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Modern C++入門

コンテナに正規表現も! Modern C++に必須の基本ライブラリ

第8回 ベーシックな機能はもはや自分で書かなくていい

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ファイルシステムstd::filesystem[C++17]

 ディレクトリやファイルの情報は、OSのシステムコールを使ってライブラリを自作するなどしていましたが、C++ 17でstd::filesystemが導入されて、ファイルシステム操作の機能が標準で使えるようになったんですね。あのとき苦労していたのがウソみたいです。

 std::filesystemでは、ファイルやディレクトリ(フォルダ)を「エンティティ」という概念で扱います。以下は、カレントディレクトリを取得する例です。

リスト:filesystem.cpp
#include <filesystem>
…略…
cout << filesystem::current_path().string() << endl;
// 実行結果:/Users/nao/Documents/…/library

 std::filesystemを使うには、ヘッダファイル<filesystem>をインクルードします。current_path関数は、カレントディレクトリを取得して返しますが、返すのはpathクラスのインスタンスです。pathクラスは、文字通りファイルシステムのパスを抽象化したものなので、文字列表記を取得するためにstring関数を呼び出しています。ちなみに、current_path関数の戻り値をそのままストリームに出力すると、ダブルクォートで囲まれた形式となります。

 次は、意外と面倒な、カレントディレクトリの中身を取得する例です。

リスト:filesystem.cpp
for(const filesystem::directory_entry &i:filesystem::directory_iterator(".")) {
    cout << i.path().filename().string() << ": " << i.file_size() << endl;
}
// 実行結果:filesystem.cpp: 322 …

 ここでは2つのクラスが使われています。directory_entryは、ディレクトリ内の要素を表すエンティティのクラスで、directory_iteratorはディレクトリ内を走査するイテレータのクラスです。つまり、この2つを組み合わせると、ディレクトリの中を走査し、ファイルやディレクトリを取得できるというわけです。directory_entryのインスタンスからは、path関数でパスの情報を取得、filename関数でファイル名部分を取得、string関数で文字列化、という手順を踏んで出力しています。さらに、file_size関数でファイルのサイズを取得しています。

 この他、ファイルのコピー(copy)、ディレクトリの作成(create_directory)、パーミッションの設定(permissions)、ファイルやディレクトリの削除(remove)といった、基本的な操作のための関数を多数備えています。これさえあれば、ファイル操作に苦労することはなさそうですね。

まとめ

 今回は、コンテナ、正規表現、ファイルシステムなど、利用頻度の高そうな基本ライブラリを紹介しました。便利な標準ライブラリはほかにもたくさんあるので、欲しい機能があるかどうか調べてみてはいかがでしょうか。

 これで、Modern C++の機能を知る連載は終わりです。昔のC++からは全くと言ってよいほど変わったC++の姿を、一部ではありますがお伝えできたのではないかと思います。現在も進化を続けているC++を、今後も追いかけていきたいものです。

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この記事の著者

WINGSプロジェクト 山内 直(WINGSプロジェクト ヤマウチ ナオ)

WINGSプロジェクトについて> 有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS Twitter: @yyamada(公式)、@yyamada/wings(メンバーリスト) Facebook <個人紹介> WINGSプロジェクト所属のテクニカルライター。出版社を経てフリーランスとして独立。ライター、エディター、デベロッパー、講師業に従事。屋号は「たまデジ。」。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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