メンバーの自治性を促すため、新米リーダーが取り組んだこと
天気と防災速報のシステムの理解が進んだ後、天神チーム立ち上げの中期ではシステムの開発・運用を実践していった。中規模開発案件が開始したため、その打ち合わせと拠点間コミュニケーションのさらなる改善を目指して、天神メンバーは再び大阪に出張する。
「関係性の構築を目的として、大阪チームのリーダー陣には天神メンバーに対して1on1を実施してもらいました。メンバーの成長を支援するために、1on1は次のサイクルで行います。まず、メンバーは実務を担当したことで具体的に何かの経験をしています。1on1ではまず、その業務についてふり返ってもらい、自らの行動に対して改善点がなかったかを内省してもらいます。気づいたことを学びとし、現場で新たな挑戦を行うのです。
対面でのコミュニケーションを取ったことで、拠点間の連携でメンバーが抱えていた数多くの懸念を払拭できました」(藤本氏)
これで万事うまくいくと思いきや、そう簡単にプロジェクトは進まない。徐々に業務量が増えてきたため、天神チームから「やることが増えて優先順位がわからなくなってきた」「本当に全ての作業をやらなければいけないのか」という声があがったのだ。「タスクが増える中、共通認識を持って目標に進むことの難しさ、重要性を痛感した」と藤本氏は語る。
本来の目的を見失わないために天神チームが取り組んだのが、インセプションデッキの作成だ。インセプションデッキとはプロジェクトの目的や背景といった全体像を捉えて、向かう先を表すためのドキュメントである。下図の10個の質問と答えから構成される。
インセプションデッキは、上司ではなくチームメンバー自身が作ることが重要だ。そうすることで、メンバーにとってより納得感のある行動指針となるためである。プロジェクトの優先順位を確認し合ったことで、天神チームの各メンバーは安心して業務を進められる状態になった。
「特に『我々はなぜここにいるのか』『やらないことリスト』『トレードオフスライダー(ローンチ時期、スコープ、予算、品質はどのような優先順位か)』の3つの質問は、プロジェクトが目指す方針の意識合わせをするうえで、非常に有益でした」(藤本氏)
7~8月には中規模開発案件も終盤になり、リリースに向けての追い込みを実施。ちょうどその時に、藤本氏に別のミッションが発生した。なんと、東京で発足した新規開発案件に、藤本氏がジョインすることになったのだ。もちろん、天神拠点の立ち上げプロジェクトと並行しながら、である。
「かなり危機的な状況で、残業時間が増えてしまい全ての業務をさばき切れない状態になってしまいました。このままでは立ち行かなくなると思い、大きな方針転換をします。天神チームの中規模開発案件をメンバーに任せ、要所でのサポートのみを行う決断をしたのです」(藤本氏)
要所でのサポートは、どのようなことをしたのだろうか。例えば、朝会には必ず参加し、つまずいているところはないかを確認した。技術的な相談は大阪のエンジニアに委ねる方針をとった。テレビ会議や出張などのコミュニケーションを通して培った大阪チームとの関係性はこういう時のために活用するべきだと判断し、天神チームから大阪チームへ直接相談してもらう方針に切り替えたそうだ。
また、中規模開発案件の作業を丸ごと任せることで、当然ながらメンバーは忙しくなる。その中でもモチベーションを高く保ってもらうため、自らが作るプロダクトの与える影響を意識してもらいながら仕事を進めるように促していった。
「現在(登壇した2019年8月29日時点)、天神チームがシステム運用の主担当となるべく準備を進めています。初めてのチームビルディングは簡単ではありませんでした。しかし、組織ができあがっていく様子を見るのは、本当にうれしいものです」と藤本氏は総括し、セッションは終了した。
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