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イベントレポート

SpringOne Platform 2017 参加レポート~Spring Framework、Pivotal Cloud Foundryの最新動向からマイクロサービス転換の先行事例まで


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テクノロジーが変える企業のシステム開発

 SpringOne Platform 2017は過去最大規模のSpring関連イベントとなっており、Pivotalの開発者以外の、システム開発会社や企業の情報部門などのSpring利用者による最新テクノロジーの実案件適用の事例なども多くありました。その数は、全セッションが約150ある内で40セッション以上にものぼりました。

 その事例のセッションの中では、Main StageでPivotal Cloud Foundry 2.0(PCF 2.0)が発表されたこともあり、Pivotal Cloud Foundryの話題を扱ったセッションが多数ありました。刻々と変わる時代のニーズに対応するために、多くの企業でモノリシックなシステムからマイクロサービスへとPivotal Cloud Foundryを活用してビジネス変革に取り組んでいるようです。

 ここでは一例として、Synchrony Financialというアメリカの大手クレジットカード系金融会社でのマイクロサービス化の成功事例である、Michael Barberさんのセッションを紹介します。

 金融業界においては、FinTechという言葉にも代表されるとおり、ITを活用し革新的なサービスを常に継続的に市場にリリースすることが求められています。

 その一方で、既存のシステム構成は、オンプレミス型のモノリシックなシステム構成のため、機能、性能ともに拡張しづらくなっていました。また、デプロイ作業の手順が煩雑でシステムの変更のたびに多くの時間がかかるとの問題があり、ビジネスの変化に迅速に対応できていませんでした。Synchrony Financialではその問題に対して、Pivotal Cloud Foundryを活用して解決しています。

 既存のシステムをPivotal Cloud Foundryのクラウド上で再構築し、マイクロサービスの概念を取り入れ変化に強い構成となりました。これらの開発は14のスクラムチームによるアジャイル開発で行われ、CI/CDによる効率化にも取り組みました。結果として開発速度が約30%向上、各機能の開発費用が50%削減、ハードウェアなどの維持費も削減されたとのことです。

 しかし、変革への道のりは平坦ではなく、マイクロサービス化における課題に関しても講演で触れていました。特に、クラウド分野、マイクロサービスアーキテクチャ分野の有識者の数がまだ多くないという問題です。上で取り上げた事例ではその問題に対して、Pivotalの開催する研修を積極的に受けたり、自社で有識者育成のための学習コンテンツの整備を行ったりして解決したと述べていました。

 こうした有識者不足の問題は他の事例でも触れられています。Liberty Mutualという保険会社の事例では、John HeveranさんがMain Stageで概要を、Miranda LeBlancさんが個別セッションで詳細を説明していました。

Liberty Mutualのシステム改革について講演するJohn Heveranさん
Liberty Mutualのシステム改革について講演するJohn Heveranさん

 Liberty Mutualは、北米で4番目に大きい保険会社で100年以上もの間、保険事業を営んでいます。古くは20年以上前から稼動しているメインフレームアプリも含む、巨大なシステム群を運用していましたが、近年の市場のニーズにすばやく対応するために、およそ10年前に古いシステム構成を脱却して、変化に柔軟なシステムへ移行するという目標を掲げました。しかし、各組織の縦割り文化や、新しい技術への対応の遅さによって改革がなかなか進みませんでした。

 その問題を解決するパートナーとして登場したのがPivotalでした。Liberty Mutualは合計で50名ほどのエンジニアをPivotal Labsに送り、Pivotal Cloud Foundry上でのマイクロサービスでの開発のノウハウやマインドを、ペアプログラミングなどを通じて学びました。また、その成果を持ち帰り、さらに他の250名にノウハウを伝授して、クラウドネイティブなシステムへ移行する礎を整えたのです。

 その結果、およそ50もの既存のシステムをPivotal Cloud Foundry上に移行し、リリース間隔も以前の数か月スパンからほぼ毎日のようにより洗練されたサービスを提供できるように変革を遂げたそうです。

 またLiberty Mutualからは他にもRohit Soodさんが、Pivotal labsのRohit KelapureさんとDavid Turanskiさんとともに、Domain Driven Designを用いてモノリシックなシステムをどのようにマイクロサービスなシステムに分解していくかについて、事例を交えて発表するなどのコラボレーションがあり、よきビジネスパートナーとしてのPivotalの一面が際立つセッションとなっていました。

 これらの事例以外にも、Pivotalとのコラボレーションによって、ビジネスの課題を解決していったという趣旨の事例紹介が多数あったことが印象的でした。

終わりに

 SpringOne Platform 2017で語られた内容について複数の切り口でレポートしてきましたが、いかがでしたでしょうか。今回参加して感じたこととしては、Springの名を冠したカンファレンスではありますが、内容を十分に理解するためにはSpringの知識に加えてプラットフォームレイヤーの知識やトレンドを押さえておくことが必須となりつつあるということです。

 本稿で扱った内容もカンファレンスのごく一部のみに過ぎません。幸いなことにほぼ全てのセッションがYouTubeで公開されており、誰でも閲覧が可能です。気になるセッションがあればチェックしてみて下さい。

 次回のSpringOneは2018年9月24日~9月27日にワシントンD.C.で開催されます。セッションの動画を見るだけでは現地の空気を味わうことができません。次回はぜひ現地でのカンファレンスへの参加を検討してみてはいかがでしょうか。

会場の様子
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この記事の著者

SpringOne Platform 2017参加チーム(SpringOne Platform 2017サンカチーム)

【NTTソフトウェアイノベーションセンタ】岩塚卓弥、宇梶弘晃、堅田淳也 【NTTデータ】浅原舜平、熊谷一生、Jia Xiaozhou 【NTTコムウェア】栗原伸豪、渡邊拓麻

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/10621 2018/10/23 18:21

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