SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

注目スタートアップから学ぶ、ビジネスの課題を解決するAWSの活用術

カード業界の厳しいセキュリティと開発スピードをどう両立? Kyashに学ぶAWS活用

注目スタートアップから学ぶ、ビジネスの課題を解決するAWSの活用術 第5回

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 急成長中のスタートアップ企業は、多様なAWSサービスをどう選択・活用し、ビジネス課題を解決しているのでしょうか。本連載では、スタートアップ企業の中でエンジニアリングをリードしている担当者がそのアーキテクチャをひも解き、AWS活用術を紹介していきます。第5回はKyashでSREを担当する上原佑介氏が担当、テーマは「セキュリティ」です。記事の最後には、SAによるポイント解説もあります。(編集部)

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

はじめに

 株式会社KyashでSREを担当する上原佑介と申します。新卒でインフラエンジニアとしてサーバー構築・運用を経験したのち、Webサービスの運営企業を数社経て、Kyashへ入社しました。現在はサービス全体の信頼性向上を目指して、システム基盤や運用面の改善に取り組んでいます。

Kyashについて

 Kyashはスマートフォンアプリと連動するVisaカードです。

 コンビニなどから現金をチャージして使えるほか、手持ちのクレジットカードを紐付けて使用することもできます。支払った瞬間にプッシュ通知が届いて履歴や残高へ即時反映されるといった特長があり、Apple Pay、Google Pay、Visaのタッチ決済などの幅広い決済方法に対応しています。また、Kyashユーザー同士で残高を送り合えるため、割り勘のシーンでも活躍するサービスです。

Kyashのシステムに求められる要件

 Kyashの大部分はAWS上で構築されており、決済ネットワークと接続する箇所のみオンプレミスのデータセンターを利用しています。システムの特性上、カード業界のセキュリティ基準である「PCI DSS」を満たす必要があり、さまざまなセキュリティ対策や証跡の管理が求められます。

 サーバーやデータへのアクセス制御はもちろん、特にカード情報などの機密データや特権ユーザーの操作については「いつ・誰が・何をしたか」を漏れなく記録・保管・監視する必要があります。ログそのものの管理も重要で、ログ自体のアクセス制御や改ざん検知についてもルールが定められています。

 Kyashにとって、PCI DSS要件を満たせなくなることはビジネスの継続不可に直結するため、PCI DSS対応はSREチームにおける最重要ミッションの1つです。厳しいセキュリティ要件を満たしつつも、スピード感を持ってシステム開発に取り組める環境づくりが重要となってきます。

Kyashのシステム構成と運用上の課題

 サービス開始時からAWSが採用されており、Amazon S3、Amazon RDS、Amazon ECS、Amazon Simple Queue Service(SQS)などのサービスをはじめ、Amazon GuardDuty、Amazon Inspector、AWS WAFなどのセキュリティ関連サービスも活用しています。マイクロサービス構成のため管理対象のリソース数が多く、インフラ構成のほとんどはTerraformによるコード管理を行っています。

 直近で立ち上げたマイクロサービスはコンテナ(Amazon ECS)を利用しているものの、初期から残っているサービスはAmazon EC2上で構築されたものがほとんどです。また、IPアドレスを固定する要件などで Amazon ECS on EC2を利用することもあり、Amazon EC2のターミナル操作とアカウント管理は今後も必要となってきます。

 以前は各サーバーに開発者ごとのSSHユーザーを発行していましたが、メンバーが増減する度に対応が発生し、人的リソースの少ないスタートアップにおいては運用負荷が課題となっていました。

 上記の課題を解決するために、KyashではAWS Systems Managerを用いたSSHレス構成へ移行。運用負荷の低減と証跡管理のマネージド化を実現することができました(下図)。

次のページ
AWS Systems Manager、活用の工夫で運用をよりスムーズに

この記事は参考になりましたか?

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
注目スタートアップから学ぶ、ビジネスの課題を解決するAWSの活用術連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

塚田 朗弘(アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社)(ツカダ アキヒロ)

 アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 ソリューションアーキテクト。 2011年から生放送系ウェブサービスの開発を経験した後、2013年よりスタートアップ企業にJoin。CTOとしてモバイルアプリ、サーバサイド、AWS上のインフラ管理を担当しつつ、採用やチームマネジメントを行う。2015年8...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

上原 佑介(株式会社Kyash SRE)(ウエハラ ユウスケ)

 SIerでオンプレミスのインフラ構築を経験後、Webサービス運営企業を経て株式会社Kyashへ入社しました。SREチームとしてサービスの信頼性向上や運用改善に取り組むほか、プライベートではBotやWebツールの開発なども行っています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/12714 2020/08/24 11:00

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング