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キーパーソンインタビュー

AIによってあらゆる人が創造できる時代へ──AIエディタ「Windsurf」が描く新しい開発者体験

【来日インタビュー】エンタープライズ向け新機能も多数登場、急成長する次世代エディタの開発哲学とは


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チームやエンタープライズ向けに多数の新機能を発表、その背景は?

──最近は他にもソフトウェア開発向けのAIエージェント搭載ツールが登場しています。そのなかで、Windsurfの強みや特徴は何でしょうか?

Wang氏:Windsurfはコードベースの理解度が非常に高いです。Windsurfの内部には多くのテクノロジーが搭載されており、ユーザーが何をしようとしているのか、そしてコードの状態はどうなっているのかを、コードベースの大小を問わず理解しています。この点は他のどのエディタよりも優れていると考えています。

Moreno氏:コードへの深い理解に加えて、Windsurfの開発意図も重要なポイントです。Windsurfも、その前のプラグインの開発も、大企業の複雑な問題を解決することを意図して構築したものです。ゲーム開発のために個人開発者が使うツールと、銀行や自動車会社のような大企業が持つ巨大なコードベースを開発するために、数万人の開発者が使うようなツールを構築するのとでは、大きな違いがあります。私たちは、これまでリリースしてきたすべてのツールにおいて、大規模で複雑なエンタープライズでのユースケースに対応するという決断をしてきました。

 2025年4月のアップデートで、JetBrains向けのプラグインにおいてコーディングエージェント機能Cascadeが利用できるようになりました。JetBrainsは多くのエンタープライズのJava開発者が使っているIDEですが、これは、エンタープライズ開発に価値をもたらすことの現れと言えます。私達は、エンドユーザーに魔法のような体験を提供しようとすると同時に、セキュリティとエンタープライズ向けの機能を念頭に置いたことで、世界最大規模の企業にいち早く採用されるシステムを構築することができました。

Johnson氏:私たちのチームそのものも強みだと考えています。私たちの実際のリリース速度を見てください。現在、Windsurfは約2~3週間ごとに新たな機能をリリースしています。これはすべて、私たちの開発チームが、マウンテンビューのオフィスに寝袋を持ってきて、徹夜でコーディングしている成果です(笑)。私達のチームの驚異的な才能や、製品のアップデートの速さが、他の企業にはない強みとなっています。

──まさにこのインタビューの当日の朝(2025年5月7日)、WindsurfはWave 8のリリースにおいて、チームおよびエンタープライズ開発向けに多くの新機能を発表しました。個人向けの機能と、チームまたはエンタープライズ開発向けの機能の違いについて、どのように考えていますか?

Wang氏:個人で開発する場合には、個人が可能な限り迅速かつ効率的に作業できるように、最高の製品を提供したいと考えます。しかし、エンタープライズ向けとなると、考慮すべき多くのことがありますよね。例を挙げると、MCP(Model Context Protocol)については、エンタープライズ向けにそのまま展開してすべての人に使ってもらうことは難しいと考えています。なぜなら、接続方法によっては問題が発生する可能性があるからです。

 Wave 8の多くのエンタープライズ向け機能は、最高のセキュリティ原則に従っていることを慎重に確認しながら提供しています。そして、実際に試してもらうために、まず個人向けに提供することから始めました。

Moreno氏:さらに、Wave 8の機能の一つとして、分析ダッシュボードにも注力しました。これにより、組織はWindsurfの価値を測定できるようになります。ツールに投資した大規模な組織にとって、そこから何が得られたかを評価できることは、きわめて重要です。個人のユーザーにとってはそれほど重要ではないかもしれませんが、企業では価値を測定できる点を重視しています。これは、個人とエンタープライズの大きな違いだと考えています。

 個人ユーザーに関しては、Windsurfを使っているときに魔法のような体験ができることを重視しています。例えば、iPhoneはそれまで誰も経験したことのない全く異なる体験でした。私たちは、開発者がWindsurfを使うときに、iPhoneのような新しい体験ができることを望んでいます。したがって、個人向けには魔法のような体験と、エンタープライズ向けの分析ダッシュボードやセキュリティ、MCPの責任ある利用といった要件を組み合わせることができるのです。最終的に私たちが目指しているのは、可能な限りその個人の開発者に素晴らしい体験を提供しながら、大規模な組織で必要とされるセキュリティ要件や機能性を備え、エンタープライズに適用することです。

Wang氏:さらに、コラボレーションを促進したいとも考えています。これまでのコーディングは、個人でコードを書いて、レビューのために提出する、というような個人プレーの動きでした。しかし今では、チーム開発において効率的に共同作業を進めるためのさまざまなルールが見られます。

 今回、Wave 8において、組織のナレッジを閲覧できる「Knowledge Base」という機能を提供し、チームがプロジェクトレベルでも組織ルールを設定・共有できるようにしました。また、チャット履歴の共有もできるようになりました。

 これらの機能は、チームで作業している場合には、いくつかの利点があります。例えば、RunbookやオンボーディングガイドをWindsurf上で共有することができます。そして新しい開発者が入社したとき、Windsurf上で「このツールはどこで手に入るの?」と尋ねるだけで、必要な情報を得られます。これはドキュメント共有のほんの始まりに過ぎません。より多くの人が利用することで、さまざまなユースケースが出てくるでしょう。

──Windsurfの活用によって、チームやエンタープライズでの開発をどのように良くしていけるでしょうか?

Moreno氏:組織が抱える最大の課題の1つは、新規採用者のオンボーディング以外に、あるプロジェクトから別のプロジェクトへの人の異動があると思います。従来は、ペアプログラミングとドキュメント作成でこれらの課題を解決していますが、本来はコードベースに慣れる必要があります。Windsurfにドキュメントを読み込ませ、人がWindsurfから質問することで、新しいプロジェクトへのオンボーディングを迅速に行うことができるのです。

 また、「標準」を設定できることも重要です。組織が開発者に遵守させたい特定のガイドラインやベストプラクティスを、Windsurf内に取り込むことで、生成されるコードがそれらのガイドラインに準拠したものになります。開発者の生産性を向上させながら、組織のベストプラクティスを反映し、品質を担保することができるのです。

 最後に、開発者ではない人がコードを生成できるようになるということも挙げられます。例えば、私たちの大規模な顧客企業の一つでは、多くのアナリストがWindsurfを使用しています。従来、アナリストは情報を得るために開発者に依頼する必要がありました。アナリストはWindsurfを利用することで、情報を尋ねるだけでほしい情報を取得することができます。また、開発者でない人も、自然言語を使用して自分自身でコードを生成できるようになっています。Johnson氏は、過去30日間で、開発者ではないにもかかわらず5万行のコードを生成しています。

Johnson氏:過去、組織改善のためのアプリケーションを作りたいと何度も思っていたにも関わらず、社内の開発者は顧客向けの製品の開発に注力しているため、依頼しづらいといった課題がありました。しかし今では、Windsurfを使って、チームの生産性向上や、コスト削減に寄与するアプリケーションを自分で作成できます。それにより、実際に15万ドルのコストを削減しました。

 私が自然言語でプロンプトを渡し、デプロイし、チームメンバーが実際に活用しています。これは他の企業においても同じ問題に直面していると思います。開発者ではないビジネスユーザーは、自らの業務を改善し、生産性を高めるためのアイデアを持っていますが、今やそれが自ら開発できるようになりました。

Wang氏:AIによって、開発者がやりたがらないところのサポートができる点も魅力です。多くの開発者はコードのデバッグを好まないし、単体テストを書くのも好まないでしょう。ドキュメント作成、コメントの記述は、AIが得意とすることです。また、組織の中には、コードレビューをせずに、ただ別の同僚に渡して承認するだけというところもあるでしょう。今回のWave 8のリリースで、GitHubのプルリクエストのコメントを自動で生成する「Windsurf Reviews」を提供しましたが、このような機能も、開発者がこれまでやりたがらなかったことを、AIを通じて効率化するためのものと考えています。

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将来「開発者」の意味が変わっていく──Windsurfが展望する未来

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この記事の著者

近藤 佑子(編集部)(コンドウ ユウコ)

株式会社翔泳社 CodeZine編集部 編集長、Developers Summit オーガナイザー。1986年岡山県生まれ。京都大学工学部建築学科、東京大学工学系研究科建築学専攻修士課程修了。フリーランスを経て2014年株式会社翔泳社に入社。ソフトウェア開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集・企画・運営に携わる。2018年、副編集長に就任。2017年より、ソフトウェア開発者向けカンファレンス「Developers...

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