不確かな情報が飛び交うネットに、エンジニアの適切な発信を
続いてpiyokango氏は、今年一番気になった事件として、8月に発生したGoogleの通信障害を取り上げた。被害規模が大きく内容が単純ではなかったことでサイバー攻撃ではないかという噂が飛び交った。
「サイバー攻撃だと思われがちなところもあって、リアルタイムのパケットやDos攻撃などを視覚的に表現しているサイト(「Kaspersky Cyberthreat real-time map」)があるんですが、日常的に矢印は飛んでるんですけど、矢印がたくさんあるから攻撃だ、と言う人がいる。いろんな情報がとびかっているところで、マスコミが『これは攻撃じゃないよ』と言い始めてやっと静かになりました。確かな情報が出始めるまで、デマが増幅していく」(piyokango氏)
「Kaspersky Cyberthreat real-time map」
「『そんな情報どこに書いてあるのか』と疑う情報が大量に流れていて。実際にBGPの経路情報を見ているエンジニアが情報を出し始めて、真相はそういうことかと、後になってわかった」(根岸氏)
BGPとはBorder Gateway Protocolの略称で、インターネットの中核となるルーティングプロトコルだ。(参考資料:JPNICによるBGPの解説)一般的にはネットユーザには無縁で、サービスプロバイダ企業などがルーティングおよび利用している。今回のこのGoogleの通信障害は、こういったルート情報の伝搬ミスが原因となった。
瞬時にセキュリティ事案だとわかる時とわからない時がある。ただのメンテナンスなのにサービスが止まるとすぐ「攻撃」に直結して考えてしまう。そのため事前に情報を開示した上で、ツイート等で「メンテナンス中です」と情報を流す会社もある。そうでもしないと安心しない世の中なのだ。辻氏はこの日メディアから「辻さん! 同時多発DoS攻撃が多発しています!」と連絡が入ったという。セキュリティ事案だとの思い込みを前提にした電話だった。
ネットが普及した世の中だからこそさまざまな情報が飛び交う。安易に情報を解釈してしまう人がいて、間違った情報を発信してしまうため、ネットはカオスな状態になりがちだ。piyokango氏はこういった現状にも注目した。何が原因かわからない大規模な障害がおきた場合、エンジニアは適切な情報をきちんと判断し、混乱のないように伝えることが大切だと語った。
100レーンのTwitterをチェックする情報収集力
馮氏は3人の情報収集の方法について尋ねた。中でもpiyokango氏の収集力は尋常ではない。Twitterのデスクトップ用アプリであるTweetDeckで100レーン、つまり100のタイムラインやリストを表示させ、おびただしい量から情報を拾っているそうだ。
「リアルタイムの情報はTwitter上から拾う。Twitterの情報は誤りが混じっていたりするので、ポイントだけ見ずに、継続的に見て判断していく。自分がどこが分かっていないかを考えながら見ていきます」(piyokango氏)
piyokango氏のウォッチしている情報量は同じセキュリティエンジニアでも驚く量だと根岸氏は話す。これに対し根岸氏や辻氏はそこまでTwitterの情報は見ないそうで、辻氏は攻撃コード(エクスプロイト)に着目して情報を拾っていると語る。
「攻撃コードがあるかないかで情報を絞って見ていますね。断言はできませんが、脆弱性が公開されていなければ、攻撃コードも出にくい。その攻撃コードがあるかないかで被害の影響度が違うんです」(辻氏)
会場は100レーンという言葉で湧いた。そのすごさを『目grep力』だと表現した(grepはLinuxの検索コマンドで、目grepは人力でコンピュータのように検索する俗語)。同じセキュリティエンジニアといっても、人によって情報収集方法が違うことに驚いたと法林氏はコメントした。
