マイクロソフトは10日、同日開催されたイベント「MIX essentials. Silverlight Day」に先立って記者向けの会見を開き、「Silverlight 2」の概要説明および事例紹介を行った。正式版は、来週リリースが予定されている。
マイクロソフトは10日、同日開催されたイベント「MIX essentials. Silverlight Day」に先立って記者向けの会見を開き、「Silverlight 2」の概要説明および事例紹介を行った。正式版は、来週リリースが予定されている。
Silverlight 2は、マイクロソフトの「ソフトウェア+サービス」戦略を進めていく上で重要な、RIA開発を本格化する技術。同社 デベロッパー&プラットフォーム総括本部長の大場章弘氏は、「今後、クラウドコンピューティングに代表される次世代テクノロジーの世界では、PC、携帯といった様々なデバイスの連携が本格化するが、この際デバイスごとの操作性の違いはユーザーにとって不便。シームレスなユーザーエクスペリエンス、マルチデバイス間の情報同期・共有が重要」と強調した。同様のことは開発にも当てはまり、今後はシームレスな開発ツールの提供にも力を入れていくと述べた。
続いて、マイクロソフト デザイナー製品部マネージャーの春日井良隆氏が、Silverlight 2の機能概要を説明した。
Silverlight 2は、Webブラウザのプラグインとして様々ブラウザ上で動作する、クロスプラットフォームのRIA環境。今回新機能として、大きく「メディア」「RIA」「開発ツールとの連携」が強化された。
メディアの面では、同社の次世代DRM(デジタル著作権管理)技術「PlayReady」を基盤としたSilverlight DRMを実装。従来のWindows環境のみを対象としていたWindow Media DRM(以下、WM DRM)と異なり、Mac OSにも対応している他、WM DRM 10との互換性があり、少ない手間で移行することが可能となっている。今後、同社のDRM技術はPlayReadyに統合されていく予定だ。また、大きな画像を高速に表示し、インタラクティブな操作で自由に拡大/縮小を行える「Deep Zoom」機能も搭載されている。
RIAの面では.NETとの連携が強化され、1.0のJavaScriptに加えて、2.0ではVisual Basic、C#、IronRuby、IronPythonでの開発も可能になった。デフォルトで40以上の標準コントロールが用意され、スタイルテンプレート、コントロールテンプレートにより、コントロールのカスタマイズと再利用も容易。ビジュアルステートマネージャー機能により、コントロールの「クリックされた」「マウスオーバーされた」といった状態(ステート)ごとに表示内容やアニメーションをGUI操作で管理できるようにもなった。コーディングが不要のため、デザイナーにとっても扱いやすい。
データ操作機能も強化され、REST、SOAP、ソケット通信など、様々な形式のWebサービスの利用や、データバインディング、LINQのサポートが行われた。
開発者向けのツール「Visual Studio 2008」には、11月上旬にアドオンの形で「Silverlight Tools」が提供される予定だ。無償版のVisual Web Developer 2008 Expressにも対応している。デザイナー向けの「Expression Studio 2」では、11月中旬にSilverlight 2に対応したService Pack 1が正規登録ユーザーに無償で提供される。
既に導入が始まっているパートナー各社の事例も紹介された。
USENはコンテンツプロバイダー視点で事例を紹介。無料動画サイト「GyaO」では7月にサイトをリニューアルし、トップページでSilverlightの機能を用いたステーションレコメンド(新着動画紹介)を導入した。既に利用者の約7割がSilverlightをインストールしているという。11月1日にはカラオケステーションを開設し、動画の途中で広告を挟む、Silverlightによる新しい広告表現を試していく方針だ。今後もSilverlightを積極的に活用していきたいと述べた。
エス・エス・ジェイは、ソリューションプロバイダの視点で事例を紹介。同社では中堅企業向けに「SuperStream」というクライアントサーバー形式の会計パッケージを提供している。キーボード主体の入力に適したUIでユーザーの評判もよかったが、全体的に古くさい、Web対応ではないという問題点が出てきたため、Silverlightを採用した。Silverlightのメリットとして、プレゼンテーションロジック層とビジネスロジック層との分離のしやすさ、すっきりとした面白いUIが開発できることを挙げた。
アクセンチュアはシステムインテグレータ視点で事例を紹介。企業内のシステムでSilverlightをどう活用できるかを探った。企業システムにおいてユーザービリティは軽視されがちだが、よく考えると、例えば勤怠管理入力のように毎日使うものが多く、実は生産性の面で重要であると指摘。Silverlightに見出した3つの意義として、多くの情報を集約して瞬時に伝える「グラフィカルなプレゼンテーション能力」、クリック操作で簡単に詳細をドリルダウンできるような「インタラクティブ性」、.NETの資産・開発技術を活用できることによる「短期間でのアプリケーション作成」を挙げた。また、RIAの導入において投資対効果が障害となりがちだが、これらを定量化すればハードルを乗り越えやすくなるのでは、と示唆した。
最後にマイクロソフトは「PROJECT UX」というプロジェクトを紹介し、開発体験やアイデアの共有、情報提供を行い、Web開発やWebデザインを支援していくと述べた。
【関連リンク】
・Microsoft Silverlight
・MIX essentials. Silverlight Day
・PROJECT UX
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斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)
株式会社翔泳社 ProductZine編集長。1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテックジン)」...
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