IDCフロンティアのパブリッククラウド『NOAH(ノア)』は、信頼性とコストパフォーマンスに優れたサービス。モバゲータウン、GREEの両プラットフォーム向けのパッケージプランを提供するなど、ソーシャルアプリに最適なインフラとして利用されている。なぜ同サービスが選ばれているのか? サービスの特長や利用動向、今後のビジネスプランなどについて、担当者に伺った。
ソーシャルアプリプロバイダーを支援するプランが充実
Yahoo! JAPANグループでデータセンター事業を展開するIDCフロンティア。同社が手がけるパブリッククラウド『NOAH』は、長年培ってきたデータセンター運用実績をベースに2009年6月にスタートしたサービス。モバゲータウン向けの『モバゲークラウド』、Yahoo!モバゲー向けの『ソーシャルアプリパック for Yahoo!モバゲー』、GREE向けの『GREEクラウド』など、NOAHの基盤をベースにソーシャルアプリケーションに特化したパッケージプランを提供している。また、データセンター事業者として唯一、これら公認のプランを提供している。
NOAHについて谷口氏は、「特長の一つは、リーズナブルな料金設定です。SAP(ソーシャルアプリのプロバイダー)のみなさまは、よりコストパフォーマンスに優れたインフラをお求めです。DeNAやGREEのデベロッパーサイトには、他の事業者のサービスも掲載されていますので当然比較されますが、弊社のプランは最もコストパフォーマンスが良いので、非常に引き合いも多いです。また料金だけではなく、ネットワークにも自信があります」と切り出した。
他社のクラウドサービスでは、ネットワーク料金に従量制を採用するものも多いが、NOAHは定額モデル。従量課金ではトラフィックが増大した場合、ネットワーク料金が青天井になるが、定額ならこの心配はない。加えて30Mbpsまでの帯域は無料で、『モバゲークラウド』や『GREEクラウド』の場合、最初の3か月のネットワーク料金も無料としている。ソーシャルアプリは、サービス開始から収入を得られるようになるまで2~3か月ほどかかるので、この期間のマネタイズの支援をしている。
早期からソーシャルアプリ市場の成長を支えてきた同社では、新興のSAPへの支援も行っている。ヤフー、DeNA社と企画した『ソーシャルアプリパック for Yahoo!モバゲー』では、SAP育成を目的とした『登竜門プラン』がある。DeNA社とIDCフロンティアで審査を行い、そこを通過したSAPには、開発・検証期間最大1か月、サービス開始から最大3か月間のインフラを無料で提供する。またヤフーの誘導枠も無料で提供し、アプリに誘導するという特典もある。「新興のSAPさまは、手持ちの資金に乏しい場合もあります。成功すればSAPさまにも資金の余裕ができますので、可能性のあるサービスについては積極的に支援しています。このような取り組みが評価され『モバゲークラウド』や『GREEクラウド』の提供にもつながったのです」と谷口氏。
SLA99.99%と、おもてなしのサポート
料金面だけでなく、高い可用性もNOAHのセールスポイントの一つ。それを裏付ける形として、2010年8月からは99.99%のSLAを保証している。「成功しているSAPさまほど、インフラに求めるレベルが高くなります。サービス開始当初はコストを重視されますが、会員数が増えてくると、安定性を重視されるようになります。GREEやモバゲーといったプラットフォームでは、一定の時間内にレスポンスがないと、ユーザーへの影響を配慮してメンテナンス状態になってしまいユーザーはアプリを利用できません。ビジネスチャンスを逃すわけにはいきませんので、アプリのリリース直後から安定性が重要になってくるのです」と谷口氏は、ソーシャルアプリならではの課題を説明した。
クラウドというと仮想マシンでの利用となるが、会員数が増えるとパフォーマンスの問題が発生する。谷口氏は「100万会員を超えると、データベースのI/Oやトランザクションなど、より高いパフォーマンスが必要になってきます。そこで、専用の物理サーバーを利用したいという要望もあり、仮想と物理を組み合わせたハイブリッドな構成にするオプションもあります。例えば、モバゲータウン、GREE、Yahoo!モバゲーにも展開されているチュンソフトさまの『喧嘩番長 全国制覇』シリーズでは会員数は150万人を超えており、仮想と物理の構成でサービスを支えています」と説明した。ほかにも、顧客のニーズに合わせ、柔軟な対応を行っているという。
また、急激なアクセス増への対策のために、予備のサーバーを事前に無料で提供している。谷口氏は「予備サーバーの台数は、フロントのWebサーバーの半分ほどの台数を目安にお渡ししていて、使用された時点から料金が発生するようになっています。また、マシンの状態を24時間365日監視するオプションをご利用いただいているお客さまには、設定したしきい値を超えた場合にメールと電話で連絡を差し上げています。ネットワーク技術者のリソースが足りないお客さまには、弊社のパートナーである運用会社をご紹介させていただくこともできます。最初にインフラを用意したら終わりではなく、開発期間からリリースまでの各種チューニング、運用フェーズでの増設やチューニング、リリースしたタイトルが成功したら物理サーバーとの連携、そして次の新しいタイトル……と、ずっとサポートは続きます」と手厚い支援体制について説明した。SAPがサービス運営に集中できるよう、打ち合わせには営業担当だけでなくSEも同行し、サーバー技術やデータベースのチューニングなどの技術的な問い合わせにも対応するという。
ネットビジネスの幅広いニーズに応えていく
SAPに手厚い印象のあるNOAHであるが、もちろんソーシャルアプリ以外にも利用されている。博報堂アイ・スタジオがYahoo! JAPANで展開していた年賀状サービス『ネットで年賀状』や、野村不動産のTVCM連動キャンペーンサイト、NRIネットコムが提供するiPadを利用した会議システム、電子書籍や動画配信などもNOAH上で展開されている。NOAHの最低契約期間は1か月であるため、キャンペーンサイトなどの期間限定サイトにも最適だ。
今後の機能強化について粟田氏に聞くと、「常にお客さまの声を聞いて機能を随時追加しています。例えば、コントロールパネルからロードバランサーのパラメーター設定をGUIでできるようにするなど、細かなアップデートは頻繁に行っています。ソフトウエアベースのロードバランサーでパフォーマンスが足りない場合は、NOAHとデータセンターのラックに設置したアプライアンスで処理するなど、仮想だけにこだわらないシームレスで柔軟な提案も行います。ソーシャルアプリ市場では、クラウドならではのセルフサービスも重要ですが、こうしたお客さま固有のニーズにひとつひとつ対応していくことが求められているのです」と説明した。
同社では、今後成長が期待されるスマートフォン市場についても注目しており、データセンターへの投資も積極的に行っている。粟田氏は、「スマートフォン向けでは、DeNA社が北米展開していますが、近い将来、日本のSAPさまが海外展開をする場合のサポートも行いたいですね。ただ、国内データセンターがメインの弊社ですべて提供できるとは考えていませんので、適材適所で国内外のパートナーと組んでいきます。NOAHはソーシャルゲームだけでなく、さまざまな用途のお客さまのご要望を聞きながら強化していますが、その屋台骨はやはりデータセンターです。当社は全国9ヶ所のデータセンターを運営しており、2008年10月に竣工した北九州の『アジアン・フロンティア』は他社に先駆けて外気空調を採用した環境対応型のデータセンターで、今年の9月には3号棟が竣工します。このほか、ヤフーと共に福島県白河市にデータセンターの建設を計画しており、NOAHをはじめとするソリューションの成長とあわせてデータセンターの基盤も拡大していきます」と事業全体の展望を語った。
成長市場であるパブリッククラウドサービスやソーシャルアプリ向けサービスにいち早く取り組んできたIDCフロンティア。先端技術のデータセンターと手厚いサポートで、顧客のネットビジネスを成功に導く。