「製品に対する愛」が大事、エバンジェリスト/アドボケイトの役割とは
「これまでのエンジニアのキャリアパスは大きく『スペシャリスト』と『ゼネラリスト』の2つに分類されます」と、中津川氏は切り出し、セッションをはじめました。前者は高い技術と専門性が求められる職種で数も少なく、日本においてはあまり求められない状況です。一方、後者はチームやプロジェクトの管理・評価、社内調整能力が必要な職種であり、技術から徐々に離れていってしまう形にはなりますが日本では求められやすい傾向にあります。
組織構成員の労働に関する社会学の法則として有名な「ピーターの法則(能力主義の階層社会では人間は能力の極限まで出世し、有能な平社員は無能な中間管理職の地位に落ち着く。結果として各階層が無能な人間で埋め尽くされる、というもの)」に照らし合わせると、いずれは出世の道・ポジションは限られていってしまいます。そんな状況で取るべき手段の1つとして「転職」が考えられますが、スペシャリスト、ゼネラリストいずれの場合でも年齢・需要・コネ・強みなどもろもろの条件がそろっていないと、すんなり上手くはいきません。
そこで中津川氏が提唱するのが第三の選択肢、「エバンジェリスト」「アドボケイト」。簡単に要約すると「自社製品やサービスを社外の開発者に啓蒙する」職種です。エバンジェリストは人々の前に立って先導、主導をしていく"伝道師"のイメージ。アドボケイトは人々と同じ目線で彼らの課題を一緒に解決していく、とイメージすると分かりやすいでしょう(ただ両者に差異はなく、企業の方針等によって採用される肩書が分かれる形となるようです)。
中津川氏の統計によると「エバンジェリストやアドボケイトになる人は、前職でエンジニアやマーケターだった人が多い」と言います。きっかけは転職や社内公募等が主ですが、変わったケースだと「製品を好きだと勝手に名乗っていたら会社に認めてもらった」といった経緯で就任した人もいるようです。
エバンジェリストになるためには何が必要となるか、といった「素養」の部分について、中津川氏は以下4つのポイントを挙げました。
- 製品に対する愛
- 開発者とのコミュニケーション能力
- 技術に対する愛
- 技術力
その中でも1つめの「製品に対する愛」が一番大事であるとして、重ねて「この製品が大好きだ、という気持ちがあるのならば是非エバンジェリストになってほしい」と強調しました。また必要なスキルについては、プログラミングなどエンジニアとしての知識の他に、マーケティングの知識を蓄えておくことで近づくことができると言います。