AI活用における日本と他国の根本的な相違点と、gooのAIが目指す道
セッションの冒頭、NTTレゾナント株式会社の中辻氏は、日本と他国におけるAIの違いについて言及することから始めた。
「日本のAIは、業務効率化やリスク管理などに留まるものが主です。他方でアメリカやドイツなどは売上増加や経営企画力の向上、つまりマーケットの創出まで見据えたものが主流。日本もそちらに目を向けるべきであり、gooが目指すのも、その次元まで手を伸ばしたAIです」
マーケットの創出につながるような、「創造性」を刺激するコミュニケーションとは何か。そのキーとなるのは「ワクワクする会話」ではないかと考えたという。予定調和でない、想像を超えるコミュニケーション。そんなやりとりができるAIを生み出し、そして親近感の持てるようなキャラクターとしてユーザーに寄り添う存在にすることで、人の創造性を支援する。その第一弾が、自動でQAに回答するキャラクターAI「恋愛相談AIオシエル」であった。
AI活用の対象にQAコミュニティである「教えて!goo」を選んだのは、サイト運営において抱えていた課題の解消につながると考えたからである。まず、同サイトにおいて質問者は多くの場合即時レスポンスを求めるものだが、QAはその構造上、回答を得られるまでに時間がかかってしまう(即時性における課題)。次に、質問をしたからといって必ずしも回答を得られるとは限らない(回答率における課題)。そして、ようやく得られた回答が質問者にとって最適なものでない場合がある(満足度における課題)。これらの課題に対しAIを導入することで、自動回答による即時性を提供し、回答数を増やすことで回答率を高め、そしてビッグデータを基にしたアルゴリズムの適用で統計的に満足の得やすい回答を目指す。オシエルの導入でそのような効果を狙った。
オシエル導入の対象として、数あるトピックの中から「恋愛相談」を選んだ理由は何か。まず、恋愛相談が教えて!gooで最も人気のあるカテゴリであるため、データが大量にあるという実用的な理由が一つ。それに加えて、「チャレンジングな領域」であったことが挙げられた。
例えば、「富士山の標高は何メートルか」というような問いには確実な正答があるが、恋愛相談においてそのような明快な正解はない。さらに、AIで長文を扱うのは難易度が高く、世界的にも実績は多くないが、恋愛相談においてはその結論に至った理由も含めた回答が求められ、必然的に長い文章へチャレンジせざるを得ない。そういったジャンルで開発し、そのノウハウを蓄積することが、次のビジネスチャンスにつながると判断したという。