解説「モブワーク」

最後の解説は、和田塚が担当します。特定のメンバーへの強依存体質や他責の空気の蔓延によって、チームや組織に一体感が欠如していませんか?
「私たち」と「あなたたち」と言っている状態では、周りを巻き込むことなんてできません。人を巻き込むには、一緒にイベントを企てたり、協働して課題解決したり、自分たちのプロダクト開発に関わってもらったりすることが重要なのです。
ものづくりを通して世の中に価値を提供していきながら、プロダクトのあり方を一緒に考え、自分たち自身もパフォーマンス高く成長できる働き方のプラクティス、「モブワーク」を紹介しましょう。
なぜやるの?
モブワークの目的は、高品質な成果物を作り出すために、価値提供サイクルを早め、個人に依存した判断や属人化から脱皮し、チームを成長させ、パフォーマンス高く業務を遂行することです。
価値提供サイクルを上げる
- チーム全員が同席しているので作業の分担、結合、日程調整、申請、承認、などの待ち時間がなくなります。
- リアルタイムでレビューできるので、プロセスサイクルのスピードが一気に上がり価値提供スピードがアップします。
- 開発コードの場合には、コンフリクトや手戻り業務が激減します。
ナレッジマネジメント
- ロジックの意図や背景などの「why」が共有されながら仕事が進むので、属人化を回避できます。
- 多くの目があることでケアレスミスが減り、チェックが随時行われることになるので成果物の高品質化につながります。
コラボレーションでチームの成長
- さまざまなスキルや視点を持ったメンバーとの業務遂行で、自分が知らなかった知識を得ることができ、スキルの向上に役立ちます。
- 2人以上いることの心強さにより、1人では挫けそうな先送りしていたタスクや難解な課題にも挑戦する場になります。
- 個人の成功やプロダクトの成功などさまざまな思惑がある中、集中してチームに貢献し、ゴールを達成したことによる成功体験がチームの団結力を高め、モチベーションがアップします。
モブワークとはなんでしょうか?
モブワークの前にモブプログラミングから説明しましょう。
モブとは群衆という意味です。モブプログラミングでは、チームメンバー全員が1つの画面を見ながら1台のマシンのキーボードで開発していきます。プロダクトオーナーやデザイナーなども常に同席しながら開発を進めます。キーボードを操作できるたった1人のドライバーと、指示を出すナビゲーターに分かれ、短いインターバルでドライバーを交代しながら実施します。
このモブプログラミングを開発以外の業務にも発展させたのがモブワークです。例えば、緊急のネットワークトラブルの対処や、人事部門と合同での採用スカウティングメールを出す際、全社に導入されるバックオフィス系サービスの操作方法を一緒にマスターする時などにこの働き方は有効です。群衆でワークする「働き方」によって、仕事場にいつもとは異なる喜びが生まれるでしょう。
以下の要素が必要になるので、覚えておきましょう。
ドライバーとナビゲーター
自動車レースのラリーの比喩ですね。ドライバーはキーボードを操作できる唯一の人です。ナビゲーターはドライバーに指示を出す人たちです。ドライバー以外のメンバーは全員ナビゲーターとしてブレインとなるわけですね。
プログラミングスキルがなくても、ドライバーの役割を恐れる必要はありません。なぜなら、ナビゲーターがすべてを考えて指示してくれるからです。
モブセッションとインターバル
初めて実施する際は全体で2時間くらいがちょうど良いでしょう。このモブセッション2時間の中で、10分のインターバルでドライバーを交代していきます。得意不得意の領域に関わらず一定のサイクルで全員がドライバーを担当していきます。
場と機器
大型モニターやプロジェクターのある会議室にマシンを1台持ち込みましょう。
取り組む業務
初めて実施する際は、メンバーが不安に思っていて1人では挫けそうなタフな開発スコープや、全員が知っていた方が良い領域を選んでみましょう。実験するくらいの軽い意気込みでトライしてみましょう。
フロー効率を重視
並行した作業でメンバーの稼働率が100%になることは、最終顧客の視点からは重要ではありません。価値が早く提供されることの方が重要なはずです。価値が流れるスピードを上げること、つまりフローの効率を重視しています。ハイスキルなメンバーの思考スピードや得意分野がそれぞれ異なるメンバーのブレインを最大限活用し、チーム全体で成長し、ハイパフォーマンスを出せるチームになりましょう。
事前準備
以下を準備しておくと良いでしょう。
- ホワイトボード
- プロジェクター(大型モニター)
- PC1台
- タイマー(スマホやタブレット)
- スイーツ(チョコレートやキャンディーなど)

当日の進め方
初めて実施する際は、不安の方が大きいかもしれません。性善説にもとづいて、それぞれのメンバーの貢献力や、視野の広さや視座の高さを借りながらチームが一丸となることを期待しましょう。小さいゴールを達成するたびに、メンバー全員で歓喜してみると良いでしょう。

貢献ファースト

「本日は集まっていただきありがとうございます。モブワークは、みなさんの貢献と価値提供スピードにフォーカスした新しい働き方ですよ」

モブワークの目的の説明

「作業分担やレビュー待ちや承認などのプロセスが必要なくなり、手戻りや待ち時間が激減します。また、全員の目があるので品質を作り込むことも可能です。一緒に開発したり、課題解決することでチーム全体で学びあい、属人化が減り、チームで成長できます」

ドライバーとは

「ドライバー役の説明をします。全員が担当しますからね。不安もありますよね。でも言語のスキルや知識がなくても大丈夫です。ナビゲーターの指示に従うだけですよ」

ナビゲーターとは

「次はナビゲーター役の説明をしますね。周りのナビゲーターがブレインとなってドライバーに指示を出します。全員の脳みそをフル回転させてくださいね」

モブセッション時間とインターバルの説明

「今回は2時間、モブワークしてみましょう。10分経ったら次の人にドライバーを交代します」

対象スコープとゴール

「企画、計画、開発、テスト、課題解決、レビュー、デプロイ、すべてが対象です。2時間のモブセッションのゴール設定をして、簡単に設計しましょう。ホワイトボードを活用してゴールイメージやプロセスやデザインを共有しましょう」

スコープの確認

「では、本日は開発タスクですね。ユーザー登録画面を完成させることにしましょうか。こんな画面を構築していきましょう。プログラマー以外の人もユーザー目線で貢献してくださいね」

モブワークのスタート

「ホワイトボードのラフデザインをもとに、早速スタートしましょう。10分が来たら、タイマーが交代を知らせてくれます。みなさんでドライバーを助けながら前進しましょう」

沈黙時のファシリテート

「ナビゲーターから指示が出なかったら、ドライバーは『どうすればいいの? 助けて~。何しよう』と常に実況アナウンサーのごとく発言してみましょう。ナビゲーターも頭にある言葉を表明、言語化してください。『考え中、分かった、分からない、貢献できねぇー』といった発言でもOKです。とにかく脳内を暴露する感覚で、いつもより気持ち多めに言葉を紡いでいきましょう」

テストコードのパスやコミットなど、小さいゴール達成の時

「テストコードをパスしましたね。全員で『ヤッター!』をご唱和お願いします。いっせいの『ヤッター!』。なんか自然と笑顔になりますね」

交代

「♪ジリリリリ。10分が経過しました。ドライバーの方はお疲れさまでした。ドライバーを次の人に交代してください。ドライバーだった人は、次はナビゲーターとなって貢献しましょう。はい、はい、はい! みなさん、もう次のインターバルの10分が始まっていますよ」

集中力が落ちてきた時

「集中力が下がってきましたね。全員の脳みそが明らかにスタックしてますね。ちょっと5分間、休憩しましょうか。ブドウ糖・カフェイン・チョコレートでリフレッシュしてくださいね」(モブセッションが終わるまで手順8~11を繰り返し)

最終インターバルの終了

「♪ジリリリリ。最後のインターバルもこれで終了です。みなさま、お疲れさまでした」

ふりかえり

「短くふりかえってみましょう。今回の良かったこと、悪かったこと、カイゼンすることなどを発言してみてください」

クロージングでハイタッチ

「初めてにしては、かなりのボリュームの開発ができたのではないでしょうか? かなり集中したので、疲労感と達成感が半端ないですよね! ハイタッチで締めくくりましょう。貢献、ありがとうございました」
