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マイクロソフトが考える10年後のソフトウェアの形、開発者に提供するもの

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マイクロソフトは11月9日、都内に有志の開発者や学生を集め、「Microsoft’s 2020 vision of technology」と題したデベロッパーフォーラムを開催。マイクロソフトが目指すソフトウェア開発の方向性の紹介と、開発者との意見交換が行われた。

 マイクロソフトは11月9日、都内に有志の開発者や学生を集め、「Microsoft’s 2020 vision of technology」と題したデベロッパーフォーラムを開催。マイクロソフトが目指すソフトウェア開発の方向性の紹介と、開発者との意見交換が行われた。フォーラムの模様は後日MSDNを通じ、Webキャストにて公開される予定

マイクロソフトの考える今後のソフトウェア

 米マイクロソフト社 CEOのスティーブ・バルマー氏は、今後のソフトウェアサービスのビジョンについて次のように語った。

米マイクロソフト社CEO スティーブ・バルマー氏
米マイクロソフト社CEO スティーブ・バルマー氏

 「Software+Service」というコンセプトで、時や場所によらない、豊かで自由度の高い世界の実現を手助けしていきたい。

 インターネットの世界は、様々なWebアプリケーションの登場で変革しているように思えるが、まだわずかに表面を変えただけで、これからさらに大きく変化していく可能性を秘めている。デベロッパーには、熱意をもって将来の可能性を検討してもらうことが重要。

 この変化は、ツールの作り方、ソフトウェアの構築方法にも影響する。開発者は現在、非常にローレベルの言語でプログラムを記述しており(もちろん、アセンブリなどに比べれば高いが)、コンピュータにプログラムを自動生成させる方法はない。今後は、抽象的な概念を伝えるだけでプログラムの運用面を考えないで済むような、セマンティックレベルの高いプログラム言語の登場が期待されるだろう(つまり、人間に対して説明するようなレベル)。

 各種ロジックがインターネット上に存在するのはよいことだが、Webアプリケーションはセキュリティや信頼性の低さから、エンタープライズでの運用は難しいし、デスクトップのようなリッチさ、統合性もない。

 しかし今後は、PCのアプリケーションやWebアプリケーションとのギャップをなくし、シームレスにしていくことが求められるだろう。また、実行環境の差異などもコンピュータが自動的に埋め、開発者はロジックだけに専念できるようになることも必要と考える。

 このようなクラウド・コンピューティング(ネットワークやサーバの進化により、アプリケーションはサーバ上、データはデータセンターに移行し、実行デバイスに依存しないような環境)の方向に世の中が変化していく中で、我々ができるのはOSを作ることであり、Windows Live Devで、その取り組みを進めている。これは段階的に移行し、最終的にクラウドベースのOS上でSoftware+Serviceを走れるようにしたいと考えている。

開発者との質疑応答

 続いて、開発者からの質問に対して、スティーブ・バルマー氏が直接答えた内容をいくつが取り上げる。

技術のブラックボックス化が進むことに不安がある

 コンポーネントのモジュール化によって高度な進化を遂げてきたが、今後Windows Liveやsalesforce.comのように、より複合的になってくると、うまくいっている場合はいいが、障害発生時の原因究明・対処が困難になっていくと思われる(MS MVP 飯島氏)。

 クラウド・コンピューティングが進むにつれ、どうしても信頼性・セキュリティ・互換性の確保は重要になってくる。そのためのプラットフォーム・ツールは必要となるだろう(スティーブ・バルマー氏)。

技術が進むことであらゆることが簡便化されると、人間の能力が衰えていく不安がある

 周辺技術がブラックボックスになり、内部的にどう動いているか考えなくなることによって、能力が衰えていくのでは(坂本氏)。

 ユーザも開発者も、ある程度の複雑性にしか対応できない。開発者はどうしてもブラックボックスの中身をすべて知りたがる傾向があるが、新しいフロンティアを開拓するのであれば、より抽象度の高い開発手法に移行する必要がある。もちろん、そのためにはブラックボックスであっても信頼できるシステムが必要だ(スティーブ・バルマー氏)。

開発者の育成は、教育だけでは難しいと感じるが、開発者に求められる資質・知識はなにか

 (公募/匿名)。

 もちろん、Webからカーネルなど、開発の種類によって必要なスキルは異なるが、優れた開発者に共通する内容として、頭がよく、細かい部分にまで目を向ける気配りと、忍耐強さを併せ持っている。しかし、さらに上を目指すならば、コンテキストを把握し、もっと広い視野で見ることができる資質も必要だ。とかく、プログラマは専門分野だけを掘り下げる思考になりがちで、確かにそれも重要だが、例えば、今までと違った分野にも積極的に目を向けてみるといったことが必要だ(スティーブ・バルマー氏)。

日本のソフトウェアが世界に羽ばたくためのアドバイスをください

 (宮田氏)。

 日本の技術者は、アメリカに比べ自国の技術が世界に展開しにくいと寡少評価しているかもしれないが、ゲームや家電など、多くの技術が世界に展開されている。確かに世界的なソフトウェアはアメリカで作られるものが多く、実際、重要な輸出産業になっているが、その理由には「アメリカのIT教育が充実していること」「アメリカは世界最大のソフトウェア消費国であり、顧客が近くにいること」「日本が他国に比べ、企業の自動化が進んでいないこと」などが考えられる。また、技術開発の国際言語が英語あることも一因かもしれない。例えば、中国がインドに比べ出遅れているのは、英語の言語能力の違いとも言われている(スティーブ・バルマー氏)。

 最後にスティーブ・バルマー氏は、とにかく一番重要なのは「デベロッパー」であることを熱く強調し、締めくくった。

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この記事の著者

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテックジン)」...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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