Google Cloudは、カプコンにおける生成AIをはじめとする新技術活用への取り組みに関して、同社にてタイトル横断で技術開発に取り組む、CS 第二開発統括 システム基盤部 ソリューション開発室 副室長である阿部一樹氏へのインタビュー記事を、公式ブログに1月18日付で投稿している。
近年、1つのゲームタイトル開発にかかる費用・工数の増大が、ゲームメーカー共通の悩みとなる中で、阿部氏は先端技術を駆使したゲーム開発の効率化によって、この課題を解決できるのではないかと考えたという。
ゲームには、さまざまな「オブジェクト」が1タイトルあたり数千から万単位で存在し、比較検討のためにはそれぞれに複数のアイデアが必要となり、非常に大きな負担となる。また、それぞれのアイデアには内容を説明するテキストだけでなく、実際に「オブジェクト」を作り上げるアートディレクターやアーティストに、誤解なくイメージを伝えるための図版も必要となるため、その準備に膨大な手間が発生していた。
そこで阿部氏は、生成AIが人間による膨大な量のアイデア出しを支援するパートナーになり得るのではないかとの着想から、マルチモーダルな生成AIにテキストや画像、表などで構成されるゲームの設定資料を読み込ませて、必要なアイデアを自動出力させる仕組みを作り上げれば、高速化・効率化が可能になるとの考えに至っている。
その実行基盤として、Google Cloudを選んだ理由として、阿部氏は
「今回の取り組みではアイデアのテキスト出力に加え、画像出力や、そのためのプロンプト生成、でき上がったアイデアの要件評価などでも幅広くAI技術を活用しています。 Google Cloudなら、これらをVertex AIという枠組みの中で一括運用できますから、低い管理コストで実装できるメリットがありました」
と説明する。さらに、ゲーム開発で求められる膨大な量の入出力をレスポンスよくこなすことについても、Google Cloudを高く評価しており、
「生成AIに設定資料を解析させた結果をプロンプトに与えて出力されるまでの時間が他社サービスでは数分だったのに対し、Geminiでは数秒と圧倒的に高速でした。これはスピード重視のゲーム開発においては明確なアドバンテージとなります」
と語っている。あわせて、画像生成で用いるImagen 2のビジュアル品質の高さや、用途に応じて高精度なGemini Proと高速なGemini Flashを使い分けられる点も、Google Cloud採用の一因になったという。
この取り組みにおいて、阿部氏が特にこだわったのは、出力されたアイデア(テキスト、画像)が要件に適合しているかをVertex AIで評価して、要件を満たしていなかったり水準に達していなかったりした場合には修正プロンプトを自動作成し、アイデアの出力をリトライする仕組みであり、この仕組みによって低品質な出力を自動で排除して、人力によるトライ&エラーなしでの高品位なアイデアの出力を可能にした。
カプコンでは現在、アイデア出しのシステム以外だけでなく、さまざまなかたちで生成AIを活用または研究中だといい、阿部氏は
「今回の取り組みを通じ、改めて、生成 AI に業務効率を大幅に改善する可能性を感じた」
と、生成AIを用いたゲーム開発効率化への手応えを語っている。また今後は、開発の効率化だけでなくユーザー体験やアーティストたちが手がける最終成果物の品質向上にも、生成AIを活用していきたいと述べた。
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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)
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