組込みソフトウェア・クライシス
いま、「組込みソフトウェア・クライシス」(図1-6)が起こっているのでしょうか。『情報処理 Vol.26 No.9(Sep.1985)』に、20年前議論された、ソフトウェア・クライシスについての記載があります。1985年は、電電公社がNTTに、日本たばこ専売公社がJTになった年です。携帯電話やカーナビは身近になく、組込みソフトウェアという言葉はありませんでした。半導体が産業のコメと呼ばれ、家電、OA、FAなどにマイコンが搭載され、あらゆるものが電子化、自動化されていきました。当時のソフト屋さんは、半田ごて片手に、機械語をROMライターから書き込んだり、アセンブラ言語でプログラミングしたりしていました。

1985年に行われたソフトウェア・クライシスのパネルディスカッションでは、今では想像もつかないようなことが課題として議論されていました。例えば、「ソフトウェア技術者」という職業が世間一般に通用しないことが問題として提起されています。また、漢字コードが統一化されていないという問題もありました。これらは、現在ではすでに解決されています。
しかしながら20年前に指摘された情報処理におけるソフトウェア・クライシスの課題が、現在の組込みソフトウェアにあてはまることがあります。例えば次の3つの課題です。
①ソフトウェアに従事している人たちは、自らの作業の自動化が行えていない。
②ソフトウェア部品を再利用するために、ソフトウェアの設計法を抽象化して蓄積し、再利用時には、具体化の技法の開発が必要である。知識工学的手法というものをソフトウェア工学と融合させる必要がある。何を知識とするかについては、抽象化技法あるいは具体化技法と密接に結びついてくると考えられる。
③ハードウェアの設計に1台何千万円もする機械を技術者に与えるのに、ソフトウェアの設計者のためには、せいぜい100万円ぐらいの端末を与えて、しかもそれを数人でシェアさせる。このことは、生産性の向上を妨げている。
これらはソフトウェア業界が20年間抱える課題ですが、さすがに、20年前よりは改善・改良されています。特に、①と②に関しては、20数年前の主流であった「コードベース開発」が「モデルベース開発」に移行し始めています。また②と③に関しては、これまでの「レイバーベース開発」から「アセットベース開発」になる機運が高まっています。
例えば、9月に催されたモデリングについて考えるイベントModeling Forum 2007は、「情報資産価値創造とモデリング」をテーマに開かれました。「どのようにモデルベース開発を行うか」から「モデルベース開発により、どのようにして情報資産価値を創造するか」という面に注目が集まり始めています。
