対象読者
- モバイルアプリを作ってみたいReactエンジニア
- モバイルアプリのリリース作業を手軽に行いたい方
前提環境
筆者の検証環境は以下の通りです。
- macOS Sequoia 15.3.1
- Node.js 23.9.0
- npm 10.9.2
- Expo 52.0.37
- React Native 0.76.7
モバイルアプリにおけるパーミッションの基本
スマートフォンは私たちの生活に深く根付き、多くの個人情報を扱うデバイスとなっています。カメラで撮影した写真、現在地の位置情報、連絡先リストなど、プライバシーに関わる情報が日々蓄積されています。こういった状況下で、モバイルプラットフォームでは、ユーザーのプライバシーを保護するため、アプリがこれらの情報や機能にアクセスする際にユーザーからの明示的な許可(パーミッション)を求める仕組みが導入されています。
パーミッションシステムは、ユーザーに「このアプリは何ができるのか」を明確に伝え、制御する手段を提供します。開発者としては、これらのパーミッションを適切に扱うことが、ユーザーの信頼を得るために不可欠です。不必要なタイミングでパーミッションを要求したり、拒否された際の対応が不適切だったりすると、ユーザー体験を大きく損ねてしまいます。
Expoを使ったアプリ開発では、これらのパーミッション管理を簡単に行うための仕組みが用意されています。本稿では、パーミッションの基本概念から、Expoでの実装方法、そして効果的なユーザー体験を提供するためのベストプラクティスまでを解説します。
パーミッションを適切に扱うことで、ユーザーのプライバシーを尊重しながらも、スマートフォンの高度な機能を活用した魅力的なアプリを開発できるようになりましょう。
パーミッションとは何か
パーミッション(許可)とは、アプリがデバイスの特定の機能やデータにアクセスするために必要な、ユーザーからの明示的な承認のことです。
iOSでは、パーミッションの種類ごとに個別の許可が必要で、アプリがその機能を初めて使用しようとしたときに、システムがダイアログを表示します。一方、Androidでは、パーミッションはいくつかのグループに分類されており、Android 6.0以降では危険なパーミッションについては実行時に個別の許可が必要になりました。
パーミッションの要求は、ユーザー体験に大きな影響を与えます。アプリを起動した直後に複数のパーミッションを一度に要求するよりも、ユーザーが特定の機能を使おうとするときに、その機能に必要なパーミッションだけを要求するほうが、ユーザーの理解を得やすくなります。
Expoでのパーミッション管理
Expoでは、パーミッション管理を簡単に行うための仕組みが用意されています。以前はすべてのパーミッション関連の機能が expo-permissions
モジュールに集約されていましたが、現在は各機能ごとのモジュールに分散されています。
例えば、カメラのパーミッションは expo-camera
モジュール内で、位置情報のパーミッションは expo-location
モジュール内で管理します。
Expoでのパーミッション状態は、一般的に3つの状態で表現されます。
granted
(許可済み)、denied
(拒否済み)、undetermined
(未決定)です。アプリが初めて特定の機能を使用しようとする場合、パーミッションの状態は undetermined
であり、ユーザーにパーミッションを要求する必要があります。