組込みソフトウェアの現状と課題
近年、モノ造り製造業において、組込みソフトウェア開発費の割合が増加しています。経済産業省の組込みソフトウェア産業実態調査によると、全開発費におけるソフトウェア開発費の割合は06年度に40%、07年度では46.2%にまで達しました。全開発費ではなく、組込み関連だけを見た場合、実に59.7%がソフトウェア開発費で、残り20.7%がハードウェア(電子系)開発費、11.9%がハードウェア(機械系)開発費になっています(図1-1)。
2007年5月に行われた、九州組込みソフトウェア研究会1周年記念講演会では、JasPar(Japan Automotive Software Platform and Architecture)運営委員長を務める日産自動車電子・電動要素開発本部電子制御技術部制御技術グループ主管の安達和孝氏が、2015年には車載ソフトウェアのコードが1億行を超えるという予測を発表しました(図1-2)。
携帯電話の組込みソフトウェアは、この2~3年の間に5倍の規模になり、しかもその規模は500万行に達しています。この500万行という数字は、1980年代半ばに構築された、銀行の第3次オンラインシステムのソフトウェアの量に匹敵します(図1-3)。
急激な成長は、ときとして弊害を起こすことがあります。それが品質問題となると、事は深刻です。日本の製造業は品質によって世界に名立たるものになりました。リセット文化やenough effort流のソフトウェア品質を、家電や自動車といった組込み製品に適用することは許されません。
しかしながら、製品出荷後の不具合件数をみると、ソフトウェアの不具合が68.3%です。ハードウェアの不具合は4.2%、製造上の不具合は3.4%であり、これらと比べてソフトウェアの品質に起因する確率は桁違いに高いことがわかります(図1-4)。このような事態を深刻にとらえてか、経営者や事業責任者が考える、組込みソフトウェアに課せられている課題として、「設計品質」が群を抜いて掲げられています(図1-5)。