査側は、そうしたリアルな格闘のプロセスを拾い上げたい。」(ゆずたそ氏)

 ブロッコリー氏も、「技術選定の背景や判断基準」に焦点を当てることの重要性を追認する。フレームワーク個別の仕様よりも一段抽象化された知見であれば、聞き手は自身の開発言語や技術スタックへ置き換えて応用できる。さらに、公式ドキュメントには載っていない「半年から1年に及ぶ運用の中で露呈した知見」は、社外へ共有されにくい貴重な情報資産となる。そうした生きた情報が盛り込まれているプロポーザルからは、技術と真摯に向き合ってきた深みが伝わってくるという。

 ゆずたそ氏も、技術選定の検討自体は机上でも可能だが、運用時の課題は実際にシステムを動かし続けなければ決して立ち現れないと指摘する。デブサミはものづくりに携わるデベロッパーの祭典であり、現場の手触り感が残る「ビルダーたちの生の声」を共有したいと力を込めた。

 運用の実態を語ろうとすると内容は膨らみがちだが、両氏が求めているのは漫然と事実を羅列した発表ではない。ゆずたそ氏は、プロポーザルの段階で問われるのは文章のボリュームではなく、セッションの核心が伝わる具体性だと述べる。ブロッコリー氏も、1年間の開発経緯を均等に並べるのではなく、最も悪戦苦闘した局面に強弱をつけて語る構成を求めた。導入手順は公式ドキュメントに委ねて簡潔に触れるに留め、「実運用で直面した最大の障壁」を中心に据える構成こそが、前述の「私」を主語にした価値ある発表につながる。

 ゆずたそ氏は、伝えたい情熱を持つエンジニアにこそ登壇してほしいと呼びかけ、その知見を30〜40分の枠組みへ凝縮する推敲を求めた。「100も200もある知見の中から『大事な3つのポイント』を抽出する作業は、実務で格闘した当事者だからこそ取捨選択が難しく骨が折れる。しかし、それは現場で汗を流した実践者にしか成し得ない極めて尊い作業だ。」(ゆずたそ氏)

 この凝縮作業は、社外へプロジェクトの成果や試行錯誤を論理的に伝える優れた訓練にもなる。要点を端的に言語化できるようになれば、社内外ステークホルダーの巻き込みや他部署との連携も円滑に進むとゆずたそ氏は補足する。

 ブロッコリー氏も、惜しくも今回のセッションから削ぎ落としたテーマは、他の勉強会や地域カンファレンスへ展開できると語る。デブサミは東京開催だけでなく、関西や福岡など地方開催も行われている。セッション終了後に登壇者と直接議論を深められる「Ask the Speaker」や懇親会など、知見を共有し合えるチャネルは数多く用意されている。

応募前にやっておきたい4つのステップ

 セッションの締めくくりとして、これから公募へ挑むエンジニアへ向けた実践的なアドバイスが提示された。ゆずたそ氏は、自身が応募する場合のロードマップとして以下の4ステップを推奨している。

  1. 過去1年間の実績棚卸し:自らの開発活動や登壇ネタを広く洗い出す。
  2. テーマ選定とドラフト作成:伝えるべき中心テーマを絞り込み、骨子を書き出す。
  3. AIによる客観的レビュー:「プロポーザル添削くん」へ入力し、壁打ちを行う。
  4. 自身の言葉による推敲と提出:AIの指摘を咀嚼し、自身の生きた言葉でリライトして提出する。

 ブロッコリー氏も、プロポーザルを書き上げた際には、提出前にぜひ「プロポーザル添削くん」を活用して客観的なフィードバックを得てほしいと呼びかけた。そのうえで、「磨き抜かれた熱いプロポーザルが数多く集まり、デブサミ2027のコンテンツ委員が『これも採択したい、どう選べばいいのか』と頭を抱えるような、嬉しい悲鳴を上げられることを心待ちにしている」と締めくくった。

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この記事の著者

小玉 莉子(編集部)(コダマ リコ)

株式会社翔泳社 CodeZine編集部、Developers Summit FUKUOKA/Developers Boostオーガナイザー。公立はこだて未来大学情報アーキテクチャ学科情報デザインコース卒。2022年に新卒で翔泳社へ入社し、CodeZine編集部に配属。好きなものは、車と動物とポーカー。愛車は200系Crown。 Twitter:@rico01_CZ Facebook

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