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Developers Summit 2026 KANSAI セッションレポート(AD)

「言われた通りに作ったのに使われない」はなぜ起きる? WHIが機能ごとに「メリット」を考え抜く理由

【A-3】複雑な業務ドメインを紐解き、「本当に価値がある機能を生みだすプロセス」とは?~お客様のメリットから逆算する思考法~

DeveloperZine編集部[著] / 岩本 隆之[写]

顧客の声の“先”を読み取ることにエンジニアの価値がある

 2つ目の事例は、労働保険の継続事業の一括である。

 給与から引かれている雇用保険料の精算業務は、年に1回、6月から7月に労働保険の年度更新として行われる。そこで報告する賃金額を集計する業務に関する機能の企画だ。

 賃金の集計単位は、標準的には「事業」と呼ばれる単位になる。だが小売業のように支店ごとが1つの「事業」となっている会社では、事業の数だけ手続きが発生し、負担が大きい。そこで複数の事業(支店)をまとめて申請する制度が認められている。これをシステムで実現しようというのが本件だった。

 顧客の回答を表層的に解釈すると、賃金は事業よりも大きい業種単位(食料品製造業、交通運輸事業など)で集計しているととらえることができる。この解釈に立つなら、「事業」とは異なる「業種」単位での集計機能が必要となり、開発規模は大きい。

 ところが、顧客の回答に制度の理解を掛け合わせて深く解釈すると、見える景色が変わった。集計されていたのは、継続事業の一括における「指定事業」の単位だったのである。指定事業の一括とは、もともと同一業種内にある複数の「事業」を、親となる「指定事業」が束ねる仕組みである。つまり必要だったのは、「事業」単位の延長線上にある「指定事業」単位での集計機能であり、開発規模は小さかったのだ。

ヒアリング結果から想定した機能像と、制度解釈で見えた機能像
ヒアリング結果から想定した機能像と、制度解釈で見えた機能像

 表層的な解釈のままであれば、大きな改修コストが負担となって開発は進まなかった。深く解釈したことで改修コストを大幅にカットでき、開発は大きく前進してリリースに至った。

 「お客様の回答と制度で深く意味を解釈したら、本当に価値のある機能を低コストで生み出すことができた」と平田氏は振り返る。

使われる機能は、要望の先にある

 2つの事例に共通するのは、目の前の要望や条文をそのまま要件に翻訳しなかったことだ。顧客と業務を深く理解し、理想を想定する。その過程で初めて、メリットのある機能、顧客にとって価値のある機能が見えてくる。

 セッションの締めくくりに、平田氏は改めてカタログ思考を提示した。本当に価値ある機能を生み出す秘訣は、カタログを書く過程で業務と顧客を深掘りし、理想を設定して現実との差を見出し、そこからメリットを掘り当てることにある。

 AIが簡単なコードを書く時代に、エンジニアが身につけるべきは「何を、なぜ作るか」を定義する力だ。30年使われ続ける製品を支えてきたのは、作るものを決める文書に「メリット」という欄を設け、そこを埋め続けてきた思考プロセスだった。

 「ぜひ、このメリットを考える『カタログ思考』を持ち帰っていただいて、日頃の機能の企画や、開発部門で活用していただければと思います」

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DeveloperZine編集部(デベロッパージン編集部)

DeveloperZineは、株式会社翔泳社が運営する、技術と組織の意思決定を支える情報メディアです。技術選定やチームづくりに向き合い、自分の判断を確かなものとしたいエンジニアやエンジニアリングリーダーに向けて、翔泳社主催エンジニアイベント「Developers Summit」とも連動しながら実践知...

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岩本 隆之(イワモト タカユキ)

 1986年 兵庫県神崎郡出身 2009年 関西大学卒業 学生時代より写真・映像制作を行う。 写真撮影スタジオ勤務ののち、2020年独立。 現在は大阪市在住。 広告写真を中心としながら、ジャンルを問わず活動中。 HP Instagram

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