セキュリティエンジニアを目指した理由
そもそも3人がセキュリティエンジニアになったきっかけは何か。辻氏は高校生の時、入手したばかりのコンピュータでチャットにはまっていたが、チャット最中に外部からの攻撃があり、チャットコミュニティの仲間に助けられたことでセキュリティに興味を持ったそうだ。
「しょっちゅうブルースクリーンになったことがあって、仲間からセキュリティホールがあることやパッチを当てれば大丈夫だということを教えてもらったんです。それがきっかけでハッキングセミナーに行く様になり、このジャンルを知ることになりました。高校2年生の時です」(辻氏)
3人の中では最年長の根岸氏は、大学生の時、研究室でワークステーション(高性能なコンピューター)を触れる環境にいたため、脆弱性を自動で診断できるツールで解析する機会があった。当時、そのツールが世に出始めたタイミングだったので、セキュリティホールを数多く発見したという。危機感も抱いたが、同時に面白そうだとも思ったのがセキュリティに関心を持ったきっかけだ。1990年代の終わり頃で、セキュリティの事件も一般的になりはじめたタイミングだった。
自身を「承認欲求の塊」だと話すpiyokango氏は、2011年におきた三菱重工の情報漏洩事件の際、その経緯を独自に調べた。それを自分のブログにまとめ公開したところ、予想を上回る人数の読者から「助かった」「わかりやすかった」と感謝の言葉をもらった。このことがきっかけでさらに調べていこうと意欲を持ったそうだ。セキュリティ分野に関わり始めてまだ6年だと言う。
辻氏の次なる野望は曲作り!? メインテーマ「セキュリテイエンジニアはおいしいの?」について
話題は今回のメインテーマに移り、馮氏が「モテる? 儲かる? 楽しい?」とざっくり質問する。モテそうな風貌の辻氏に対し、根岸氏は「辻さんは去年『an・an』に出ましたよね?」と盛り上げる。
辻氏は「ランサムウェア」の用語解説などを含めた、セキュリティのマナーについての記事で、女性誌『an・an』に複数ページに渡って登場した。辻氏は「セキュリティを知らない人にこそ知ってもらいたい」との想いが強い。よく飲み会の席で「『an・an』に載るぐらい言い続けなきゃだめでしょ」と勢いに任せて言っていたほどで、その思いは現実となった。
そして辻氏には次なる野望がある。
「まずは中田ヤスタカさんに会いたい。それで曲を作ってもらう。その曲をきゃりーぱみゅぱみゅに歌ってもらって、ヒットさせる。曲の題名はもう考えていて、そのタイトルは『ばらばらパスワード』」(辻氏)
冗談のようだが、辻氏なら実現してしまいそうだから不思議だ。続いて「セキュリティエンジニアは楽しいのか?」という問いに移った。
「毎年どころか毎日新しい脆弱性や攻撃手法のニュースが出てくる。それがワクワクして楽しいと感じる。これがセキュリティエンジニアに向いている人の特徴なのかもしれません」(根岸氏)
piyokango氏は「セキュリティ関連情報の更新は海外が起点である場合があるので、夜に見かけてしまうことが多い」とし、そこで興奮してしまうのがセキュリティエンジニアなのだそうだ。根岸氏は老婆心で、若手セキュリティエンジニアである辻氏とpiyokango氏の深夜の活動を、健康面で心配していた。
続いて馮氏は、メディアがセキュリティをどう取り上げるべきかについて疑問を投げかけた。煽っているとも捉えられることも多いが、それでも盛り上げて知ってもらったほうがいいのか、下手に情報を出さないほうがいいのか。根岸氏は「多少は煽ったほうが見てもらえると思うが、難しい点だ」と言う。前半でも話があった通り、間違った情報を流してはいけないという前提があるが、セキュリティエンジニアの発言で情報を知る人も少なくない。
「セキュリティエンジニアは、セキュリティ脅威の事実を世間へ適切に伝えることが重要です。目指すは『世界から悲しみを減らすこと』。セキュリティ対策をする部署はコストがかかる部門で、疎まれる。セキュリティ、それだけで人を幸せにはできない。しかし、ひとつでも被害や不幸を減らすことが仕事だと思っています」(辻氏)
これがモテる秘訣なのか、と会場は盛り上がった。ハンドルネームで総務大臣奨励賞を受賞したり、『an・an』に取材までされたりするセキュリティエンジニア。華やかではあるが彼らはお金で動いているようには見えない。そこにあるのは技術への貪欲な関心と、人を不幸にさせない、ひとりの心を大切に扱おうとする小さな誇りのある野心なのだ。今後も彼らの活躍に期待したい。
