行政機関との取り組みを成功させるために
――行政機関ともさまざまな取り組みをされています。最近では7月2日に、福岡県福岡市の実証実験プロジェクト「Beyond Coronavirus」において、TRUSTDOCKが提案した「デジタル身分証による行政手続き」が採択されたことも発表されました。何をきっかけに、行政機関との取り組みを行うようになったのですか?
肥後:世の中にはKYC/本人確認に関するさまざまな課題があります。そのなかに「各種の行政手続きには、役所などに直接足を運ばなければならないものが多い」という課題があり、この作業をオンライン上で完結できれば多くの方々の助けになると考えました。
時流が影響しているのかもしれませんが、行政機関にも民間企業と協力しあって新しい試みをしたいと考えるところが増えてきているように思います。各種行政機関へのプロジェクトの応募・提案をしながら、事例づくりを進めている最中です。
――サービスの提供対象が法人の場合と行政機関の場合とで、求められる要件に違いはあると思いますか?
肥後:法人の場合は社内にエンジニアを抱えているケースが多いですが、行政機関の場合はそうではないことがほとんどです。つまり、サービスのソースコードを修正していただいて、API呼び出しの処理を実装してもらうことが難しい。行政機関の方々と連携を進めていくうえでは、例えば私たちがそうした作業を代行するようなプランを考えなければ、うまくプロジェクトが進まない可能性があります。
菊池:求められる本人確認の強度も異なる印象があります。民間企業であれば、法律に準拠した各種の本人確認手法のうち、どれを用いても良いケースがほとんどです。一方、行政機関の場合はそうではありません。公的個人認証でなければならないなど、より厳密な本人確認が求められることが多く、それをふまえたサービス提供をしていく必要がありますね。
一次情報に触れたからこそ、プロダクトに必要なものが見えた
――プロダクト開発において、TRUSTDOCKがさまざまな工夫をしていることが伝わりました。最後に菊池さんに伺いたいのですが、プロダクトオーナーとしてのスキルをどのような方法で向上させてきましたか?
菊池:TRUSTDOCKで業務経験を積むなかで、少しずつスキルを磨いていきました。特に重要だったのは、お客さまの生の声を聞いてきたことです。
当社の事業がはじまったばかりの頃、社内に開発のメンバーはいたのですが、営業のメンバーがほぼ誰もいない状態でした。その環境のなか、私自身が各企業に足を運んでさまざまな相談をしたり、プロダクトを導入していただくための交渉をしたりといった作業を担ってきました。つまり、プロダクトのつくり手である自分自身が、お客さまの意見をヒアリングしながら、本当に必要な機能は何か、どうすれば利用していただけるかを徹底的に考えてきたのです。
これは少数精鋭のスタートアップだからこそ実現できたことだと思います。規模の大きい企業の場合、メンバーごとの役割分担が明確に分かれているケースも多いです。プロダクトマネージャー・プロダクトオーナーが、営業やカスタマーサクセスを経由した二次情報でしか、お客さまの意見を得られないこともあります。でも、それではお客さまが真に抱えているニーズをなかなか掴めないはずです。
プロダクト最初期の頃は、時には厳しいご意見をお客さまからいただくこともありました。もし、当時の私が二次情報としてそのご意見を聞いていたならば「このプロダクトは通用しないのかも」と諦めていたかもしれません。でも、自分の耳や目、口を使って、いわば五感を使ってお客さまからの一時情報を拾いあげて、自分なりに試行錯誤を重ねてきました。そういった経験を積んだからこそ、プロダクトオーナーとして成長できたのだと思います。
――ありがとうございました!

