「識別符号」に該当しないケース
実は、認証に用いられるIDとパスワードが「識別符号」に該当しないから「不正アクセス行為」に該当しないというケースもあります。
例えば、生年月日や、マニュアルに記載された初期パスワードなどは同法上の「識別符号」ではないと考えられます。
同法における「識別符号」の定義は第2条第2項に定められています。引用は割愛しますが、端的にいえば、ユーザーIDとパスワード、生体認証、電子署名のことです。パスワードに関しては「当該アクセス管理者によってその内容をみだりに第三者に知らせてはならないものとされている符号」という要件があります。
生年月日はもちろん「第三者に知らせてはならない」ものではありません。マニュアルに記載された初期パスワードもマニュアルに記載されているのですから「第三者に知らせてはならない」ものとはいえないでしょう。
そして、「アクセス制御機能」(同第3項)は「識別符号」によって「制限の全部又は一部を解除」するものとされています。したがって、認証に用いられているIDとパスワードが法律上の「識別符号」に該当しないものであれば、そもそもそのログイン機能は法律上の「アクセス制御機能」に該当しないということになります。
したがって、ユーザーIDと生年月日で認証するWebサイトや、初期パスワードのままで放置されているWebサイトなどに対する攻撃は、厳密には「不正アクセス行為」には該当しないと考えられます。
認証機能がないからセーフというわけでもない
認証機能がないWebサイトだからといって、必ずしも、脆弱性を突いて情報を盗む行為がセーフとは限りません。
例えば、有名なACCS不正アクセス事件の判例があります。この事件は、セキュリティ研究者が、Webサイトに設置されたCGIプログラムの脆弱性を突いて非公開のファイルにアクセスしたものです。当該プログラムそのものには認証機能はありませんでしたが、管理用のFTPサーバーのアクセス制御機能を回避したとして有罪判決となっています。
技術者の視点では、プロトコルやプログラム単位で「アクセス制御機能」の有無を考えがちですが、司法的な視点は少し違っているという点に留意が必要です。
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