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女性こそエンジニアになるべきでは? Works Human Intelligenceの女性開発者たちが「はたらく」を楽しむ理由を深堀り【デブサミウーマン】

【A-3】女性こそエンジニアになるべきだ? - 私たちがはたらくを楽しむ理由

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2022/01/14 12:00

 人事システム「COMPANY(カンパニー)」などのプロダクトを開発・提供する株式会社Works Human Intelligence。女性開発者も多く、「はたらく」を楽しんでいる方が多いという。そんなWHIを代表して、2003年に入社し、2021年Qiitaエンジニアフェスタ総合賞を受賞した2児の母の山田展子さん、その上司であり2012年に入社し、現在は社内の複数チームを束ねる開発リーダーである大橋悠樹さんが登壇。それぞれの「はたらく」を楽しむ理由を深堀りしながら、「学び」や「チームワーク」「1on1」「フィードバック」「オープンネス」「発信への思い」などの社内での取り組みを通じ、「女性こそエンジニアになるべきでは?」と提言するその理由を紹介する。

株式会社Works Human Intelligence Product Div.HR Core Dept. 山田展子氏
株式会社Works Human Intelligence Product Div.HR Core Dept. 山田展子氏
株式会社Works Human Intelligence Product Div.HR Core Dept. 大橋悠樹氏
株式会社Works Human Intelligence Product Div.HR Core Dept. 大橋悠樹氏

女性開発者が「はたらく」を楽しむ職場作りへ

 約1200もの大手企業グループが利用している統合人事システム「COMPANY」の開発・提供を手掛ける会社Works Human Intelligence(以下、WHI)で、開発者として活躍する山田さんと大橋さん。いずれも上海勤務を経験し、フラッグシップ製品である人事システム「COMPANY」のバックエンドからインフラ寄りの開発に携わるなど、似た面もありながら、入社や所属歴は異なる先輩後輩コンビであり、かつては上司だった山田さんが現在は大橋さんの部下になるなど、多彩な関係性を育んできた仲だ。

 そんな二人に共通するのが、WHIがMissionにも掲げる「はたらくを楽しくする」ことへの情熱だ。それは、テクノロジーカンパニーとして人事システム「COMPANY」を通じて社会課題を解決して「はたらく」を楽しくすることだけでなく、WHIで働く社員として「はたらく」を楽しくすることに他ならない。

 WHIは社員1700名以上を擁し、うち29%がエンジニア、女性比率は34%。また、女性の管理職も積極的に登用している。

 そんなWHIと「COMPANY」を広めるべく、DevRel(Developer Relations:開発者向けの広報)として、山田さんはQiitaでテックブログを綴ってきた。2021年にQiitaエンジニアフェスタ総合賞を受けるなど、注目度も高い発信者だ。その山田さんが、上司である大橋さんとともに、WHIエンジニアのさまざまな取り組みを通じて、「はたらく」を楽しめる理由と、女性だからこそ「はたらく」を楽しむヒントを提供したいという。

 そもそも、女性エンジニアには「はたらきづらい」と感じたことがある人がどれくらいいるのだろうか。もともとマイノリティであり、「女性エンジニア」と形容されることそのものが、現状を表していると言っても過言ではない。

 山田さんはTwitterのツイートを紹介し、「子どもの保護者のLINEに入れなかったり、送り迎えを珍しがられたりするために、父親が育児の現場に入っていきにくいと感じるように、女性も男性の多いエンジニアの世界に入っていきづらいと感じている。そもそも『女性エンジニア』という言葉もなくなることが望ましいのでは」と語る。

 男女いずれにしても、自身がマイノリティであれば、それぞれの属性が個人にのしかかる。自分の言動がその属性を印象付けないかと身構えてしまうのだ。だからこそ、数を増やし、属性ではなく個でコミュニケーションできる場を作る必要がある。

 それでは、実際にエンジニアとして働く女性の思い、状況はどのようなものなのか。WHIで女性エンジニアが座談会を行い、その結果が紹介された。

WHIの女性エンジニアにも聞いてみた
WHIの女性エンジニアにも聞いてみた

男女とも子育て中の悩みは「学び」の時間捻出

 まず1つ目に掲げられたのは「なぜエンジニアをやっているのか」という質問。

 「開発が面白い」「フレキシブルに仕事ができる」「なんとなく」「技術以外で求められるもの(コミュニケーション能力など)も多く向いている」「居心地がいい」「ものを作るのが好き」などのさまざまな答えが集まった。

 山田さんも、文系だった学生時代にインターンでWHIを知り、ものを作るのが楽しくてエンジニアになったものの、出産・育児を経て、リモートワークやフレックスタイム、オンオフのメリハリなど、フレキシブルに働ける価値を実感するようになった。しかし、「エンジニアは自分で仕事をコントロールできるはずとも思いつつも、2つ目の問いとして、『学びの時間が作れているか』と言われれば疑問」と話す。

 実際、アンケートからも「学びの時間が確保できない」と嘆く声が多く寄せられている。エンジニアにとって学びによるキャッチアップは死活問題。そこで、WHIの一部では「BUKATSU」という業務時間内で勉強できる取り組みを開始している。実際、その時間を使って罪悪感なく好きなものを開発したエンジニアもいるといい、大橋さんは「半ば強制的にそうした時間が確保されているのは、心理的安全性が高い」と評した。

 しかしながら、そうした取り組みがない場合、とりわけ育児中は時短利用で業務に手一杯。勉強時間を取るのは難しく、たとえ取れたとしても周囲に対して罪悪感を抱きやすい。「勉強は業務時間外に」と思ったとしても、育児中はまとまった時間を確保するのは至難の業。学びたくないわけではなく、むしろ学ぶことが好きで、学びたいと思っている人がほとんどだ。そこで勉強会や講演などで刺激を受けることもあるが、「学び続けることが難しい」のが実情だろう。

 それでは、母親のエンジニアはいつ勉強しているのだろうか。そして、それは母親に限った話なのだろうか。

 そこで山田さんが見つけてきたツイートが紹介された。父親エンジニアが学習時間の捻出に悩んでいるというもの。どうやら学習時間の確保は、父母を問わず大きな課題のようだ。

 山田さんは「子どもに尽くすことが子育てのゴールなのだろうか。やりたいことを追求することで、はたらく女性としての背中を見せられないか。子どもにも好きなことを見つけてもらいたいからこそ、自分もまた好きなことをするところを見せたい」と語るが、「本当はハードに夜まで働くことが求められているのだろうか。そう感じて復帰直後は異動も考えていた」と語るメンバーも居たと紹介した。

 確かに周囲がバリバリ働く独身ばかりなら、そういう気持ちにもなるだろう。しかし、子どもがいる上司のもとなら、時短で働きやすくなり、男性の先輩や上司が育休をとった経験のある人なら、もっと男性の育休も取りやすくなるだろう。

 そんなもやもやした思いがありながらも、山田さんは「でも、実は悩みを気軽に打ち明けているかも」と語る。Slackを眺めると、復帰直後の苦労話や、子どもの風邪への対応の苦労など、「うなずきすぎて首がもげそう」という反応もあり、「意外とお互いに共感がしている部分があるかも?」という気づきがあったそうだ。

違いを尊重できる文化が「違い」を「強み」にする

 WHI内で山田さんが「はたらく」を楽しんでいる実感を得られた理由として、3つの仮説をあげた。1つ目は、先輩・後輩や上司・部下の関係性による遠慮や忖度がないこと。2つ目は、役職よりも「自分の強み」を認められている実感があること。そして3つ目は、属性に関わらず、悩みを気軽に打ち明けることができる心理的安全性が担保されていることだ。

 そうした結果、尊重し合う文化が醸成され、例えば子育てメンバーの「一歩離れた視点」がトラブル時に役に立ったり、みんなが同じ時間に確実に働けるわけではないことから、一緒の時間を有意義に使うマインドや工夫が生まれたりということも起きてきた。

 そもそもエンジニアは見た目も年齢も関係ない。技術が相手ゆえに、「学び続けられるかどうか」が重要であり、それは男女に共通する課題だ。つまり、エンジニアの仕事において、「母親」であることはただの「個性」ではないかというわけだ。性別、年齢、経験など異なることが強みとなり、新しい視点を活かせるようになるには、率直な気持ちを打ち明けられているかどうかが大事である。

 大橋さんは、こうした考えから、楽しく働けているかどうかは「自分の状況を」強みにできているかどうかであり、エンジニアの仕事は女性のライフインベントと共存し、その経験を強みにできるという意味で最適な職種なのではないかという考えに思い至った。

 もちろん、エンジニアは実力社会であり、育児との兼ね合いでの評価に対して葛藤がないわけではない。それでも「はたらく」を楽しむことができているのは、仲間に弱みまで気軽に打ち明けられる土壌があるからではないかというわけだ。それはリモートでも同様であり、Slackのリアクションにも現れている。ネガティブなことを投稿した際でも、それを受け止めて共感してくれるリアクションが寄せられるそうだ。

 制度としても、フレックス勤務で中抜けができ、夕食やお風呂、寝かしつけができたり、社内託児所があったり、育休からの復帰ボーナス、3歳までの休業可能、小学校卒業までの時短可能など充実しているのも特徴だ。しかし、山田さんは「制度より必要なのは、みんなの理解」と語り、制度が絵に描いた餅にならないことが大切だという。それは社内Slackで父親社員も育児の悩み投稿を普通に行い、子どもの体調不良の際には「お大事に」のリアクションが多数つくことからも伺える。

 それでは「女性として居心地の悪さを感じたことがあるか」という質問についてはどうだろうか。「時短していることに対してならある」「みんなバリバリなのに自分だけ中途半端で引け目を感じる」という人も一部いたが、女性としての居心地の悪さは「あまり感じていない」という結果になった。

 こうした結果を受け、大橋さんは「エンジニアという職種は女性のライフイベントと相性は良いが、それぞれの人の環境や状態の違いをく認め合い、その違いを強みにできる土壌・空気があってこそ成り立つ」とまとめ、「母親である女性が働きやすい職場は、みんなにとっても自分らしく働ける職場なのではないか」と語った。

 それでは、その土壌・空気はどのように作ればいいのか。まず重要なのは、「違い」を認め合うことが第一歩だろう。「違い」は弱みと思われがちだが、強みにもなりうる。強みに変えるためには、「弱み」と思われるものでも悩みや不安・不満などを打ち明けていくことが大切だという。それがエンジニアみんなの「はたらくを楽しむ」につながっていく。つまり、これまでと「違う」部分が多い女性こそ、「エンジニアになるべきではないか」という結論に至ったわけだ。

共通の「楽しさ」が、違う同士の「つながり」を生む

 それでは具体的にWHIでどのような取り組みが行われているのか。まず、エンジニアを悩ます「学び」については、楽しく学び続けるためのコミュニティ「Dojo」が存在する。50以上の勉強会が生まれており、毎日開催されている。現在はバーチャルオフィスサービスoViceを試用中であり、他部署からでも一緒に画面をシェアして学び、飛び入り参加もできる。

 そして、顧客からの問い合わせやトラブルシュートに対して、新人もベテランも混在のペアプロ形式で対応する「ぺあっと」を平日毎日実施しており、新人だけでなくベテランにとっても新しい気づきが生まれる。

 「もくもくタイム」では、オンラインでつないで黙々と作業をしたり、問い合わせを見たり、チケットを見たりする時間だ。顔を見せることも不要だが、そこでもなんらかの「つながり」を感じられるという。

 大橋さんは「リモートワークになって、なかなか相談や雑談の時間が取れずにいたが、これらを始めてかなり活発にコミュニケーションをとるようになった。今ではコロナ禍前よりも話す機会が増えたかもしれない」と評した。

 「Radio」では公開生放送で、毎日30分程度、画面共有でライブ作業を行っている。「こんなふうにやっているんだ」という暗黙知を共有することが目的で、誰でも視聴できるようになっている。

 山田さんは「リモートワークだろうが、あらゆる手を使って伝えることが大事。文書化や見える化はまだまだながら、これまで背中を見て学べと言われてきた部分を、リモートワーク時代だからこその手法で伝えていきたい。そうした柔軟さがある会社ほど、多様性にも優しいのではないか」と語った。

 他にも、集まって本を読む「あつ読み」や、毎週行われる1on1やフィードバックなどでも、できるだけ気軽にコミュニケーションを取る方法が模索されている。そこでは、ネガティブなこともあえてポジティブにひっくり返して見てみるという、大橋さんのとんちが発揮されている。

 さらに、毎日・毎週行っているとどうしても形骸化しがちだが、楽しくやれているのか自問するのがポイントだ。例えば、週次の振り返りでやって楽しかったことと楽しくなかったことを色分けしてみて、「どうしたら楽しくできるのか」を考える会は、とても盛り上がった。

WHIの制度
WHIの制度

状況や思いをオープンにして「自分らしく」働く

 また、何でもオープンにする試みは進んでおり、とりわけSlackの力が大きいようだ。オープンになることで正直になり、ちょっと言いにくいことでも絵文字で伝えられるのもメリットだ。WHIではIntegrityという「ウソを吐かなくてもいい文化」を推奨しており、そうした文化・空気を作ることもマネージャーの仕事だという。

 そして、昨今始めたばかりなのが、「分報times」だ。ただし、仕組みを作るだけでなく、一人ひとりが工夫やコツを持ち寄って、誰もがやりたくなる雰囲気作りが重要であり、「愚痴こそ書くべき」だという。他にも、育児に関する何でもチャンネル「z_papamama」や、サンキューを伝えるチャンネルなども用意されている。

 また、外向けに開始されたのが「テックブログ部」だ。アウトプットも業務時間として公認され、社内アワードなども用意されている。

 大橋さんは「もちろんまだまだ道半ばであり、ゴールを目指して続けていくための仕掛けは模索し続けなければならないと感じている」と語り、いずれにも共通する秘訣として「Work Fun=楽しむこと」をあげた。女性であること、エンジニアであることの両方を楽しもうということであり、それはすなわち男性であること、エンジニアであることを楽しむことと同義なわけだ。

 そして、冒頭で紹介された「学習時間を捻出したいという男性エンジニア」への答えとして、山田さんは「捻出するという発想ではなく、勉強時間は業務時間。業務時間外は育児という人生最大の勉強をしていると捉えればいいのではないか」と語る。そのうえで、「自分で選ぶ、選んで良いという自信が大切」と強調した。

 最後に、山田さんは「世の開発者から良い影響を受け、与えていきたい。鍛錬も楽しめ、自分らしく働ける環境こそ、『はたらくを楽しく』につなげられる」と改めて語り、大橋さんも「開発を楽しくしていきたい。さまざまな取り組みや考え方を紹介したが、そこから何かをヒントに女性を含むすべてのエンジニアがもっと『はたらく』を楽しめるきっかけになれば」と語り、セッションを終えた。

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著者プロフィール

  • 伊藤 真美(イトウ マミ)

    エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

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