オブザーバビリティ(可観測性)プラットフォームを提供するGrafana Labsは、記者発表会を開催し、日本法人「グラファナラボ日本合同会社」の設立を発表した。Grafanaは、あらゆるデータソースからのメトリクス、ログ、トレースを統合的に視覚化・分析できるオープンソース(OSS)を中核とするツール。発表会では、共同創業者 兼 CEOのラジ・ダット氏らが登壇し、日本市場への本格参入に向けた戦略や国内での活用事例を紹介した。
「オープン」戦略と「使用量」ベースの課金体系
登壇した共同創業者 兼 CEOのラジ・ダット氏は、Grafanaの核となる価値を「オープン」であると強調した。同社はOSSを企業戦略の根幹に据え、特定のベンダーにロックインされない「オープンエコシステム」や、OpenTelemetryなど「オープンスタンダード」の推進を重視している。ダット氏は、データがどこにあってもGrafanaで視覚化できる中立性を強みとして挙げた。
また、従来製品のデータ「送信量」に基づく課金モデルについて、コストの上昇に対してビジネス価値がそこまで上がっているわけではないという課題を指摘し、Grafana Labsで採用する「アダプティブテレメトリー」を紹介した。これは、送信したデータ量ではなく、実際に「使用した」データに基づいて課金する仕組みであり、コストと価値の連携を図るアプローチだ。AIを活用したアシスタントサービス「Grafana Assistant」も紹介された。
日本法人設立でローカリゼーションとサポートを強化
日本法人のカントリーマネージャーに着任したアンディ・シュワベッカー氏は、日本市場戦略を説明した。日本法人設立に伴い、AWS東京リージョンでのクラウド運用開始、国内チーム採用による日本語サポート体制の強化、さらに2026年初頭の「エグゼクティブブリーフィングセンター(EBC)」開設予定など、日本市場への具体的な投資計画を明らかにした。
副社長執行役員 GTMカントリーリーダーの加賀美正篤氏は、ベンダーロックインのないオープンなAIオペレーション、柔軟なライセンス、日本語化をはじめとする「ローカリゼーション」の3点を軸に、パートナー企業と共に市場を開拓していく姿勢を示した。
国内企業が語るGrafanaの活用事例
発表会では、Grafanaを活用する3社も登壇した。グリーの岩堀草平氏は、モバイルゲーム運用における10年間のGrafana活用史を紹介。当初OSS版を利用していたが、高精度メトリクスの要求やKubernetes環境のスケーラビリティ課題に対応するため、Grafana Cloudへ移行した経緯を説明した。
IoTプラットフォームを提供するソラコムの松井基勝氏は、自社サービスのシステム運用に加え、IoTデータ可視化サービス「SORACOM Lagoon」の基盤としてGrafanaを採用している事例を共有した。
国内初のパートナーであるサイオステクノロジーの喜多伸夫氏は、2021年からGrafana Labsと共に国内展開を進めてきた実績に言及。エンタープライズ利用における日本語サポートの重要性を強調し、日本法人設立による連携強化に期待を寄せた。
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近藤 佑子(編集部)(コンドウ ユウコ)
株式会社翔泳社 CodeZine編集部 編集長、Developers Summit オーガナイザー。1986年岡山県生まれ。京都大学工学部建築学科、東京大学工学系研究科建築学専攻修士課程修了。フリーランスを経て2014年株式会社翔泳社に入社。ソフトウェア開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集・企画・運営に携わる。2018年、副編集長に就任。2017年より、ソフトウェア開発者向けカンファレンス「Developers...
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