SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine(コードジン) ProductZine

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

進化するエンジニア組織

「一点もの」であるソフトウェア開発にセルフマネジメントが欠かせない理由とは?【倉貫義人氏×小田中育生氏対談】

「AIには責任が取れない」──エンジニアの存在意義とチームワークの未来

──これまでセルフマネジメントについて伺ってきましたが、議論の中心軸は「個人」にあったように思います。組織文化に関する取り組みも、結局はそれを受け取る一人ひとりに還元されるものだからです。一方、実際のソフトウェア開発では、エンジニアはチームとして働くことが多いです。そこで、これまでの議論を踏まえ、チームワークの望ましいあり方はどのようなものか、お2人の考えを伺えますか。

倉貫:私にとってチームとは、多様な能力をもった人が集まり、互いの強みを活かし、弱みをカバーし、パズルのように1つの絵を作っていくようなものです。同じような人が集まっているだけなら、それはグループであってチームではありません。

 ここで常識に異を唱えたいのですが、私はエンジニアだけのチームは必要ないと考えています。同じ職種が複数人集まるのは、分業するためです。しかしソフトウェアが一点ものであるなら、できるだけ分業しない方が良いはずです。例えば、1冊の書籍を何十人もの著者で分担して書けば、全体の整合性を取るために膨大なやり取りや手戻りが発生するでしょう。それなら1人で書き上げたほうが、むしろ進めやすいのではないでしょうか。

小田中:属人化のリスクを考えると、私は複数人の集まり自体にも意義はあると考えます。ただし、おっしゃる通りエンジニアだけのチームには問題があります。ソフトウェア開発には、デザイナーや品質保証など、エンジニア以外にもさまざまな人が関わっていますが、そうした人たちがチームという枠組みからこぼれ落ちてしまいがちです。また、開発者だけが満足していても、顧客が価値を受け取れなければ意味がありません。

 単に複数人が集まったグループではなく、さまざまな立場のメンバーが相互補完しながら、1つのものを作り上げていく。それこそがチームだという点では、私も大いに共感します。

倉貫:そうですね。もちろんチームワークを否定しているのではありません。我々にとってのチームメイトとは顧客です。作ること自体は1人で完結しても、ビジネスを構想する人がいなければ成立しません。その意味では最低でも2人は必要です。さらに必要に応じて、デザイナーやデータサイエンティスト、マーケティングの担当者などが、チームに加わることもあります。

 ただし、私たちはエンジニア中心の会社なので、互いに切磋琢磨し合う「コミュニティ」ではあっても、同じゴールへ向かう「チーム」ではありません。エンジニアだけでチームを組めば、そのゴールは開発したソフトウェアそのものにならざるを得ないからです。しかし、本来はソフトウェアを作ることではなく、それがビジネスの中で価値を生み出すことがゴールです。作ることがゴールになってしまえば、それは私が著書『「納品」をなくせばうまくいく』で批判した、「納品して終わり」の受託開発と同じです。価値を生まない不毛なソフトウェア開発となり、顧客も、開発者も、ユーザーも誰も幸せになりません。

 今はAIエージェントが進化して、1人でできる範囲がどんどん増えています。クラウドの進化でインフラエンジニアの分業が減ったように、今後はソフトウェア開発も分業が減っていくのではないでしょうか。

小田中:確かに、今後は少数精鋭のエンジニアとAIエージェント、プロダクトマネージャー、デザイナー、そして顧客といった、よりミニマムな体制で進めるプロジェクトが増えそうですよね。

 ソフトウェア領域の課題解決にかかる労力が減れば、ロボティクス、農業といった社会課題など、フィジカルAIの領域に踏み込む機会も増えていくでしょう。そうなれば、これまで接点のなかった人たちとのコミュニケーションや、新しい形のチーミングが必要になります。異なるドメインへ躊躇なく越境できるエンジニアが、これからの時代の主役を担うのではないでしょうか。

 ただし、価値創出のための少数精鋭には賛成ですが、「AIに開発させるからエンジニアは不要だ」という論には反対です。エンジニアをコストセンターとみなす発想ではうまくいきません。価値を届ける先が人間である以上、AIで完結することができず、人間が介在するのは必然だと思います。

倉貫:問題が発生した際に、誰が責任を取るのかという話でもありますよね。経営陣であれば、謝罪したり経済的な負担を負ったりすることで責任を取ります。一方、現場における責任とは「なんとかする」ことです。AIには主体性がないので、その責任を引き受けることはできません。最後までやり切る力は、それ自体が圧倒的な価値です。

次のページ
今日から始める最初の一歩

この記事は参考になりましたか?

進化するエンジニア組織連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

Innerstudio 鍋島 理人(ナベシマ マサト)

 ITライター・イベントプロデューサー・ITコミュニティ運営支援。 Developers Summit (翔泳社)元スタッフ。現在はフリーランスで、複数のITコミュニティの運営支援やDevRel活動の支援、企業ITコンテンツの制作に携わっている。 Twitter:@nabemasat Facebook Web

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

関口 達朗(セキグチ タツロウ)

フリーカメラマン 1985年生まれ。東京工芸大学卒業後、2009年に小学館スクウェア写真事業部入社。2011年に朝日新聞出版写真部入社。2014から独立し、政治家やアーティストなどのポートレート、物イメージカットなどジャンルを問わず撮影。2児の父。旧姓結束。趣味アウトドア。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/29614 2026/10/09 08:00

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー