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Force.com上の業務アプリとHeroku上のエンゲージメントアプリをシームレスに同期
アイデアのアプリ化へ最短ルートを提供するSalesforce App Cloud
解説は「HEROKU×FORCE!! 事例とアーキテクチャ」と題したセッションで行われた。登壇したのは、セールスフォース・ドットコム ソリューションアーキテクト兼デベロッパーマーケティングマネージャーの相澤 歩氏。相澤氏はまず、Salesforce1 Platformから名称変更した「Salesforce App Cloud」(以下、App Cloud)を紹介した。
App Cloudはアプリケーションの土台となるプラットフォーム全体を指し、「アイデアをアプリに変える最短のルートを提供する」ことを基本理念とする。通常、新しいアプリケーションを作成しようとすると、ハードウェアの導入から始まり、ソフトウェアのインストール、ミドルウェアのセットアップを経て、さまざまな機能を作り込むという段取りを踏むため、リリースは半年から1年先になってしまう。
しかし、App Cloudを利用することで、デベロッパーのアイデアやその先にいるお客様の要望を「最短のルート」でアプリケーションとして形にできると相澤氏は強調。Salesforceが提供する営業支援の数々のアプリケーションをはじめ、社内・社外を問わずさまざまな業務アプリ、そしてお客様とのエンゲージメントがすべてApp Cloud上で実現可能というのが、Salesforceの提示するコンセプトであるとした。
Force.comとHerokuの違い
このコンセプトを実現するため、App Cloudでは2種類のPaaSを提供している。
1つは「Force.com」。業務に精通したユーザーがクリックやドラッグ&ドロップなどの操作だけで、必要な業務アプリを構築できるプラットフォームだ。Force.comでは、モバイルアプリケーションをノープログラミングで構築できる「Lightning」、統一したルック&フィールを作成するための「Lightning Design System」、魅力的なUIコンポーネントを活用できるライブラリ「AppExchange for Components」などが提供されている。
Force.comは、業務アプリケーションをデベロッパーに頼らずに構築することを可能にするが、業務に特化したコンポーネントやForce.comにはない機能の構築など、実際のアプリケーション開発ではデベロッパーの存在は不可欠である。
App Cloudが提供するもう1つのPaaSである「Heroku」は、デベロッパー向けにRuby、Java、PHP、Node.jsなど任意の言語やフレームワークを自由に使って独自のアプリケーションを構築できる環境を提供する。
Herokuの特徴は、その強固でスケーラブルなインフラにある。たとえば、サービスをデプロイした後、当初数百人程度だった利用者が数百万人、数千万人規模に増えても、Heroku側がインフラのマネージメントを担当し、自動でスケールを行う。デベロッパーはこういった管理に関与する必要がなく、利用者からのフィードバックの反映や新しい機能の追加など、サービスの価値を高める作業に集中できる。
また、エンタープライズ向けの「Heroku Enterprise」では新サービスとして、2016年に「Private Spaces」をリリースする予定。Herokuはこれまでパブリッククラウド上でプラットフォームを提供していたが、Private Spacesにより、利用者ごとにネットワークの区画が分けられ、利用者専用のプロビジョニングが可能になる。これに伴い、2016年初頭には東京リージョンでHerokuが稼働するようになり、マルチリージョンにも対応する。またHeroku Enterpriseは、Force.comとHerokuを連動して利用できるようにシングルサインオン機能も提供する。
そして、Force.comとHerokuをつなぐキーテクノロジーが「Heroku Connect」である。Heroku Connectにより、Force.com上で開発した業務アプリケーションとHeroku上で開発したコンシューマ向けエンゲージメントアプリケーションを統合し、シームレスなデータの同期が可能になる。相澤氏は「これから事例を紹介する2社のように、Force.comとHerokuを組み合わせ、それぞれの特性を活かしたソリューションを提供していくことが必要」と述べ、App Cloudの紹介を締めくくった。