2.VI ビジュアル・アイデンティティ(視覚の統一)
ビジュアル・アイデンティティ(以降、VI)とは、MIを視覚的に見える形にしたもの、ユーザーとのタッチポイントになりもっとも触れる機会が多いものを指す。たとえば企業ロゴやシンボル、コーポレートカラー、デザインガイドラインなど視覚的に表現されるものすべてが対象になる。
サービスや商品、作成する資料などそのすべてに会社の統一したイメージを持たせることで、その会社の目指したい方向性が視覚から伝わる。
3.BI ビヘイビア・アイデンティティ(行動の統一)
ビヘイビア・アイデンティティ(以降、BI)とは、会社としてのふるまいや行動、態度の統一を指す。つまり、理念やミッションをどう実現するか、その具体的な行動を統一することと言える。
どんなサービスや事業で、どのように戦略を立て、いつまでに実現するかといった、経営の目標を達成するための具体的なビジョンを、定量や定性で定義して実現するために行うものだ。そのために必要な組織構造はどういったものか、メンバーとどのようにコミュニケーションをとるかなど、さまざまな要素と絡む非常に大切な部分だと考えている。
いまの状況下で私が重要だと考えているのは、全社で行動を統一し、よりひとつになることだ。それを実現するためには、CIの中でもとくにBIがカギとなる時代になってきているように思う。それぞれの会社や個人の行動やふるまいを、会社に参加しているメンバーや参画している個人が理解、協力しながら目的に向かっていくことが大切なのではないかと感じている。
現在、ミッションやビジョンはあるが行動につなげられていないという会社も多いのではないではないだろうか。
会社はどのような「Why」を抱えていて、どんな「What」をもち、どのような「How(=BI)」で解決するのか。これらを明確に、かつ可視化し提言する。具体的な事業戦略に接続する。ミッションに応じて福利厚生や社内イベントを設計する。組織構造を変える方針を提案する――。考えるだけでもさまざまな打ち手がある。
私はこれらを取りまとめる役割を担うのは、デザイナーが適切なのではないかと考えている。デザイナーが本来発揮できる「発想する力」、「創造する力」、「形にする力」、「整理する力」というのは、CIの3要素を実現するためにもっとも必要な能力だと思うのだ。
これらを形にしていく作業は抽象度が高いためゴール設定も難しく、大変なことも多いが、それでも会社が前へと進んでいると実感できる瞬間に出会うとやりがいを感じるものだ。この楽しさを共有できるデザイナーが増えれば、取り組めることも増えるだろう。
今回ご紹介したコーポレート・アイデンティティ戦略は、難しいテーマではあるが、これらを具体に落とす「発想力」、「創造力」、「具現化力」、「構造化力」こそ、デザイナーが持つ力である。デザイナーがこのような取り組みに関わることで今までになかった新しい形の起点となり、また違った姿を実現していけるのではないだろうか。多くのデザイナーが自ら声をあげ、会社の中枢となるコーポレート・アイデンティティ戦略に携わってもらえたら幸いだ。