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「プロダクトとは何か」から考える、プロダクトマネージャーが身につけるべきスキル

プロダクトマネジメントの基本を学ぼう 第13回

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2020/11/04 11:00

 プロダクトを成功させるためにプロダクトマネージャーに求められるスキルは、発想力、計画力、実行力、仮説検証力、リスクコントロール力、チーム構築力の6つだ。第13回では、ビジョンを実現し、顧客価値と事業価値を最大化するプロダクトマネージャーになるために必要なこれらのスキルについて解説する。幅広い領域に精通している必要があり、何をどう学ぶべきか混乱しがちなプロダクトマネージャーだが、ここでは必要な「知識」と「スキル」を分けて考えることで、分かりやすく紹介する。本記事は第7回に記載したスキルセットを読者からのフィードバックを得て改良したものである。

目次
前回記事

第12回「一気通貫したプロダクトを作るための思考法、プロダクトの“4階層”とは?

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第7回「プロダクトマネージャーに必要な能力とは何か? スキルセットの全体像を解説

プロダクトの成功とは

 プロダクトマネージャーの仕事を一言で述べるならば、「プロダクトを成功させること」に尽きる。まずは、「プロダクトが成功している」とはどのような状態であるのかから考えてみよう。

 企業は、そしてプロダクトマネージャーは何のためにプロダクトを作っているだろうか。事業収益をあげるため、それとも社会貢献のためだろうか。本連載ではプロダクトの成功には、以下3点の要素が必要であると定義する。

  • ビジョンが実現されていること
  • ユーザー価値が最大化されていること
  • 事業収益が最大化されていること

ビジョンが実現されていること

 ビジョンとは、そのプロダクトを用いて作り出したい未来の世界観のことである。プロダクトのビジョンは企業のビジョンやミッションをもとに作られる。そして、プロダクトのビジョンこそが、そのプロダクトの存在理由である。いくらユーザー価値が大きく収益を作り出しているプロダクトであったとしても、ビジョンの実現に向かっていなければ成功しているとは言えないだろう。

 しかしながら、特に日本の企業ではプロダクトのビジョンを意識せずに仕事をしているプロダクトチームが多くあるのも事実である。あなたのチームでは、プロダクトの存在理由そのものであるビジョンをチーム全員が言えるだろうか? 「プロダクトによってどんな世界を作りたいのか」を自分ごととして全員が意識しているプロダクトチームは成功に近いだろう。

ユーザー価値が最大化されていること

 プロダクトは、ユーザーに価値があると感じてもらい、使い続けてもらうことが重要だ。プロダクトを開発する時には、プロダクトマネージャーはどのユーザーをターゲットにプロダクトを作るのかを定義する。多くの場合、はじめにビジョンで定義する世界観の一部となるユーザーに価値を提案し、仮説検証を繰り返しながら、ターゲットとするユーザー層を広げていくことになる。ビジョンだけを追って大きな絵を描き続けるのではなく、価値を提案するユーザーの選定と価値検証を通して、プロダクトが提供するユーザー価値の最大化を目指していくことが重要だ。

事業収益が最大化されていること

 継続してビジョンを実現し、ユーザーに価値を提供するためには収益を得なければならない。収益があることで優秀なチームを作り、必要な投資をすることができる。ビジョンを実現するまで継続してプロダクトを成長させるために、戦いの土俵となる市場を観察し、競合とは異なる戦略を打ち出してビジネスモデルを構築する必要がある。

バランス無しにプロダクトの成功はあらず

 ユーザー価値と事業収益は時には同時に満たすことが難しく、トレードオフの関係になり得る。例えば、広告だ。プロダクトに広告を載せることでプロダクトチームは収益を得ることができるが、ユーザーにとってそのプロダクトを使う上で不要な情報であるために、広告がないほうがユーザーの価値は高まるだろう。反対に、事業収益をあげるためには多くの広告枠を設けて、興味を持ちやすいような派手な広告を多く配信することで一時的には収益を最大化することができるが、派手な広告が多くあることによりユーザー価値が下がってしまう。このような場合にも、プロダクトマネージャーはユーザー価値と事業収益がトレードオフの関係ではなく、両立するところを探さなければならない。

 例えば、月額300円で広告を見ずに利用できるようにする機能を提供するとどうだろう。「広告を見ることでプロダクトを無料で使うことができる」もしくは「不要な広告を見ずにプロダクトを利用できる」というユーザー価値と事業収益が両立するようになる。このような、ユーザー価値と収益を両立する状態を作ることは難しいが、バランスの取れた解決策を見つけることがプロダクトマネージャーの腕の見せどころだ。

 また、ビジョンの実現も忘れてはならない。ユーザー価値と事業収益が向上しているとついプロダクトが安定していると感じてしまうが、本来目指すべきビジョンはどれだけ達成できているだろうか。ビジョンを実現するために常にビジョンとなる理想を目指すことを忘れないようにしたい。現実に最適化し過ぎていては、未来は作れない。ユーザー価値と事業収益のバランスが取れてプロダクトが安定しているとしても、ビジョンを達成するためには今のユーザーに価値を届けるだけではなく、ビジョン実現のためにはユーザーをも変化させたり、新しいセグメントにプロダクトの価値を届けたりすることが時には必要である。

 このようにビジョンの実現、ユーザー価値、収益の3要素はお互いに影響を及ぼし合う。どれか1つが欠如すると途端にプロダクトがほころび始めるため、この3つのバランスを意識しながらプロダクトを成長させていかなければならない。もちろん、小さくまとまるのではなく、この3つがそれぞれ強い成長を遂げた先でのバランスだ。そして、プロダクトマネージャーの仕事は、プロダクトを成功させるためにまずは顧客価値と事業収益のバランスが取れることを確認して、足場を固めた状態でビジョンを実現するプロダクトを目指していくのが良いだろう。


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著者プロフィール

  • 及川 卓也(オイカワ タクヤ)

     早稲田大学理工学部を卒業後、外資系コンピューターメーカーに就職。営業サポート、ソフトウエア開発、研究開発に従事し、その後、別の外資系企業にてOSの開発に携わる。その後、3社目となる外資系企業にてプロダクトマネージャーとエンジニアリングマネージャーとして勤務後、スタートアップを経て、独立。2019年...

  • 曽根原 春樹(ソネハラ ハルキ)

     Fortune500系外資企業に入社後、SE、カスタマーサポート、マーケティングなど様々な役職を日米で従事。その後シリコンバレーでプロダクトマネージャーに転身。B2B、B2C領域で米系大企業・スタートアップの双方でプロダクトの世界展開に携わる。現在はSmartNews社米国法人にて日本のスタートア...

  • 小城 久美子(コシロ クミコ)

     toC向けサービスを提供するWeb系企業に入社し、その後いくつかの企業で新規事業の立ち上げなどにエンジニア、スクラムマスターとして携わる。どう作るかより何を作るかに興味関心が移り、プロダクトオーナー/プロダクトマネージャーに転身。プロダクトマネジメントについてより深めるために、2019年よりTab...

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