コミュニティで重要なのはみんなが共通に持てる技術的興味
戸倉 この書籍の中では、Code、Contents、Communityの「3C」ということでDevRelの活動を説明しています。そこで聞いてみたいのですが、LINEのC、コミュニティの活動について教えてください。
砂金 コミュニティの話は、大きく2つに分かれると思っています。1つはLINEが提供するAPIやプラットフォームを使って、アプリやサービスを作ってくれる外部の開発者のみなさんが活動しているLINE Developer Community。LINEでは「LINE API Expert」を認定していますが、彼らが自発的、自律的にやってくれるという状態がここ最近になってできています。割とアットホーム的なコミュニティもあれば、IoTLTなど、すでにできあがっているコミュニティ(関係性)の中でLINEをAPIとして扱ってくれるという活動が混ざった感じですね。
もう1つは、LINEの技術的な取り組みを情報開示しながら同じ興味分野の人たちを集めるコミュニティ活動。LINEはこういう仕組みを自分たちで作っているし、その一部をOSSでコントリビュートしているし、セキュリティ対策としてはこういうことをやっている、と。もちろん全部は言えませんが、そこで苦労した点などを世の中に還元して、一緒に社会をよくしていこうみたいな技術開示型のコミュニティ活動があります。たとえば、フロントエンドの人たちはUIT(User Interface+Technology)、セキュリティの人たちはBecks(Beer and Hacks)などと称して、それぞれ自分たちがやりたい範囲を決めて、活動してくれています。
コミュニティにはいろいろな定義の仕方がありますけど、一番ブレてはいけないのはみんなが共通の技術的興味を持っている範囲ですよね。貢献の仕方、規模などの違いはあるかもしれないですが、みんなが求心力を持って扱う技術テーマごとに、コミュニティを作っていったほうがいいということで、いまはそういうやり方にしています。
こちらでは、LINE側がもっと主導的になって、LINEでこういう技術を使ってこんなことをしていますということをお話しして、最終的には優秀なエンジニアの人がLINEに興味を持ってエンジニアとして応募してきてくれたらすごくうれしいなという気持ちはあります。でも、まずはできるだけみんなの役に立つ技術コンテンツを提供していくことですね。相手との関係性ができていないのに、「伝えたいメッセージこれです!」とゴリ押しするのは非常によろしくないので、どちらかというと技術的興味に基づいて、みんなが必要としているだろうなという情報をきちんと出していくことを大事にしています。
戸倉 教えていただける範囲でいいのですが、コミュニティへの協賛に関して、コミュニティからこれをやりたいからスポンサーになってくださいという感じなのか、それとも逆に、距離感を保ちながら、この金額の範囲で、と活動を進めてもらうのか、どういうやり方をしていますか?
砂金 CTO直下でもう1つ良いことは、会社からきちんと重要性を理解してもらって、予算を含めたリソースを使って活動するということが許されているので、その点は非常にありがたいなと思っています。その中で、何をどうやるかは状況次第です。それぞれ個別で何をしたら喜ばれるかが違うので。
たとえば、Java方面の開発者のみなさんが「LINEがフードスポンサーをするとおいしいお寿司が食べられる」と期待してくれているのであれば、協賛金でいくらかお支払いするという形ではなく、その期待に応じてお寿司を提供します。相手のニーズに応える一工夫をする。他のメンバーに関しても、具体的な指示を出しているわけではないのですが、ただ単に協賛金で予算をください、というのはあまり来ないですね。それは、「もう少しこういうふうにしたほうがいいと思う」というのをDevRel側のメンバーがみんな考えられるようにはなっているかなと思います。"望まれること"をする。それは"言われたこと"ではない。きっと、このコミュニティでこの人たちに、LINEが何をしてあげたら一番良いだろうかというのを一緒になって考える感じかなと思います。そういうことをしていかないと、スポンサーだからとデカデカとロゴを出して、懇親会で開発者のみなさんと交わることもなく去っていったとなれば、悪印象だけ残ってしまう。どちらかというと、関係性を深めるためという点を重視しますね。
こういう意識付けができているのはLINEのカルチャーでもあります。たとえば、LINEの人のプレゼンは、最後を「CLOSING THE DISTANCE」で終えることが多いです。「CLOSING THE DISTANCE」はコーポレートミッションで、何かと何かの距離を縮めること。LINEではユーザーとユーザーが心の距離を縮めるためにテキストメッセージだけではなく、スタンプとか気持ちの伝わるものを機能として出しています。金融系サービスであれば、お金と人の距離感を縮めるために「LINE Pay」「LINEほけん」などを提供しています。社外の開発者のみなさんとの間に関しても、LINEという企業や技術、サービスのことを知ってもらってCLOSING THE DISTANCEしてほしい。そのためにできることだったら何でもやるということです。
戸倉 コミュニティのイベントにリソースをどの程度使うかというのは難しいかと思うのですが、LINEの中ではどう決めていますか? エバンジェリストの登壇かもしれないし、フルアテンドかもしれないし、いろいろな形があると思いますが。
砂金 基本的に、コミュニティのイベント対応は、業務としてDevRelチームで担当します。セッションの登壇であったり、コミュニティのイベントでのブース出展であったり、バックサポートも含めてDevRelのチームがあたります。でも、それだけでは足りない場合があって、本業はサービスやプラットフォームの開発を担当しているエンジニアにお願いしてサポートしてもらうこともあります。そうすると、こういうテーマ、あるいは、こういうオーディエンスの集まりだったら、社内のこのエンジニアに出てもらえれば相性良さそうだよねと、社内の状況を理解しておくことも重要です。たとえば、ライブドア時代からいる櫛井優介さんは、LINEの生き字引的なところがあって、このテーマだったらこの人がいいですよ、というのがすぐ言える。これはDevRelの仕事をしていく上ではすごく大事だと思います。
DevRel専任の10数人のチームだけでできることは限られてくるので、一緒に仕事をしているエンジニアの人たちの力をどこまで引き出せるか。その点で工夫をしているのが、DevRel活動を手伝ってくれている状況の可視化です。LINEは年に2回、人事考課があるので、そのタイミングで、DevRelでお願いした依頼内容や評価、アンケート結果などをまとめて報告しています。DevRelとしての感謝とともにご本人の上長にメールで送っています。件数が非常に多いので大変ですが、これも僕らの大事な仕事かなと思っています。
