今日から始める最初の一歩
──最後に、これからセルフマネジメントに基づく働き方を目指したい方に向けて、まず何から始めればいいのかをお聞かせください。
小田中:1日の終わりに、自分のためだけの日報を書くことをおすすめします。その日、何をしたのか、何ができなかったのか、なぜそうなったのかを簡潔に書くといいでしょう。自分しか見ないものなので、格好つける必要はありません。「気分が乗らなかった」の一言でもいいのです。大切なのは継続することです。「絶好調でタスクを消化している」「どんどん進んでしまう」ということがあれば、それは自分の得意なことで、キャリアの中で重要な意味があるかもしれません。逆に1週間もネガティブな日報が続けば、仕事が嫌になっているなど、何らかの不調のサインかもしれません。正直になって定点観測することは、セルフマネジメントの第一歩です。
もしよければ、私が書いた『エンジニアのための自己管理入門』も読んでみてください。「この通りにやりなさい」とはまったく思っていませんが、理論だけでなく私自身の実践を踏まえたレコメンド集のようなつもりで書いたので、日々の仕事のヒントにしていただければうれしいです。
──今日から取り入れやすい内容をありがとうございます。私自身も早速実践してみたいと思います。倉貫さんはいかがでしょうか。
倉貫:私の答えは、一生懸命に仕事することです。主体性やメタ認知力は、知識として教わっても身につくものではありませんし、何か特定の訓練方法があるわけでもないからです。目の前の仕事に取り組み、そのやり方を改善していく中で、少しずつできることが増えていく。その結果としてセルフマネジメント力も身につき、視座も高くなっていくと思います。
ソニックガーデンでは、こうした働き方を「遊ぶように働く」と表現しています。もちろん、サボったり楽をしたりするという意味ではありません。趣味に没頭するのと同じように、夢中になって仕事に取り組むということです。みなさんも、スポーツやゲームなど、何かに夢中になって取り組んだ経験があると思いますが、それは仕事でも同じだと考えています。
夢中になって取り組めば、少しずつ上達します。そして、上達すればするほど面白くなる。人間は何歳になっても、成長することに喜びを感じる生き物なのだと思います。私の周りにも仕事を引退した後、真っ黒に日焼けするほど熱心にゴルフへ打ち込んでいる人がいます。それも、上達すること自体が楽しいからではないでしょうか。
仕事を「お金のために自分の時間を切り売りするもの」と捉えると、どうしても消耗してしまいます。それなら仕事そのものを、夢中になって上達していけるものとして捉えられたらいい。何かに熟達していくことは、一生続けられます。その対象が仕事であれば、こんなに嬉しいことはありません。そんな考え方を、『自分と社会をいい感じにする 仕事技芸論』にまとめました。ぜひ手にとっていただければ幸いです。
──『仕事技芸論』、私もぜひ拝読したいと思います。本日は貴重なお時間をありがとうございました!

