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イベントレポート

Well-Architectedなアーキテクチャが大集合! Startup Architecture of the year 2018に輝いたのは?【AWS Summit Tokyoレポート】


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 6月1日、AWS Summit Tokyoの最終日にスタートアップのピッチコンテスト「Startup Architecture of the year」が開催された。ビジネスを支えるシステムアーキテクチャに焦点を当て、スケーラビリティの担保や先進技術の取り入れ方、セキュリティへの取り組みなど、さまざまな観点からWell-Architectedなアーキテクチャを選出する。一般公募から厳しい一次選考を勝ち抜いたスタートアップ企業7社が登壇し、現役CTO100人が選ぶグランプリをはじめ3つの賞を争った。果たして誰が栄光に輝いたのか。当日の様子をレポートする。

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100人の現役CTOが、自らの経験と確かな知見で選ぶ”Startup Architecture of the year”

厳しい選考を勝ち抜いた、スタートアップ企業のエンジニアたち
厳しい選考を勝ち抜いた、スタートアップ企業のエンジニアたち

 スタートアップ向けのピッチコンテストは、ビジネスモデルにフォーカスしたものが多いが、今回はAWSらしくシステムアーキテクチャをテーマにしたピッチを実施。

 最高賞である「Startup Architecture of the year」を目指し、1次選考を勝ち抜いた7社のスタートアップ企業エンジニアが、4分間のピッチで自社のアーキテクトを熱弁した。用意された賞は以下の3つ。

  • Startup Architecture of the year:会場のCTO100名がピッチを聴いたうえ、投票によって選出。
  • AWS SA 賞:アーキテクチャのプロ、AWSのソリューションアーキテクト5名が判定、選出。
  • オーディエンス賞:AWS Summit会場内にパネル展示された各アーキテクチャ図に投票用のIoTボタンが設置されており、プッシュが最も多かったものが選出。

Game Server Services 株式会社 代表取締役社長 CEO 丹羽一智氏

Game Server Services 株式会社 代表取締役社長 CEO 丹羽一智氏
Game Server Services 株式会社 代表取締役社長 CEO 丹羽一智氏

 最初に登壇したのは、ゲームサーバのBaaSを開発・提供するGame Server Services 株式会社の丹羽氏。同氏は新卒でセガに入社後、任天堂でNintendo 3DSのOS、SDKの開発や、サードパーティに提供する汎用ゲームサーバの開発・運用といった業務に携わってきた。

 丹羽氏は、独立してゲームサーバのBaaS事業を開始した背景として、「コンソールゲームにおいてはSDKの一部として(ゲームサーバなどが)すべて開発者に提供されていた一方、スマホゲームのプラットフォームにおいてはゲームサーバは提供されていない。ノウハウを持っていないゲーム開発者たちは困り、サーバの開発経験がある企業でも自由度が高いゆえにスクラップ&ビルドを繰り返す事象が見受けられました」とゲームサーバ開発における課題を説明した。

 丹羽氏は、これを「かつてゲームエンジンでも見た事象」と言う。そこでゲームサーバ領域において、汎用ゲームサーバを使って開発の効率化を行う、ゲームサーバ界のUnityのような存在を目指して事業を開始した。

 とはいえ1人で開発するにあたって課題は多い。どんな規模でも対応できるインフラを構築すると費用がつり上がるうえ、1人での運用は難しい。そこでフルサーバレスを採用することになる。

 丹羽氏は、フルサーバレス化によって生まれる課題を洗い出すため、フルマネージドサービスを調査。サービスの形にしたうえでパフォーマンスを評価していったという。

 「TLSのハンドシェイクにかかる時間や、クラスのインスタンス化の時間など、さまざまな問題があったがそれらを改善し、サーバレスの強みである『安いうまい速い』を生かすことで、現在のサービスを実現することができました」(丹羽氏)

 Game Server Services 株式会社は、今年3月にはDeNAやKLab Venture Partnersなど4社から資金調達ができるまでに成長。「これからゲームサーバ界にイノベーションを起こしたい」と意気込みを語ったところで、丹羽氏のピッチはタイムアップ。4分で強制終了のため、会場からは残念がる声もあがった。

コネヒト株式会社 開発部 エンジニア 永井勝一郎氏

 2人目にはママの生活を支えるアプリ「ママリ」の開発に携わる永井氏が登壇。Docker×ECSで構築した、移植性の高いシステム基盤について発表した。

コネヒト株式会社 開発部 エンジニア 永井勝一郎氏
コネヒト株式会社 開発部 エンジニア 永井勝一郎氏

 コンテナ導入前はVagrantで開発環境を組んで、Beanstalkで本番環境を運用していたという。しかしその違いによる不安定さや制約が課題だった。そこでDocker×ECSでプラットフォームを一新。

 「開発環境で動いたものをそのままアプリケーションごとパッケージ化して、別環境に移送できる仕組みなどによって、本番だけ出てしまうエラーへの対応などといった辛い運用から解放された。同時にBlue/Greenデプロイメントも導入している」(永井氏)

 さらに2018年2月、テレビCMの放映が決定したことで、負荷対策などの課題に追われた。エンジニアは永井氏とCTOの2名のみで、対応期間は1か月半だった。想定したタスクリストは下図の通りだ。

負荷対策
負荷対策

 こういった対策に迫られる中、コンテナの「移植性の高さ」が短期間での準備を支えたという。具体的なポイントとして、検証リードタイムが大きく短縮された点を挙げた。

検証リードタイムを大幅短縮
検証リードタイムを大幅短縮

 「Vagrantで開発環境を作って、それを.ebextensionsに落として、Elastic Beanstalkを更新するといった作業が、Dockerの開発環境を更新してそれをそのままECSにデプロイすれば検証ができる。ECSを使っているので環境を複製して、そこにアプリケーションパッケージのコンテナを置くことでそのまま負荷試験も行うことができました」

 つまり、特に大きな準備をする際に時間がかかりがちだった環境構築の作業を効率化でき、本当にやりたい準備に時間を割くことができたというわけだ。

 タスクをすべて完了した後、迎えた実際のテレビCMの効果は上々で、システムトラフィックに関してはそれまでの最大数の5倍ほどに急増したもかかわらず、サービス断はなく無事キャンぺーンを乗り切ることができたという。永井氏は、AWSのWell-Architectedで「運用性の優秀性」を強調したいと語る。

 「開発環境と本番環境の差分がなくなることによって、開発者は安心して開発に集中することができる。また、自動化されたデプロイフローによって、すばやくユーザに価値を提供することもできました。もちろん、ロールバックの機能も提供している」

 最後に永井氏は、コンテナを駆使した心理的安全性の高いサービス理論が自分たちの強みであり、これからも変化を楽しんでユーザに価値を届けていきたいと語った。

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この記事の著者

岡田 果子(編集部)(オカダ カコ)

2017年7月よりCodeZine編集部所属。慶応義塾大学文学部英米文学専攻卒。前職は書籍編集で、趣味・実用書を中心にスポーツや医療関連の書籍を多く担当した。JavaScript勉強中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/10880 2018/06/13 16:01

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