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「どうしてうまくいかないのか?」新しい視点から照らす開発組織づくり

開発組織が急成長──そんな時こそ学ぶ、ミンツバーグ組織論「アート」「クラフト」「サイエンス」の3要素

「どうしてうまくいかないのか?」新しい視点から照らす開発組織づくり 第1回

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 急成長するスタートアップで組織の良さを維持しながら拡大するにはどうすればよいのでしょうか? 本連載では、経営学者であるヘンリー・ミンツバーグ氏の著書『ミンツバーグの組織論』を通じて、この根本的な問いに迫ります。今回は、アジャイル開発と親和性の高いミンツバーグ氏の視点から、組織を「アート」「クラフト」「サイエンス」の3要素で捉える思考法を解説します。組織課題解決の歴史的推移も踏まえ、実践的な組織づくりの新たな視点をお届けします。

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はじめに

 こんにちは。DIGGLE株式会社という経営管理SaaSの開発・提供を行うスタートアップにて、エンジニアリングマネージャーとしてソフトウェア開発や組織の拡大・改善に取り組んでいる北村と申します。インターネット上では「にく」という名前で活動していることもあります。

 今回は、ソフトウェア開発組織(特にアジャイルな組織)において、組織の良さを維持している方や改善を実施している方に向けて、ヘンリー・ミンツバーグ氏の著書『ミンツバーグの組織論』で得た、有用な視点の共有をいくつか紹介していきます。

対象読者

  • EMなどのマネジメント層や開発組織の責任者で、組織づくりに関心がある方
  • 特にアジャイルな組織へと改善をしていきたい方
  • 組織が拡大しても、良さを維持したいと考えている方

組織論について学んでいるワケ

 私が所属するDIGGLEは、ARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)が昨年度比2倍以上の成長を遂げ、今後もダブルでの成長を目指しています。また、それを支える組織の人数も昨年度比2倍に拡大する計画を立てて実施しています。

 事業を高い角度で伸ばせたのにはさまざまな要因がありますが、それを支える現在の組織の良さがあったのは間違いないと捉えています。また、これまでの経験から、組織に急速に人数が増えていく中では、良い面と悪い面のどちらにおいても、今まで保持していた性質が薄まっていくのは間違いありません。

 こういった状況下でも、既存の良さを維持しながら組織を拡大していくには、どういったことが必要でしょうか? 既存の組織の良さが、どういう機序で生まれていたのか、また拡大している組織の中でもその良さを維持し続けるにはどのような要素が必要か。

 そのものずばりを言いあてるのは難しいものの、少なくとも組織の状況を認知し、「こういうことだと思う」と説明できるだけの組織を語る概念・語彙・論点を持つことが必要だと私は考え、組織論を学んでいます。

なぜ『ミンツバーグの組織論』を元にしているか

 ヘンリー・ミンツバーグ氏は、計画重視のポーター氏や哲学的で包括的なドラッカー氏とは対照的に、現実観察に基づく実践的アプローチが特徴です。経営学、特に戦略論やマネジメント論の分野で、その独創的かつ実践的な理論により国際的に非常に高い評価を得ている経営学者です。

 そのミンツバーグ氏による、深い知見を元に組織について網羅的に記された書籍が『ミンツバーグの組織論』です。この書籍には論理の運びを省略している部分がありません。そのため組織改善には欠かせない、ソフトウェア開発組織外の人との合意調整の際にも、丁寧に論理の説明を行える、他者からの批評に耐えうる視点を得ることができます。

 また、ミンツバーグ氏の論はソフトウェア開発組織、特にアジャイルなソフトウェア開発組織で働いている人にとっては視点が親しみやすく、既存の組織論に比べると思考の飛躍を必要とせず滑らかに理解できます。具体的な親しみやすさについては後述します。

 このように優れた内容ではあるのですが、これまでこの組織論をソフトウェア開発組織にあてはめた記事は多くなく、こういった形でソフトウェア開発組織にかかわる多くの方の目にふれることの意義が大きいと考えています。

次のページ
ミンツバーグの組織論とアジャイルな開発組織の思考──共通する部分の具体例

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この記事の著者

北村 大助|DIGGLE株式会社 Devチーム Director(キタムラ ダイスケ)

 DIGGLE株式会社に勤務する開発者。 インターネット上では「にく(niku)」という名前で活動していることもあります。 手に馴染んでいる言語はRuby。 組織が「儲かる」と組織の中の人が「楽しい」を両立させて仕事を進めていくのが好き。 地元である北海道のスポーツチーム、特に北海道コンサドーレ札幌...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/21807 2025/07/31 11:00

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