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Developers Summit 2025 Summer セッションレポート(AD)

AI面接練習で教育現場の課題を解決! 揺れながら進化し続ける、マイナビ『AI-m』開発の舞台裏

【17-A-4】AIで面接練習を変える!動画面接練習サービス『AI-m(エイム)』開発の舞台裏と挑戦

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 高校3年生の約7割が、面接や書類・小論文によって進路を決める時代。多忙な教員にとって、面接指導の負担はますます大きくなっている。この課題をAIで解決しようと誕生したのが、マイナビの高校生向け動画面接練習サービス『AI-m(エイム)』だ。技術面を担うエンジニアと教育現場を知る事業部がタッグを組み、技術と現場の狭間で揺れながらも、前に進み続けるプロダクト開発のリアルに迫る。

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 「高校3年生の約7割」というデータは、以下の資料に基づいています。

先生が忙しすぎる──現場の課題が、AIサービス開発の原点に

 50年以上の歴史を持つマイナビの事業領域は幅広い。キャリアデザイン・HR・ヘルスケア&ウェルネス・人材派遣BPO・メディア&サービス・海外の6つのセグメントに分かれ、就職・転職・進学などの人材情報サービスをはじめ、多数のサービスを展開している。なかでも海外セグメントに属するDXデザイン事業では、ベトナムに拠点を構えオフショア開発に取り組んでいる。

株式会社マイナビ 未来応援事業本部 企画統括本部 企画運営統括部 コンテンツ運営部 部長 川原 慧子氏
株式会社マイナビ 未来応援事業本部 企画統括本部 企画運営統括部 コンテンツ運営部 部長 川原 慧子氏

 このように多様な社会課題の解決に向けてアプローチを進めるマイナビだが、なぜAIを用いた面接指導に着目し、高校生向けの動画面接練習サービスをつくろうと考えたのか。その背景には、高校現場の進路指導を取り巻く環境の変化があるとして、マイナビで高校生向け商品・サービスの企画・運用に携わる川原氏は、次の2点を根拠に挙げた。

  1. 総合型選抜や学校推薦型選抜など、面接を含む非学力試験で大学進学する人が半分以上を占める
  2. 高校3年生の約7割の生徒が、面接や書類・小論文で進路を決定する
高校生の進路決定において面接の重要性が高まっている。
高校生の進路決定において面接の重要性が高まっている。

 進路決定において面接力が重要な役割を果たすにもかかわらず、日頃、勉強に励む生徒にとっては、慣れない面接に「話がまとまらない」「うまく話せない」「改善点がわからない」といった難しさがつきまとう。他方、指導にあたる教員にとっても、一人ひとりの面接指導に時間を割くのは、大きな負担となっている現状がある。

 「今後も非学力試験によって年内に進路を決める傾向は拡大する見込みであり、生徒・教員双方が抱える課題を解決することで、『年内入試の支援に強いマイナビ』ブランドの確立を目指したいと考えた」(川原氏)

 こうした高校現場の課題を聞いたAI戦略チームの三木氏は、「AIで解決できるのではないか」と直感したという。「相談を受けたのが、音声認識技術に加え、文字起こし処理やラベリング処理など、AIで課題解決するためのパーツが揃ってきているタイミングであり、教育現場のニーズと技術側のシーズがきれいにはまった瞬間だった」。

株式会社マイナビ デジタルテクノロジー戦略本部 AI戦略室 AIソリューション部 AIソリューション3課 課長 三木 天平氏
株式会社マイナビ デジタルテクノロジー戦略本部 AI戦略室 AIソリューション部 AIソリューション3課 課長 三木 天平氏

 とはいえ、最初から自社開発による内製を決めていたわけではない。次に、プロダクト開発に及ぶ意思決定の裏側を見ていこう。

外注か、内製か?「現場の声に応える」ための最強チームの組成

 AI-m開発の第一歩は、外部ツールなども活用しながら技術検証を進めることだった。事業本部からのフィードバックを収集しながら、既存のツールでトライアルを繰り返した。次に、このプロダクトで本当にニーズに応えられるのかを見極めるために、実際の教育現場でAI技術を活用しながら、音声認識の精度や面接のフィードバックの質を確認するPoCを行った。

 PoCでは「これなら生徒がひとりで面接練習ができそうだ」といった声もあり、プロダクト化に向けた可能性を感じられる結果となった。「外注したほうが早くて楽かもしれないと考えると、内製による本格開発を決断するのは容易ではなかった。だが、現場の声をすぐに反映するには、自分たちでつくるしかない。PoCを通じて具体的な改善要望が次々と寄せられるなか、AI-mは自分たちでしっかり育てていこうと腹を括った」と三木氏は振り返る。

 組成されたAI-mプロジェクトチームは、教育・企画・技術・開発と、各分野の専門性を結集した構成になっている。

  • 未来応援事業本部(川原氏が所属):教育現場の知見をもとに、ニーズの明確化と営業周りを担当
  • デジタルテクノロジー戦略本部
    • プロダクト企画チーム:サービス全体の企画・立案を担う
    • AI戦略チーム(三木氏が所属):AI技術の選定や検証、APIの実装などを担当
    • アプリ開発チーム(with Mynavi TechTus Vietnam):UI/UXやサーバー周りを担当

 「ミーティングでは、『この表現は生徒に伝わるのか?』『面接特有の言葉遣いをAIがどう認識してフィードバックするか?』など、細部に至るまで議論が重ねられていた。音声認識の精度だけでなく、文脈の理解や教育的な観点にもこだわる姿勢が、AI-mの信頼性につながっている」(三木氏)

アクセス集中にどう耐える?AWSによるスケーラブルなインフラ

 AI-mの開発においては、さまざまな工夫と苦労があったという。そのひとつが、下校後など特定の時間帯にアクセスが集中しても止まらないサービスであるための安定性とスケーラビリティの実現だ。そのためにAWSをベースとしたインフラを構築。クライアントからのリクエストをAmazon API Gatewayで受け取り、Amazon SQSにキューイングする設計にすることで、高負荷にも耐えられる構成にしているという。

 また、面接練習後のフィードバック生成には、複数のAIモデルをAPI経由で利用できるAmazon Bedrockを採用。目的や状況に応じてモデルを柔軟に切り替えられるようにしておくことで、将来的な拡張性を確保している。

『AI-m』のAI処理を担うAPI構成図
『AI-m』のAI処理を担うAPI構成図

ただの評価AIで終わらせない、自己成長につなげる設計思想

 こうしてAI-mは、次のような機能を備えたサービスとなった。

  • スマートフォンやタブレットを用いて、生徒が模擬面接に回答している様子を撮影・録画する
  • 話す速さや表情、つまずきといった非言語的要素や、話の構成や内容の論理性などをAIが分析して、フィードバックを提供する
  • 面接動画や文字起こしを見返して、具体的な改善点を把握できる

 なかでも最大の難所は、「AIで何を学生に届けるか」の設計だったと三木氏は語る。単にAIが評価するだけではなく、自己成長につながる気づきや納得感を与えたいと考えたのだ。

 そこで、その評価に至った具体的な根拠を示すとともに、「声が小さい」とネガティブな指摘だけをするのではなく、「落ち着きのある話し方である」などポジティブな視点のフィードバックも加え、良い点と改善点のバランスを取ることにした。生徒が納得感をもってAIの評価を前向きに受け止め、自己成長につなげられるよう、“徹底的にこだわっている”という。

 その「徹底的なこだわり」とはつまり、現場の声に応じてAIの評価基準が随時見直され、仕様が変化し続けることを意味している。実際、「昨日決まった仕様が、今日には変わる」ことも珍しくなく、「仕様変更は日常茶飯事だ」と三木氏は語る。「だからこそAI-mには、アジャイル開発で短いスプリントを繰り返しながら、柔軟に修正を重ねるスタイルが合っていた」。

 ときには情報連携がうまくいかず混乱が生じたり、想定外のトラブルによってアーキテクチャレベルでの仕様変更を余儀なくされたりするなど、AI-mの開発は常に「困難にぶつかっては立ち止まり、考え直し、また前に進む」という “揺れ”のなかにあったという。そのようななかでも絶えず前進を続けられたのは、「正解がない中でもユーザーにとって意味のあるものを届けたい」という共通の想いが、原動力としてチームを支えてきたからだ、と三木氏は強調する。

 2024年9月に1期リリースを果たし、2025年7月より2期リリース中であるAI-mは、来年に控えた3期リリースに向けて、鋭意新機能を検討中だ。すでに1期リリースの時点で178校から利用申し込みがあり、23,105名分の生徒アカウントが作成されている。実際に利用した生徒のアンケート結果を見ると、「面接力向上の役に立った」「AIによるフィードバックに納得感があった」と答えた生徒は約7割にのぼるなど、反響は上々だという。

3期リリースに向け検討中のAI-mの新機能
3期リリースに向け検討中のAI-mの新機能

 「期を重ねるにつれ、リリースサイクルは“回すもの”から“回り続けるもの”になっており、チームが強くなっているのを実感している。ユーザーの声を次の一手の出発点として、すぐに開発・実装へとつなげていく。このスピード感と柔軟性こそが我々の強み。今後は面接練習にとどまらず、教育の可能性を広げる基盤として進化していく。これからも教育現場の『いま』に寄り添い、より良い『未来』を共につくっていきたい」と三木氏は締め括った。

講演スライドを公開中!

 本講演の資料は、マイナビエンジニアブログにて公開中です。ぜひご覧ください!

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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