個人の「できる」から組織の「自創化」へ、生産性は2倍にも
広木氏の著書では、個人の成熟度ではなく組織の業務における成熟度を5段階で定義している。レベル1は個人レベルの「できる化」、レベル2は部署レベルの「できる化」。レベル3は社内ナレッジ連携による「自働化」、レベル4は業務の発生から完了までを任せる「自働化」。そしてレベル5は、業務改善のサイクル自体をAIに任せる「自創化」だ。レベル1で見込める生産性向上が10%程度なのに対し、レベル5では90~100%、つまり生産性が2倍に達するという。
広木氏はこの背景に、時代ごとの「正しさ」の変遷があると説明する。製造業由来の「標準化してマニュアル化する」発想、2000年代Webビジネス以降の「可視化して最適化する」発想。いずれもAI時代においては、最初に据えるべき優先事項ではなくなりつつあるという。まず自分ができる業務を他者やAIに広げる「できる化」、それを自動的に回す「自働化」、改善まで含めて任せる「自創化」――この順番で組織のAI活用を組み立て直す必要がある。
この考え方を具体的な物差しに落とし込んだのが、ハイヤールーの評価ダッシュボードだ。「共同推論」をさらに分解すると、「提案の評価と採択」と「代替案の引き出し」という指標になる。平均スコアは前者が67.3%、後者が56.2%。「AIの方針提案を根拠付きで採択・評価しているか」「鵜呑みにせずAIと一緒に推論しているか」といった観点でギャップを可視化し、そのギャップを埋めるアクションを組織にインストールしていくことで、レベル1からレベル5へと引き上げていけると葛岡氏は語る。
葛岡氏は最後に、この日語られた内容をこう総括した。AIは労働を奪う存在ではなく、人間の力を増幅するIAである。しかし増幅するためには、それにふさわしいスキルが求められる。それこそが「AIと協働する力」であり、育成の第一歩は現在地を可視化することにほかならない。求められるスキルとのギャップが見えて初めて、それを埋めるアクションが取れる。
ハイヤールーは、この可視化と育成のサイクルを3つのサービスとして提供している。採用時にAI協働力を可視化する「Skill Interview」、実務のログからAI活用の量と質を可視化する「Skill Assessment」、そしてそこから個別最適な学習プランを自動提案する「Skill Development」だ。NTTドコモや出前館、タイミー、DMM.com、GMOインターネットグループ、freeeなど300社超が導入しているという。
AIというIAをどこまで使いこなせるかは、結局のところ個々のエンジニアの「共同推論」と「出力の品質保証」にかかっている。自分がどちらの側に立っているのか、まずは可視化してみることが、格差の反対側に立つための最初の一歩になる。
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