SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine(コードジン) ProductZine

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

Developers Summit 2026 Summer セッションレポート

PR数1.6倍、変更行数1.8倍、平均マージ時間37%削減──ABEMAが進めるAI駆動開発の現在地

【17-C-1】10年目を迎えた「ABEMA」がどのようにAI活用を推進して、AI駆動開発にシフトしているのか

レビュー負荷への対応──変更リスクに応じて承認要件を変える

 山中氏は、ソフトウェア開発ライフサイクルの各工程について、AI活用の現状評価を包み隠さず示した。

 計画はPRD作成が人間主導で、NotebookLMを使ったN1分析などはあるもののAIは壁打ちと下書き支援にとどまるため「△」。設計は仕様書のAI生成がテンプレートとして運用に乗り、Spec-Driven Developmentも実施しているため「〇」。実装はClaude CodeやCodexなどのコーディングエージェントが入り「◎」。テスト・レビューはAIコードレビューが組織標準になっており「◎」。デプロイはTerraformやArgoCDによるオペレーション基盤こそ成熟しているが、AIによる自律実行はまだ限定的で「△」。メンテナンスはインシデント対応にbotやMCPを組み込み障害調査時間を短縮できているため「〇」とした。

SDLCにおける現状評価――計画△、設計○、実装◎、テスト・レビュー◎、デプロイ△、メンテナンス○。ABEMAはこの評価をそのまま公開している
AbemaTVのソフトウェア開発ライフサイクルにおける現状評価

 障害対応の具体例も紹介された。DatadogのBits AIに「これ根本原因を教えて」と投げかけると、Kubernetesのistio-cniが使うTLS証明書の期限切れという根本原因の候補を、決定的な証拠や因果関係の推定、推奨アクションまで添えて返してくる。対応するメンバーの経験レベルに関わらず、障害対応の時間短縮に貢献しているという。人間は提示された内容をレビューして手を打てばよく、これまで対応者のスキルに依存していた部分がAIによって底上げされた形だ。

 コード実装の速度が上がれば、レビューの負荷が上がるのは当然だと山中氏は認める。革新的な解決策があるわけではないとした上で、ABEMAが選んだのは、すべてのプルリクエストを一律に厳格レビューするのではなく、変更リスクに応じてレビュー責任者の要件を変えるという現実的な方針だ。

 リファクタリングやテストコードの修正など低リスクな変更は1件の承認、機能追加やAPI改修など中リスクな変更は2件の承認、インフラ変更や認証・認可に関わる大規模な変更は1件の承認に加えてエンジニアリングマネージャーかテックリードの承認を必須にする。まだ実現はしていないが、ここにAIレビューが組み合わされば、低リスクな変更はセルフマージできるようにすることも検討中だ。

レビュー負荷への対応――変更リスクに応じて承認要件を変える。低リスクは1件、中リスクは2件、高リスクは1件とマネージャーまたはテックリードの承認が必要
レビュー負荷に対応するため、変更リスクに応じて承認要件を変える

 ドキュメントの分散にも同じ発想で向き合っている。これまでesa、GitHub、Notion、Google Docsに仕様書や設計文書が散らばり、どれが最新かAI自身も判別できないという課題があった。これからはGitHubにドキュメントを集約し、ドメインや機能で階層化する。継続的な運用には検索やチェンジログ作成を担うMintlifyを採用し、素のGitHubのMarkdown環境では手が届きにくい部分を補っている。

次のページ
開発ラインの組みなおし、評価制度の見直し、ガバナンスの整備

この記事は参考になりましたか?

Developers Summit 2026 Summer セッションレポート連載記事一覧
この記事の著者

中野 佑輔(編集部)(ナカノ ユウスケ)

 金融系SIerでの勤務を経て2025年よりCodeZine編集部所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

井原 淳一(イハラ ジュンイチ)

 雑誌やフリーペーパー(紙媒体)Webなどで、料理、人物(インタビューやポートレート)、商品撮影をしています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/29068 2026/08/06 09:00

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー