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Developers Summit 2022 レポート(AD)

「業界一解像度の高い開発チーム」でフィットネス業界の未来を変える!【デブサミ2022】

【17-D-7】フィットネスの未来を変える!顧客と伴走するバーティカルSaaSのプロダクト戦略の話

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 SaaSサービスには、業界・業種に関係なく特定の業務で利用される「ホリゾンタル(Horizontal)SaaS」と、特定の業界・業種に特化した機能を提供する「バーティカル(Vertical)SaaS」が存在する。これまでビジネス向けSaaSの市場においては、前者のHorizontal SaaSがもっぱら脚光を浴びてきたが、近年になり業界特化型のVertical SaaSも注目を集めるようになってきた。そんな中、フィットネスクラブやジムといった「ウェルネス業界」に特化したSaaSサービスで急成長を遂げているのが、株式会社hacomonoだ。同社は今、どんなビジョンや戦略の下にVertical SaaSのサービス開発に挑んでいるのか。

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株式会社hacomono 取締役CTO 工藤真氏(左上)、同社 岩貞智氏(右下)
株式会社hacomono 取締役CTO 工藤真氏(左上)、同社 岩貞智氏(右下)

業界や顧客に対する「解像度」を高めるための開発チーム作り

 2013年に設立されたhacomonoは、フィットネスクラブやジム、ダンススタジオなどのいわゆる「ウェルネス産業」に特化したSaaSサービスを提供する企業。「ウェルネス業界を、新次元へ」というミッションを掲げ、デジタル化が比較的遅れているウェルネス業界の企業にオンラインサービスを提供することで産業構造に変革をもたらすことを目指している。

 同社のサービスは会員管理、予約、決済システムを中心に、ウェルネス業界で必要とされるさまざまな業務機能を提供しており、2021年12月末時点で既に1000店舗以上に導入されているという。現在もサービス品質を高めながら顧客の要望に応えるべく、開発に余念がない。

 なお、取締役CTOを務める工藤真氏によれば、同社ではサービス開発において以下の3つの大事なテーマを掲げているという。

  1. 業界一解像度の高い開発チームへ
  2. 特定の課題・領域にフォーカスして作り込み
  3. 業界にとってのAll-in-one SaaSを目指す

 1つ目に掲げる「解像度の高い開発チーム」とは、たとえ開発者でも、ただ顧客から言われた通りのものを作るのではなく、業界の事情やビジネス慣習、業務知識などに深く精通し、業界・業務に対する「解像度」を高めた上で、ものづくりに臨む必要性を説いている。こうした姿勢の重要性について、工藤氏は次のように述べる。

 「ウェルネス業界と一口に言っても、業種・業態や個々の企業・店舗ごとに多種多様な要件が存在します。これらが個社要件なのか、業界固有の課題なのか、あるいは汎用的な課題なのか、エンジニア自身が判断できずに場当たり的に対応してしまうと、無駄な機能だらけで拡張性のないシステムが出来上がってしまいます。こうした事態を避けるには、言われたものをただ作るだけでなく、開発チームが自ら業界について深く知り、仮説を立てて自走できるようになる必要があります」(工藤氏)

 こうして開発チームが業界や顧客に対する解像度を上げられるように、同社ではさまざまな工夫を凝らしている。例えば、営業担当者やCS担当者とともに顧客を訪問してヒアリングを行ったり、店舗を見学したりといった場を積極的に設けている。

 また開発チームメンバーが自らジムやエステを積極的に利用して業界事情を肌で感じられるよう、利用補助制度を設けたり、社内でウェルネス関連のセミナーやイベントを開催して知識を深められる場を提供したりしている。さらには、全社的に「ウィズ・カスタマー(With Customer)」というバリューを掲げ、顧客に真摯に向き合い伴走するカルチャーを社内に根付かせるべく、従業員同士で顧客に向き合う活動を称賛し合い、社内で表彰するといった活動も行っている。

顧客に向き合う「ウィズ・カスタマー」のバリューを重視
顧客に向き合う「ウィズ・カスタマー」のバリューを重視

 「もちろん、こうした活動は開発チーム単独でできるわけではなく、日ごろから業界との関係性を作ってくれている他チームの活動があってこそです。そのため、業界の皆さま・他チームへのリスペクトも常に大事にするよう心掛けています」(工藤氏)

セミナーのご案内

 3月23日(水)から5週連続で、hacomonoの「Think Bic.」を語りつくすオンラインイベントが開催されます。開発チームをはじめ各チームのキーマンが登壇し、これからのhacomonoについて熱く語ります。ぜひご参加ください。

特定の課題・領域にフォーカスして開発リソースを投入

 ただし、いくら解像度を高めていっても、顧客が挙げる要件にただ順番に応えていくだけでは、いつまでたっても「コアな課題」に行き着くことができず、結果的に「機能はてんこ盛りだがそのほとんどが現場で使われない」というシステムが出来上がってしまう。そうした事態を避け、顧客の満足度を向上させるとともに、対外的なアピール力を高めるためにも重要になってくるのが、先に挙げた2つ目のテーマ「特定の課題・領域にフォーカスして作り込み」だ。

 「特定の課題・領域にフォーカスして開発リソースを集中させた方が課題をより深く理解でき、結果的に『深い』プロダクトが出来上がります。またリリースノートやプレスリリースなどで対外的に発表する場合も、特定の課題にフォーカスした機能リリースのほうがより訴求力が高くなります」(工藤氏)

 例えば同社が2021年3月にリリースしたアンケート機能は、もともと開発の優先度はさほど高くなかった。しかし、とあるオンラインフィットネス企業へのヒアリングの結果から非常に高いニーズがあることがわかり、急きょ優先度を上げて実装した。しかも単に会員の入退会時にその理由を尋ねるアンケート機能だけでなく、会員登録時、入会時、予約時、チェックイン時などさまざまなシーンでアンケートを取得可能にしたことで「会員とのコミュニケーションを密にするための機能」を実現し、高い顧客満足度につながったという。

 その一方で「機能を個別に提供するだけでは顧客に十分な価値を提供できない」とも工藤氏は語る。

 「ウェルネス業界だけを見渡してみても、システムに求められる要件は実に多種多様で、まだまだ私たちのサービスですべてを網羅することはできていません。一方、海外の業界特化型SaaSのトレンドに目を向けると、業界で求められる機能をワンストップですべて提供することをうたったサービスが伸びています」(工藤氏)

 例えば、理容店向けに特化した米国のSaaSサービス「Squire」は、予約や顧客管理だけにとどまらず、スタッフ管理やマーケティング、売上管理といった店舗運営に必要な機能をすべて提供することでユーザー数を伸ばしている。工藤氏は「これからの業界特化型SaaSは、Squireのようにその業界で必要とされる機能をすべて取りそろえた『All-in-one SaaS』の流れに傾いていくと見ています。お客さまにとっては、機能ごとに個別のSaaSを使い分けるより、オールインワンの方が優れたユーザー体験を提供できますし、価格面でも高い競争力を持てると考えています」と今後の展望を語った。

All-in-one SaaSによる顧客とのWin-Win関係を目指す
All-in-one SaaSによる顧客とのWin-Win関係を目指す

ハードウェアも含めたIoTソリューションの開発も手掛ける

 こうした「オールインワンサービス」の戦略の下、hacomonoでは現在Webサービスだけでなく、ハードウェアも含めたIoTソリューションの企画・開発にも取り組んでいる。同社初のIoTエンジニアとして2021年7月に入社した岩貞智氏の下でIoT開発チームを立ち上げ、これまでフィットネスクラブやジムなどの施設で利用できる「入退館システム」をはじめとするIoTソリューションの開発を進めてきた。

 そもそも入退館システムの開発を手掛けるようになったきっかけは、とある顧客からのクレームだったという。

 「hacomonoのシステムとサードパーティー製のスマートキー製品を組み合わせた入退館システムを導入したお客さまから『会員が店舗に入れない』『会員全員に入館のための操作説明を行わなければならず、hacomonoを入れた意味がない』とお叱りを受けました。当時私はまだ入社して1週間足らずだったのですが、早急に対応策を考える必要性に迫られました」(岩貞氏)

 もともと導入していたサードパーティー製のスマートキー製品は、ドアロック装置とスマートフォンをBluetoothの無線通信で連携させることでドアを開錠する仕組みになっていた。しかしこれを利用するには、まずスマートフォンを取り出してアプリを起動し、Bluetoothのペアリングを行い、さらに開錠ボタンを押すといったように、多くの操作を行う必要があった。またその場で複数人が同時に開錠操作を行おうとすると、誰が開錠したのかわからなくなってしまうという問題もあった。

 さらには、hacomonoのアプリ登録とスマートキーアプリの登録を別々に行わなくてはならず、ウェルネス業界に多い年配の会員にとってはそれだけで離脱につながる要因となっていた。そこでこれらの問題を解決するために、hacomonoのバーチャル会員証として発行するQRコードリーダーで解錠可能な「QR入退館システム」の開発を行う。その仕組みは次の通りだ。

 施設を利用する会員には、スマートフォン上で発行可能なメンバー用のQRを表示する。会員が施設を利用する際は、そのQRコードを入口に設置されたQRコードリーダーに読み取らせることで開錠できる。至ってシンプルではあるが、スマートフォン上で発行可能であるため物理的にスタッフと接する必要がなく、入会から利用までスタッフレスで実現することが可能となる。この一連の仕組みを開発するために、QRコードリーダーデバイスと電気錠、そしてそれらを制御するRaspberry Piを手に入れ、さまざまな試行錯誤を繰り返した後、開発開始からわずか3カ月後には顧客先への導入と運用開始へとこぎ着けた。

開発開始から2カ月半後にたどり着いたQR入退館システムの構成
開発開始から2カ月半後にたどり着いたQR入退館システムの構成

 コロナ禍において、フィットネス施設などの間で「スタッフレス化」「24時間営業」が広がる中、この自動開錠システムは大きな反響を呼び、現在開発の手が足りなくなるぐらい数多くの引き合いが来ているという。

 「QR入退室システムの仕組み自体は極めてシンプルで、個々の技術要素も枯れたものしか利用していません。しかしお客さまの課題を高い解像度で理解することで新たなUXを提供し、高い価値を生み出すことができました。こうしたIoTソリューション以外にも、弊社では今後さらに多様な領域にチャレンジしていきたいと考えていますので、われこそはと思う方はぜひ弊社にジョインしてともに業界を変革していきましょう」(岩貞氏)

セミナーのご案内

 3月23日(水)から5週連続で、hacomonoの「Think Bic.」を語りつくすオンラインイベントが開催されます。開発チームをはじめ各チームのキーマンが登壇し、これからのhacomonoについて熱く語ります。ぜひご参加ください。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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