自分のハンドルは常に握らせる──「自律的目標設定」に基づくセルフマネジメントの促進
──続いて、そうした内発的動機に基づいて主体的に働くエンジニアを、組織としてどう支えていくのかについて伺います。誰もが「いい感じ」に働ける環境や文化を、どうつくればよいのでしょうか。まずは小田中さんからお願いします。
小田中:私がこれまでの所属組織で大事にしていたのは、自分の言葉で目標を立ててもらうことです。会社として目指すゴールは共有しますが、その達成のために細かく指示したり、本人の目標を変えさせたりといったことはしません。エンジニアとして歩みたいキャリアや目指す成果を問いかけるなどのサポートはしますが、ゴールに向けた道のりは本人に任せるのが基本です。マネージャーに強制されるのと、半年後の姿を自ら思い描くのとでは、取り組む姿勢がまったく違うからです。
ただし、まだ自立していない若手にはガードレールが必要です。会社が求めるスキルやマインドセットを伝え、そこに達するにはどうしたらいいか考えてもらう。それでも、方向性を示すだけで、どう実現するか、あるいは違う道を選ぶかは本人に委ねます。中堅メンバーにも、最も活躍しているメンバーと比較し、自らに不足する点を踏まえ、ベテランのようになりたいのか、あるいは違う方向を目指すのか、自分で今後の道筋を考えてもらう。そしてベテランには、真に主体的で自己実現的な目標を立ててもらいます。問いかけは、本人の成長段階に応じて変わるのです。

──「自分のハンドルを握れる」環境を維持してきたわけですね。
小田中:もうひとつ大事なことは、目標に向かう過程での失敗を罰してしまうと、人はチャレンジしなくなるということです。挑戦した結果の失敗は許容し、懲罰や低評価はしません。その代わり、組織の学びとして経験を蓄積し、本人には「良い経験だったね」と伝えます。
さらに言えば「失敗しないということは、挑戦していない」ということです。つまり、現状維持に向かっている兆候です。繰り返しになりますが、現状維持は後退につながるのでエンジニアにとっては望ましくありません。
現職のKDDIアジャイル開発センター(KAG)には今年の7月に入社したばかりで、そこでの取り組みはこれからです。ただKAGの組織文化を見ていて思うのは、みんなとても主体的で、若手もどんどん新しいことに挑んでいるということです。セルフマネジメントを阻害するブロッカーがない。やはり環境づくりが大事だと改めて思いました。
倉貫:チャレンジしない人はどうするんですか?
小田中:前年とまったく同じ成果でも、挑戦していなければ評価が下がるという仕組みを導入している組織は多いです。ただし、これは外発的動機付けなので、私は環境こそがより重要だと考えています。失敗を怖がらず、非難せず、学びを共有財産にする文化づくりを続けることが大切です。もちろん家庭の都合などで、一時的に挑戦が難しくなる時期は誰にでもありますから、それはきちんと考慮します。
意外と効果があるのが、尊敬されている先輩や上司の失敗談の共有です。「失敗は誰にでもあるし、失敗したからこそみんな成長しているんだよ」ということを伝えていくのが良いと思います。
