女性開発者が「はたらく」を楽しむ職場作りへ
約1200もの大手企業グループが利用している統合人事システム「COMPANY」の開発・提供を手掛ける会社Works Human Intelligence(以下、WHI)で、開発者として活躍する山田さんと大橋さん。いずれも上海勤務を経験し、フラッグシップ製品である人事システム「COMPANY」のバックエンドからインフラ寄りの開発に携わるなど、似た面もありながら、入社や所属歴は異なる先輩後輩コンビであり、かつては上司だった山田さんが現在は大橋さんの部下になるなど、多彩な関係性を育んできた仲だ。
そんな二人に共通するのが、WHIがMissionにも掲げる「はたらくを楽しくする」ことへの情熱だ。それは、テクノロジーカンパニーとして人事システム「COMPANY」を通じて社会課題を解決して「はたらく」を楽しくすることだけでなく、WHIで働く社員として「はたらく」を楽しくすることに他ならない。
WHIは社員1700名以上を擁し、うち29%がエンジニア、女性比率は34%。また、女性の管理職も積極的に登用している。
そんなWHIと「COMPANY」を広めるべく、DevRel(Developer Relations:開発者向けの広報)として、山田さんはQiitaでテックブログを綴ってきた。2021年にQiitaエンジニアフェスタ総合賞を受けるなど、注目度も高い発信者だ。その山田さんが、上司である大橋さんとともに、WHIエンジニアのさまざまな取り組みを通じて、「はたらく」を楽しめる理由と、女性だからこそ「はたらく」を楽しむヒントを提供したいという。
そもそも、女性エンジニアには「はたらきづらい」と感じたことがある人がどれくらいいるのだろうか。もともとマイノリティであり、「女性エンジニア」と形容されることそのものが、現状を表していると言っても過言ではない。
山田さんはTwitterのツイートを紹介し、「子どもの保護者のLINEに入れなかったり、送り迎えを珍しがられたりするために、父親が育児の現場に入っていきにくいと感じるように、女性も男性の多いエンジニアの世界に入っていきづらいと感じている。そもそも『女性エンジニア』という言葉もなくなることが望ましいのでは」と語る。
男女いずれにしても、自身がマイノリティであれば、それぞれの属性が個人にのしかかる。自分の言動がその属性を印象付けないかと身構えてしまうのだ。だからこそ、数を増やし、属性ではなく個でコミュニケーションできる場を作る必要がある。
それでは、実際にエンジニアとして働く女性の思い、状況はどのようなものなのか。WHIで女性エンジニアが座談会を行い、その結果が紹介された。
男女とも子育て中の悩みは「学び」の時間捻出
まず1つ目に掲げられたのは「なぜエンジニアをやっているのか」という質問。
「開発が面白い」「フレキシブルに仕事ができる」「なんとなく」「技術以外で求められるもの(コミュニケーション能力など)も多く向いている」「居心地がいい」「ものを作るのが好き」などのさまざまな答えが集まった。
山田さんも、文系だった学生時代にインターンでWHIを知り、ものを作るのが楽しくてエンジニアになったものの、出産・育児を経て、リモートワークやフレックスタイム、オンオフのメリハリなど、フレキシブルに働ける価値を実感するようになった。しかし、「エンジニアは自分で仕事をコントロールできるはずとも思いつつも、2つ目の問いとして、『学びの時間が作れているか』と言われれば疑問」と話す。
実際、アンケートからも「学びの時間が確保できない」と嘆く声が多く寄せられている。エンジニアにとって学びによるキャッチアップは死活問題。そこで、WHIの一部では「BUKATSU」という業務時間内で勉強できる取り組みを開始している。実際、その時間を使って罪悪感なく好きなものを開発したエンジニアもいるといい、大橋さんは「半ば強制的にそうした時間が確保されているのは、心理的安全性が高い」と評した。
しかしながら、そうした取り組みがない場合、とりわけ育児中は時短利用で業務に手一杯。勉強時間を取るのは難しく、たとえ取れたとしても周囲に対して罪悪感を抱きやすい。「勉強は業務時間外に」と思ったとしても、育児中はまとまった時間を確保するのは至難の業。学びたくないわけではなく、むしろ学ぶことが好きで、学びたいと思っている人がほとんどだ。そこで勉強会や講演などで刺激を受けることもあるが、「学び続けることが難しい」のが実情だろう。
それでは、母親のエンジニアはいつ勉強しているのだろうか。そして、それは母親に限った話なのだろうか。
そこで山田さんが見つけてきたツイートが紹介された。父親エンジニアが学習時間の捻出に悩んでいるというもの。どうやら学習時間の確保は、父母を問わず大きな課題のようだ。
山田さんは「子どもに尽くすことが子育てのゴールなのだろうか。やりたいことを追求することで、はたらく女性としての背中を見せられないか。子どもにも好きなことを見つけてもらいたいからこそ、自分もまた好きなことをするところを見せたい」と語るが、「本当はハードに夜まで働くことが求められているのだろうか。そう感じて復帰直後は異動も考えていた」と語るメンバーも居たと紹介した。
確かに周囲がバリバリ働く独身ばかりなら、そういう気持ちにもなるだろう。しかし、子どもがいる上司のもとなら、時短で働きやすくなり、男性の先輩や上司が育休をとった経験のある人なら、もっと男性の育休も取りやすくなるだろう。
そんなもやもやした思いがありながらも、山田さんは「でも、実は悩みを気軽に打ち明けているかも」と語る。Slackを眺めると、復帰直後の苦労話や、子どもの風邪への対応の苦労など、「うなずきすぎて首がもげそう」という反応もあり、「意外とお互いに共感がしている部分があるかも?」という気づきがあったそうだ。