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イラストでわかる! 今日からはじめるスクラム

スクラムを使いこなそう! スプリントレビュー・レトロスペクティブ・リファインメントとは

イラストでわかる! 今日からはじめるスクラム 第4回

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 スクラムは、コードを見て学ぶような具体的な開発手法ではなく、コミュニケーションや情報共有に「型」をつくることで仕事の流れを円滑にし、プロダクトの成長を加速する、いわば仕事のフレームワークです。この連載では、なぜスクラムを導入すると仕事が進みやすくなるのかを、イラストをつかってわかりやすく説明していきます。第4回では、スクラムイベントのコツ、スクラムのアンチパターンとその打開策など、さらにスクラムを上手に使いこなしていくための方法について解説します。

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はじめに

 前回は、スクラムの役割を解説しました。それぞれの役割を理解することで、チームにおけるスクラムマスター、PO、開発者の責任の範囲やポジションについて明確化しました。

 第4回では、さらにスクラムを上手に使いこなしていくための方法として、スクラムイベントのコツ、スクラムのアンチパターンとその打開策など解説していきます。

スプリントレビューをやってみよう

 スクラムにおけるイベントの最後から2番目に、スプリントの成果物を関係者全員でレビューする場があります。それがスプリントレビューです。

 できたものを確認するという点で受け入れテストと似た印象もあるかもしれませんが、機能すべてが出来上がってから確認するのではなく、そのスプリントでできたものをレビューするという点に特徴があります。

 スプリントごとにレビューを行う以外にも、サービスの方向性を確認する、今回の機能を追加したことでサービス全体がどうなったかについて話し合うといった場にもなります。

スプリントレビューに必要な準備

「完成」したものを用意する

 スプリントレビューでは「完成したものだけを見せる」というルールがあります。ぱっと見は動くけどテストを通ってない、または動かないところもあるような、未完成のものはスプリントレビューに出すことはNGです。

 ところで、「完成」とはなんでしょうか。テストさえ通っていれば完成、ユーザーにむけてリリースして初めて完成など、同じチームでも人によって捉え方が異なるかもしれません。そのため、チームメンバーと認識をあわせるために完成状態を文章で定義します。これをスクラムでは「完成の定義」と呼びます。

 この完成の定義は、必要に応じて、またチームの能力向上などによっても、内容をより充実させ進化させていくものとなります。

 うさぎくんのチームでは、まずは完成の定義を以下のように設定しました。

  • 開発環境または本番環境で動作すること
  • 単体テストが書かれていること
  • 自動テストを通過していること
  • 開発者2人以上のPR承認があること

 まだ開発途中の機能もありますが、スプリントレビューでは、この「完成の定義」を満たした機能を見せることに決めました。

関係者をアサインする

 スプリントレビューでは、スクラムチームだけでなく、今回のレビュー対象に関係があるステークホルダーも招集します。

 例えば、うさぎくんチームが今回スプリントレビューで出す機能は、カスタマーサポートから問い合わせが来る可能性があります。ほか、新機能では別チームから提供されたAPIを使っているのですが、うさぎくんチームでは初めて使うAPIなので懸念点なども聞きたいです。

 そのため、今回のスプリントレビューでは以下メンバーを招集することにしました。

  • スクラムチーム(うさぎくんたちのチームとPO)
  • カスタマーサポートチームのリーダー
  • APIを提供してくれたチームのエンジニア
  • うさぎくんの開発チームのマネージャー

 ほかにも、レビュー対象の機能に関心がある人や、可能なら実際のユーザーを呼ぶのもいいかもしれません。関係者が多くなるほど予定調整が難しくなりますが、スクラムイベントは定期的に行うことに意義があるため、スプリントレビューもできるかぎり日時を変えずに行います。

 なるべく早めに関係者に声をかけ、事前に予定調整してもらうことをお勧めします。

スプリントレビューの準備と実施

 まずは、スプリントレビューにむけて、アジェンダをつくりましょう。

 スプリントレビューでは、そのスプリントで完成したものをデモし、それに対するディスカッションを行えるようにしておきます。完成したもののデモ、このスプリントで見つかった改善点や環境の変化をふまえて、今後どうしていくかを考え、プロダクトバックログを更新して終了します。

 以上をふまえてアジェンダをつくっておくとスムーズに進みやすいです。

 うさぎくんのチームでは、自社製品を販売するためのECサイトを開発しているという前提でアジェンダを書いてみます。

スプリントレビューのアジェンダ例とそのポイント

スプリントゴール

 気になった項目を後で見返すことができる

このスプリントで完成した機能

  • お気に入り機能
  • 閲覧履歴機能
完成した機能のデモ手順

お気に入り機能は、開発環境で以下を行う。

  1. 一覧から任意の項目を選択
  2. 詳細画面のハートマークをクリック
  3. お気に入り一覧に、該当の項目が追加される
  4. ハートマークをもう一度クリックすると、お気に入り一覧から削除される

閲覧履歴機能は、開発環境で以下を行う。

  1. 一覧から任意の項目を選択。別の項目で2、3回繰り返す
  2. 閲覧履歴一覧に、見た項目が表示される
  3. 履歴削除を押すと、確認ダイアログがでて閲覧履歴がすべて削除される

お気に入り機能・閲覧履歴機能のポイント

 スクラムチームのだれがデモを行うか、または参加者全員が手元でデモを行うのかなどは事前に決めておきます。デモ手順は明記しておくと当日スムーズです。

フィードバック

 今回の機能に対するフィードバックと、プロダクト全体に対するフィードバックの2つがある。

フィードバックのポイント

 競合がこういう機能をだしてきた、市場でこのような変化があったといった情報を参加者から集めます。

プロダクトゴールに対する進捗確認

例としては、次の通り。

プロダクトゴール:繰り返し使いたくなるような購入体験を提供することで、店舗とならぶ販売経路になるようなECサイトを確立する。

進捗状態:購入ユーザーの再訪率は現在14%。30%を目指す。

進捗確認のポイント

 プロダクトゴールは、プロダクトが目指す中期的なゴールです。プロダクトビジョン実現にむけたステップを、スプリントゴールとして設定します。

プロダクトバックログの更新

 レビュー内容をふまえて、プロダクトバックログにアイテムを追加したり、並び替えたりします。

満足度の確認

 スプリントレビューの締めくくりとして、参加者にスプリントレビューに対する満足度を聞くことをおすすめします。

満足確認のポイント

 満足度の測り方として、ファイブフィンガーという方法をお勧めします。このスクラムイベントに対する満足度を、5は大満足、1は不満というかたちで5段階評価します。手を使った表現でもいいし、オンラインであればチャット欄に書き込んでもらってもいいでしょう。

 スプリントレビューは、まず関係者が集まってくれたことへの感謝から始めましょう。明るく和やかな雰囲気でやることがスプリントレビューを成功するためのコツです。

 初めのうちは、できた機能やプロダクトへのフィードバックが、ステークホルダーからあまり出てこないこともあります。その場合は、この機能がもし大失敗したらどうなるか、大成功したらどうなるかというような極端な想像を膨らませてみることから始まると、ディスカッションが生まれやすいかもしれません。

 または、10分ほど自由にサービスをつかってもらって、スプリントの成果だけでなく、サービス全体へのフィードバックをもらうのもよいでしょう。悲しいことですが、サービスをほとんど触ったことがないようなステークホルダーが存在するケースもあるかもしれません。

 スプリントレビューは、スプリントの成果を検査するだけではなく、スクラムチームとステークホルダー全員がプロダクトを今後どうしていくかを考える場です。

 ディスカッションを通じてプロダクトの成長につながるようなフィードバックがたくさん出てくるような、スクラムイベントの中でも一番盛り上がるイベントになるよう意識しましょう。

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スプリントレトロスペクティブ

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この記事の著者

西野 香織(ニフティ株式会社)(ニシノ カオリ)

 ニフティ株式会社のN1! という制度で、スクラムエバンジェリストを担当しています。アプリチームのスクラムマスターをやりながら、スクラムについて社内外で説明したり、社内のスクラム導入を支援したりしています。A-CSM所持。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/18361 2023/10/30 11:00

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