認知資源の余裕を生み、より創造的な仕事にフォーカスする
3つ目の事例はダウンロードサイズ肥大化検出の自動化だ。モバイルゲームでメンテナンス明け後にイベントやガチャを開始する場合には、ユーザーのアクセスが集中するため大量のファイルダウンロードが発生する。CDNのネットワーク帯域が逼迫してしまうと、ユーザーがゲームを快適に楽しめないことに陥ってしまう。
「これを避けるには、必要なダウンロードサイズを予め見積もっておき、必要に応じてCDNの上限緩和申請を出す必要があります。理想を言えば、インフラチームに対してリリースの2週間前には申請を出しておきたいところです。
改善前は、Jenkinsに登録しているダウンロードサイズ計測ツールで見積もりをしていました。ですがこのツールは手動実行であり、実行に必要なパラメータを準備するのにも手間がかかります。また、『リリース前にはダウンロードサイズを計測しなければ』と覚えておくこと自体も、認知資源の消費を招きます」
この問題を回避し、なるべく高頻度でダウンロードサイズを計測するため、彼らは新しいツールを導入した。Jenkins上で毎日ダウンロードサイズを計算して、一定以上量に達した際にインフラチームへSlackでメンション付きメッセージを送ってくれるツールだ。ツールを動かすことを人間が覚えておく必要もなくなり、作業漏れの防止につながった。
4つ目の事例はリリースブランチ間のマージ補助ツールについて。この事例についてはまだ構想段階であり、実現にはいたっていない。倉持氏は「現在はどのような作業で認知資源の無駄遣いが起きており、どういった手段での改善を検討しているか」について紹介した。
「モバイルゲーム開発では、リリース時期の異なる複数のブランチを、並行して管理することが多いです。各ブランチで行われた修正は、次にリリースされる予定のブランチにも反映します。ブランチ間のマージはほぼ毎日発生する作業です。現在はコミット差分のチェックからマージ用のPull Request作成までを全て手動で行っているため、非常に負担が大きいです。認知資源を消費している作業のなかで、最も改善したいものになります」
この問題に対しても、コマンドラインツール「Hub」コマンドを活用することで、解決を目指しているという。「Hub」にはPull Requestを作成できるhub pull-requestというコマンドがある。これを用いることで、ブランチ間マージのPull Request自動化を目指したいと、倉持氏は語った。
注意力や判断力を過剰に要求される仕事を最適化することで、認知資源の余裕が生まれ、突発的に発生するタスクに対応しやすくなる。改善の取り組みを続けることで、より創造的な仕事に認知資源を割り当て、運営業務の質を向上させていけるのだ。
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