本連載では、AWSに関して、なかなか時間がとれず最新のアップデートを追えていない方や、これからAWSを利用したいと考えている方に向けて、AWSから発表される数多あるサービスアップデートのうち、NTTデータのITスペシャリスト達がこれだけは押さえておくべきと厳選した内容を定期的に紹介します。本記事では、コーディングをサポートするAI搭載のIDE「Kiro」について紹介します。
はじめに
近年、ソフトウェア開発の現場では、AIを活用した開発支援ツールが注目されています。特に、自然言語による指示でコード作成やレビューを行うAIエージェントは、開発者の生産性を大きく高める存在となりつつあります。
代表的なAIエージェントとしては、第31回の記事で紹介したCursorや、VS Codeなどと組み合わせて利用するClineなどがあります。
そうした中、AWS社が生成AIを活用したIDEツール「Kiro」のリリースを発表しました。
本記事では、Kiroの特徴やできることを解説し、そのポテンシャルを探っていきます。
開発手法の発展
AIエージェントを活用した開発手法として、「バイブコーディング」が注目を集めています。
バイブコーディングとは、開発者がAIエージェントと対話しながら指示を出し、コードを生成・修正していくスタイルで、従来の手動によるコーディングに比べて開発者の負荷を大きく軽減できる点が特徴です。
しかしその一方で、バイブコーディングにはいくつかの課題があります。
たとえば、AIエージェントの提案をそのまま受け入れることで、コードを十分に理解しないまま開発が進んでしまうリスクがあります。
また、AIの出力には誤りが含まれることもあり、品質やセキュリティの担保には人間によるレビューが不可欠です。
さらに、エージェントと対話しながら開発するスタイルが、設計やテストといった工程を軽視する要因になることも懸念されています。
バイブコーディングの普及により、ある程度のレベルのアプリケーションの開発は以前より効率的になりました。
しかし、商用環境でリリースするようなアプリケーションでは、要件の整理や設計といった上流工程が非常に重要になります。
その点、Kiroは「仕様駆動開発」をサポートしており、要件や設計を重視した開発スタイルに適しています。
Kiroの特徴
仕様駆動開発
Kiroの1番の特徴は「仕様駆動開発」です。
Kiroを利用すると、Requirements(要件)、Design(設計)、Task list(タスク)というフローに則って開発を進められます。
実装に入る前に、要件、設計、タスクというフェーズごとに内容を明確に整理できるため、体系的かつ再現性のある開発プロセスを実現できます。
仕様駆動開発により、以下のような効果が得られます。
1. 要件の明確化
要件が文章化されるため、成果物が「正しいか/期待どおりか」を評価しやすくなります。実装と仕様の差異も早期に発見できます。
2. ナレッジ共有の促進
仕様がドキュメントとして残るため、チームメンバーとも共有しやすく、改善点の発見や継続的な改良が可能になります。
3. チーム間の認識合わせと品質向上
複数人での開発において、フェーズごとに仕様を基にレビューできるため、認識のずれを防ぎ、最終的な品質を高めることができます。
エージェントステアリング
Kiroでは、AIにコーディングを任せる際に、一定のルールや標準に沿って処理させることが可能です。同様の機能は、Claude Code、Cursor、Clineなどの他のツールにも搭載されています。
ステアリング機能を利用することで、プロジェクトに新しく参加した開発者も、経験豊富な開発者も、同じ基準に沿ってコードを生成・作業することができます。その結果、ルールに則った一貫性のあるコードを効率的に生成できます。
Kiroの画面では、「AGENT STEERING」という欄がこれに該当します。
ここでは、product(プロダクト機能に関するルール)、structure(ディレクトリ構造など)、tech(技術スタックやライブラリ) の3つの観点でルールや標準を定義できます。
フック
Kiroには、特定のイベント発生時に事前定義されたエージェントアクションを自動実行する機能があります。
たとえば、ファイルの保存や新規作成をトリガーとして、自動応答の処理を設定可能です。
具体例としては、特定のファイルが変更されたタイミングで単体テストを実行する、ドキュメントを更新する、といった自動化が可能です。
Kiroの画面では、「AGENT HOOK」という欄から設定できます。
実行したい処理を自然言語で記述するだけで設定が完了するため、簡単に自動化ルールを追加できます。
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橋原 朋央(株式会社NTTデータ)(ハシハラ トモヒロ)
2017年にNTTデータに入社。 入社以来、小売・流通業界や金融業界に対して、パブリッククラウドを活用したシステム構築、運用に携わる。 興味のある領域は、コンテナ、CICD、IaC(Infrastructure as Code)等。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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